セッション詳細

[SY113]シンポジウム113_自律神経バイオマーカー研究の現状と展望

2025年6月21日(土) 10:45 〜 12:45
F会場(神戸国際会議場 4階 403会議室)
司会:榛葉 俊一(静岡済生会総合病院精神科)
メインコーディネーター:榛葉 俊一(静岡済生会総合病院精神科)
本シンポジウムでは、精神疾患の病態に密接に関連する自律神経活動の指標をバイオマーカーとして臨床利用する研究を紹介する。実用化が期待されるウエアラブル機器を用いた自律神経解析や腸脳相関で注目される腸内細菌叢と自律神経との関連、臨床利用する上で重要である向精神薬の影響などについて、下記の5名の研究者が解説する。
自律神経は交感神経と副交感神経からなるが、各臓器において精神活動と密接に関連した調節がなされる。脳内モノアミン系や視床下部内分泌系、睡眠覚醒系とのつながりも強い。これらの自律神経活動の特徴を踏まえ、心拍変動、皮膚コンダクタンスなどの自律神経指標を精神疾患バイオマーカーとして利用する。
1. 「ウェアラブルデバイスを用いた診断横断的なメンタルヘルス評価の妥当性の検証」(中込和幸、国立精神・神経医療研究センター理事長):診断によらず、精神疾患の日常生活場面でのメンタルヘルス評価に資するデジタルバイオマーカーを得ることで、診療レベルの向上とともに、妥当性の高い治療アウトカムとして分散型臨床試験への適用も期待される。その可能性と課題について紹介したい。
2.「心拍変動データを用いたプログラム医療機器、ヘルスケア機器開発の実際」(岸本泰士郎、慶應義塾大学医学部教授): ウェアラブルデバイス技術の発展は、非侵襲に人々の活動や睡眠、心拍変動の持続的な収集を可能にした。演者らが行っている複数のデバイスを用いた医療機器やヘルスケア機器の開発ついて紹介する。ストレス社会におけるメンタルヘルス維持、うつ症状定量を目指した研究についても紹介する。
3. 「うつ病における自律神経の日内リズム異常とその腸内細菌叢との関連」(功刀浩、帝京大学精神神経科学講座教授):うつ病において睡眠―覚醒リズム異常が重要な要因の1つであると考えられる。我々は、ウエアラブル心拍計を用いて、この日内リズム障害を支持するデータを得ると共に、活動量と関連することを示した。また、プロバイオティクスの投与による自律神経への効果に関するデータも得ており、新たな診断・治療法の開発につながることが期待される。
4. 「精神疾患患者における自律神経活動ー抗精神病薬の影響を中心に」(服部早紀、横浜市立大学精神科助教): 精神疾患患者において、自律神経機能異常がかねてより推測されている。抗精神病薬がその要因の一つと考えられており、抗精神病薬の用量、種類、剤型、薬理、遺伝的要因などの自律神経機能へ影響について報告する。自律神経活動を定量化し、抗精神病薬の副作用およびリワークプログラムにおける復職準備性の指標としての有用性を紹介する。
5. 「自律神経検査結果をどのように評価するか」(榛葉俊一、静岡済生会総合病院精神科部長):心拍変動検査と皮膚コンダクタンス検査を中心として、解析方法と生理学的的、精神物理学的な意味づけを解説する。脳内モノアミン系や視床下部内分泌系、睡眠覚醒系との関連などについても紹介する。

[SY113-1]ウェアラブルデバイスを用いた診断横断的なメンタルヘルス評価の妥当性の検証

中込 和幸 (国立精神・神経医療研究センター)

[SY113-2]心拍変動データを用いたプログラム医療機器、ヘルスケア機器開発の実際

岸本 泰士郎 (慶應義塾大学医学部)

[SY113-3]うつ病における自律神経の日内リズム異常とその腸内細菌叢との関連の可能性

功刀 浩1,2 (1.帝京大学医学部, 2.国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)

[SY113-4]精神疾患患者における自律神経活動ー抗精神病薬の影響を中心に

服部 早紀1, 岸田 郁子1,2, 須田 顕1, 宮内 雅利1, 野口 信彦1, 白石 洋子1, 篠川 佳音1, 浅見 剛1 (1.横浜市立大学医学部精神医学教室, 2.医療法人社団清心会藤沢病院)

[SY113-5]精神科医療における自律神経検査の結果をどのように評価するのか

榛葉 俊一 (静岡済生会総合病院)