セッション詳細

[SY123]シンポジウム123_神経発達症におけるピアサポート~医療と自助活動との接点を探る

2025年6月21日(土) 13:20 〜 15:20
L会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 偕楽2)
司会:太田 晴久(昭和医科大学発達障害医療研究所)、安田 由華(医療法人フォスター)
メインコーディネーター:太田 晴久(昭和医科大学発達障害医療研究所)
サブコーディネーター:安田 由華(医療法人フォスター)
成人期の神経発達症当事者は、多様な支援ニーズを抱えており、その支援は医療や福祉サービスに加え、当事者同士の相互支援である「ピアサポート」によっても補完される。本シンポジウムでは、ピアサポートが成人期の神経発達症に対してどのように効果的であるかを検討し、精神科医師には十分に知られていない神経発達症における自助活動の実態を報告する。また、医療や支援との連携の可能性について、さまざまな視点から当事者と共に議論を深める機会とする。
ピアサポートは、同じ経験を持つ仲間同士が支え合うことで孤立感を軽減し、自己理解を深める手段である。特に、集団活動において特性が顕在化しやすい神経発達症では、デイケアなどのグループ活動が有効とされる。支援者の援助のもとで、当事者同士の交流によりピアサポートが成立するが、デイケアなどの通所サービスを経て就労しても、職場での人間関係に適応できず、社会的に孤立する当事者も少なくない。神経発達症の特性は生涯続くため、医療や福祉サービスのみでは支援が十分でなく、共生社会に向けた意識や構造の変革が求められている。その中で自助グループは、当事者にとって重要な居場所となる可能性がある。
自助グループが医療と連携する際には、いくつかの課題が存在する。例えば、自助グループにおける診断の妥当性の問題が挙げられる。自称診断や過剰診断のケースでは、「生きづらさ」という共通点があってもその原因が異なり、グループの凝集性が低下することがある。また、神経発達症の特性から対人関係の維持が難しく、自助グループが乱立・消滅しやすい点や外部から内情を把握しにくい点も課題である。一方で、医療は自助活動の実態を十分に把握しておらず、連携の検討を始める段階にも至っていない。デイケアなどでのピアサポートの効果を社会全体に広めるためには、医療においても自助活動の現状を把握し、効果的な連携のあり方について議論を行うことが必要である。
本シンポジウムでは、神経発達症におけるピアサポートの有効性、医療および自助活動との連携の可能性について議論する。太田が全体の概要を示し、安田が神経発達症のデイケアでの活動を報告する。本田は思春期の余暇支援の観点から、常岡は依存症での経験を踏まえ、成人期神経発達症の医療と自助活動との連携の可能性と課題について発表する。さらに、広野が関西で20年以上にわたり取り組んできた自助グループ活動やピアリーダー研修の経験をもとに、当事者の視点から報告する。
このシンポジウムを通じて、神経発達症の当事者がピアサポートを介して主体的に参加する医療、さらには社会のあり方について考える契機としたい。

[SY123-1]神経発達症のピアサポート概論

太田 晴久 (昭和医科大学発達障害医療研究所)

[SY123-2]発達障害専門プログラムの実践

安田 由華1,2,3, 片山 直毅1, 加藤 史織1, 山口 望美1 (1.医療法人フォスター生きる育む輝くメンタルクリニック, 2.国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 3.大阪精神科診療所協会)

[SY123-3]余暇活動を介した思春期の神経発達症当事者のピアサポート

本田 秀夫1,2,3 (1.信州大学医学部子どものこころの発達医学教室, 2.信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部, 3.長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」)

[SY123-4]自助グループと病院の連携(自助グループ頼りの依存症専門病院の立場から)

常岡 俊昭 (昭和医科大学烏山病院)

[SY123-5]成人期の発達障害(神経発達症)のピアサポートとセルフヘルプグループ~現状と医療との連携の可能性~

広野 ゆい (特定非営利活動法人DDAC(発達障害をもつ大人の会))

[指定発言]指定発言

市川 宏伸1,2 (1.日本自閉症協会, 2.日本発達障害ネットワーク)

[指定発言]指定発言

加藤 進昌 (公益財団法人神経研究所附属晴和病院)