セッション詳細

[SY110]シンポジウム110_精神科医療における教育プログラムの進化:Off-the-Job Trainingによる臨床実践の質向上

2025年6月21日(土) 10:45 〜 12:45
E会場(神戸国際会議場 4階 402会議室)
司会:橋本 亮太(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)、古郡 規雄(獨協医科大学精神神経医学講座)
メインコーディネーター:古郡 規雄(獨協医科大学精神神経医学講座)
サブコーディネーター:飯田 仁志(福岡大学医学部精神医学教室)
精神科臨床において、治療の質を向上させるためには、ガイドラインに基づいた標準化された治療の実践が重要である。エビデンスに基づいた治療ガイドラインが策定されているが、臨床家ごとの治療内容には依然として大きなばらつきが見られる。このような背景の中で、臨床現場を離れて体系的に学ぶOff-the-Job Trainingが、医師の治療知識や技術の向上において重要な役割を果たしている。
本シンポジウムでは、ガイドラインに基づく教育プログラムの進化について、特に若手精神科医を対象としたガイドライン講習の効果に焦点を当てる。これらの講習では、講習の準備過程において、受講者が理解しやすいようにガイドラインを視覚的に伝える手法や、現実の臨床を反映したシナリオを用いた教育プログラムが導入されてきた。臨床では標準的な治療が適用できない複雑なケースも存在するため、講習ではガイドラインの限界についても言及し、ガイドラインだけに依存せず、臨床判断力を活用する重要性を強調している。
これまでの10年間にわたる取り組みの中で、教育プログラムの内容や形式も進化してきた。特に新型コロナウイルスの影響により、対面講習からWeb講習への移行が進んでおり、オンラインでの学びが新たな教育手法として注目されている。Web講習では、進行マニュアルの整備やファシリテーターの訓練が徹底されており、対面形式に劣らない教育効果が得られている。Web講習は受講者が地理的制約を超えて参加できる利点があり、精神科医療における教育の普及に貢献している。
さらに、ガイドラインを実際の臨床場面で活用できるように模擬症例を通じて伝え方のコツを学ぶ講習会も行っており、ガイドラインの普及を促進するための「ガイドライン一致率」という評価指標も導入されている。この指標は、医師が行う治療がガイドラインにどの程度沿っているかを数値化するものであり、医師が自らの治療行動を振り返り、改善の余地を見つけるための有効なツールとなっている。これにより、治療の質の向上だけでなく、患者との共同意思決定の場においても有効な手段となっている。また診療場面でガイドラインを用いた共同意思決定を実現させるために、患者・家族・多職種スタッフに対する普及活動も行われている。
本シンポジウムでは、ガイドライン講習の効果や教育プログラムの進化による具体的な成果を共有し、若手精神科医が臨床現場でどのように実践しているかを示すことで、参加者は自身の治療に即した知識を得ることができる。そして、今後の精神科医療の質向上に貢献するための新たな視点や具体的な改善策を学ぶ機会が得られる。

[SY110-1]ガイドラインを学ぶ講習会とは

山田 恒1,2 (1.兵庫医科大学, 2.国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)

[SY110-2]コロナ禍を乗り越え、進化する精神科教育:Web講習の導入と効果

飯田 仁志 (福岡大学)

[SY110-3]統合失調症およびうつ病の治療ガイドラインに関する教育が精神科医の治療行動に及ぼす影響

安田 由華1,2,3 (1.医療法人フォスター生きる育む輝くメンタルクリニック, 2.国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 3.公益社団法人大阪精神科診療所協会)

[SY110-4]患者・家族・多職種スタッフに対する普及活動~利用者のリテラシー向上から働きかける

市橋 香代 (東京大学医学部附属病院)

[SY110-5]ガイドライン一致率の臨床現場での活用に向けて

福本 健太郎 (岩手医科大学神経精神科学講座)

[指定発言]指定発言

松坂 雄亮 (長崎県精神医療センター)

[指定発言]指定発言

中尾 智博 (九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野)