セッション詳細

[SY104]シンポジウム104_子どもの安心と安全を紡ぎ、健やかな成長を促す-私たち精神科医にできること-

2025年6月21日(土) 10:45 〜 12:45
C会場(神戸国際会議場 3階 レセプションホール)
司会:二宮 貴至(浜松市精神保健福祉センター)、細金 奈奈(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育クリニック)
メインコーディネーター:二宮 貴至(浜松市精神保健福祉センター)
サブコーディネーター:細金 奈奈(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育クリニック)
親子・学校・女性に関する委員会
親子・学校・女性に関する精神保健の諸問題について検討する本委員会では、私たち精神科医がこれら領域に関する知見を高め、関係機関とより良く協働することを目的としたシンポジウムを開催してきており、オンライン研修会や事例検討会も実施しています。
本企画では、子どもの健全な成長と発達に不可欠な安心で安全な養育環境について取り上げたいと思います。養育者との安定した関係は、子どものレジリエンスを強め、子どもの身体的、情緒的、認知的発達のために最も重要であり、将来の精神疾患の予防する上でも大きな意味を持っています。
一方、政府が令和6年版にはじめてとりまとめた「こども白書」をひもといて頂くと、不登校者数が299,048人、児童虐待件数は 219,170 件といずれも増加を続けて過去最悪の数字(令和4年)となっており、こどもを取り巻く安全安心についてはとても深刻な状況がわかります。また、国民生活基礎調査によれば、相対的に貧困の状態にあるこどもの割合は11.5%となっており、特にひとり親世帯の貧困率は44.5%です。ひとり親世帯では、食料が買えなかった経験がある割合が21.1%、衣服が買えなかった経験がある割合が19.0%とも報告されています。
これまでの研究では、小児期における逆境的体験、例えばさまざまな形の児童虐待、家族の機能不全(親との別離、親に対する暴力の目撃、親の精神疾患・薬物乱用・犯罪歴)に曝された子どもは、その体験の数が多いほど、成人期の心身の健康に悪影響をもたらし、社会不適応や生涯寿命の短縮をきたしうることが明らかになっています(Felitti, 1998など)。また、こうした逆境的体験を持つ子どもに対して、ポジティブで保護的な体験が、子どもの予後を改善させるという研究報告が増えており、特に家庭での安全・安心、家庭内の適度なルール、学校での居場所、友人、親以外の大人との良好な関係、などが保護的要因として挙げられています(Bethellら, 2019)。
本シンポジウムでは、子ども達の健やかな成長を促進するために、家庭、学校、地域社会がどのように協働して支援できるかについて検討したいと思います。各シンポジストから、それぞれの現場で実践している取り組みや新たな知見を御紹介頂きながら、会場の皆さんとともに子どもの安全と安心に関わる精神保健の具体的な諸課題についてあらためて捉え直し、そのために私たち精神科医ができる役割や関係機関の多職種と協働する意義について考察を深めたいと思います。

[SY104-1]精神科医にできる親子関係の支援

細金 奈奈 (社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育クリニック小児精神保健科)

[SY104-2]精神科医として、子と親と地域を繋ぐ

平山 哲 (地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター)

[SY104-3]学校現場を通じて子どもたちを守る -名古屋市との連携-

山田 敦朗1,2 (1.名古屋市立大学大学院医学研究科こころの発達医学寄附講座, 2.名古屋市立大学病院こころの発達診療研究センター)

[SY104-4]共同親権の課題-子どもの安心、安全を紡ぐために、私たちが考えたいこと

上野 千穂 (京都市児童福祉センター診療所)

[指定発言]指定発言

菊地 紗耶 (東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野)