セッション詳細

[SY99]シンポジウム99_DSM-5TR時代の「ひきこもり」:精神医学における位置付けを多元モデルで再考し新たな支援を創出する

2025年6月20日(金) 10:45 〜 12:45
Q会場(神戸国際展示場 1号館 2階 展示室B)
司会:加藤 隆弘(北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室)、館農 勝(さっぽろ悠心の郷・ときわ病院)
メインコーディネーター:加藤 隆弘(北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室)
サブコーディネーター:館農 勝(さっぽろ悠心の郷・ときわ病院)
「社会的ひきこもり(以下ひきこもり)」は、6ヶ月以上にわたり、就労・学業など社会参加せずに概ね自宅に留まり続けている現象であり、コロナ禍以前の内閣府調査(2015年・2018年実施)では、ひきこもり状況にある人(以下ひきこもり当事者)の数は115万人と推定されている。従来、ひきこもりは日本独自の精神疾患とは一線を画する社会的現象と捉えられていた。しかし、いまでは様々な国に存在するグローバルな現象と捉えられるようになり、2022年に米国精神医学会が出版したDSM-5TRには「hikikomori」という形で初めて収載され、国際的にも注目されている。統合失調症・うつ病・不安症・パーソナリティ症といった精神疾患の併存が稀ではないことも明らかになり、文化社会的因子だけでなく生物学的基盤の関与も示唆されはじめ、ひきこもりの病態や位置付けを精神医学的に再検討すべき時期を迎えている。他方、2023年に発表された内閣府調査では、ひきこもり当事者は146万人と推定され、コロナ禍を経て30万人以上増加している。コロナ禍以降、デジタルツールが急速に発展し、オンライン授業・在宅ワークがニューノーマルになり、従来ひきこもりと無縁であった人々が物理的にはひきこもりライクな状況に陥っていることも稀ではない。
しかるに、本シンポジウムでは、実証データを元にして現代の精神医学におけるひきこもりの位置付けを多元モデルで再考し新たな支援の創出に向けた議論を交わす。太刀川は、地域住民を対象とした実態調査や茨城県立こころの医療センターと協働で行っているアウトリーチ支援事業を紹介し、地域での新たな支援について検討する。館農は、児童精神科医の立場から、子どものひきこもりに頻発しやすいゲーム障害やスマホ依存との関連とともに多機関連携支援モデルを紹介する。加藤は、全国規模のオンライン調査の結果を元に、ポストコロナ時代におけるひきこもり支援の課題を整理し、支援を要するひきこもり(病的ひきこもり)と非病的ひきこもりの評価ポイントを紹介するとともに、バーチャルリアリティ(VR)を活用した支援プログラムを紹介する。藤田は、ひきこもり支援におけるメタバース活用の効果と今後の展望について紹介し、仮想現実内での対人交流促進がひきこもり当事者にとって再度の社会参加の契機となる可能性に言及する。瀬戸山は、血液メタボローム解析を専門としており、ひきこもり関連バイオマーカー候補をすでに見出しており、未来の栄養療法の可能性に言及する。フランス出身の心理学者であるタジャンは、ひきこもりの国際事情に精通している立場から、上記発表を踏まえて日本でのひきこもり支援における課題と打開案に関して討論する。
本シンポジウムでは、ひきこもりに関する最先端の話題を提供し、ひきこもりの多元的な理解と支援の方法について参加者が深く学び、経験を共有できる機会としたい。

[SY99-1]地域における社会的引きこもりの実態と介入

太刀川 弘和1,2, 小川 貴史2,6, 白鳥 裕貴6, 菅原 大地3, 相羽 美幸4, 川上 直秋3, 翠川 晴彦6, 南場 陽一2, 斎藤 環5, 堀 孝文2 (1.筑波大学医学医療系災害・地域精神医学, 2.茨城県立こころの医療センター, 3.筑波大学人間系, 4.東洋学園大学, 5.つくばダイアローグハウス, 6.筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学)

[SY99-2]ゲームやネットの世界にひきこもる子どもたちを支援するための多職種連携

館農 勝1,2 (1.特定医療法人さっぽろ悠心の郷ときわ病院, 2.札幌医科大学附属病院神経精神科こどもメンタルクリニック)

[SY99-3]「病的ひきこもり」と「非病的ひきこもり」を評価可能なHiDE-Sによる早期支援の提案

加藤 隆弘 (北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室)

[SY99-4]メタバース技術を活用したひきこもり支援の多元的展開:実証研究から見る治療的意義と実装への課題

藤田 純一 (横浜市立大学附属病院)

[SY99-5]ひきこもり支援における臨床検査の新展開:症状改善に伴う血液成分モニタリング法の開発

瀬戸山 大樹 (九州大学病院検査部)

[指定発言]指定発言

Nicola Tajan (京都大学大学院人間・環境学研究科)