セッション詳細

[SY128]シンポジウム128_精神疾患患者の身体合併症治療における臨床倫理の現在地

2025年6月21日(土) 10:45 〜 12:45
O会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 生田)
司会:根本 康(さいたま市立病院精神科)、光定 博生(国家公務員共済組合連合会横須賀共済病院)
メインコーディネーター:根本 康(さいたま市立病院精神科)
サブコーディネーター:石田 琢人(地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立松沢病院)
患者が治療や検査を拒否した場合、医学的な見地からそれらの必要性やメリットデメリットなどを交えて説得を試みることが多いと思われる。特に身体面への不利益が大きいと予想される場合には、その説得には熱が入ることだろう。しかし説得を試みても翻意に至らない場合、治療者側はどこまで患者の意思を尊重すべきか、倫理的な葛藤が生じて苦悩することになる。そこでは、患者・家族や治療者側の間で倫理的課題を認識した上で、関わる人々の価値観を尊重しながら、患者の最善の利益になる方法を模索する臨床倫理的なアプローチが重要となる。
患者・家族が治療や検査を拒否する理由が本人の価値観や宗教観であれば、本人たちの意思を尊重することになるかもしれないが、精神症状の影響を受けて拒否する場合はどうであろうか。精神症状の治療であれば、精神保健福祉法に則った上で精神科に強制入院させることは可能であり、時には身体拘束や抗精神病薬の投与が本人の同意なく行われる。しかし身体症状に関する治療・検査を強制的に行うことは法律的にはできず、人権擁護や意思決定能力などの観点を踏まえた上で家族を含む関係者間で話し合い、結果として本人の意思とは異なる治療方針を選択することもある。
本シンポジウムでは身体合併症治療を念頭に、精神医療で起きている臨床倫理の問題を精神科医なりに整理し、臨床倫理的な課題を含む症例を通して具体的なイメージを作っていく。また池原先生には精神保健福祉法の中で医療倫理をどう実践していくべきかを、瀧本先生には臨床倫理コンサルテーションの実践の現状と今後に向けた課題をお話しいただく。その上で今後身体合併症のみならず精神医療全体の中で臨床倫理をどう実践していくのかを皆さんと一緒に考えていきたい。
なお本シンポジウムは日本総合病院精神医学会の推薦企画である。

[SY128-1]身体合併症の治療を行うまでのプロセス

根本 康 (さいたま市立病院精神科)

[SY128-2]精神疾患患者の身体疾患治療方針決定における精神科医のもう一つの役割

石田 琢人 (東京都立病院機構都立松沢病院)

[SY128-3]医療に関する意思と正当業務性

池原 毅和 (東京アドヴォカシー法律事務所)

[SY128-4]精神疾患患者の身体合併症治療における倫理的考察と倫理支援

瀧本 禎之 (神戸大学医学部附属病院医療の質・安全管理部)