セッション詳細

[WS13]ワークショップ13_心理的サポートを提供するデジタルおよびモバイル技術に関する話題

2025年6月21日(土) 8:30 〜 10:10
G会場(神戸国際会議場 5階 501会議室)
司会:奥山 純子(尚絅学院大学総合人間科学系)、前川 真姫(奈良教育大学教育学部)
メインコーディネーター:奥山 純子(尚絅学院大学総合人間科学系)
サブコーディネーター:門廻 充侍(秋田大学情報データ科学部)
オンデマンド配信対象外
背景:デジタル技術は、医療を含む現代生活における多くの場面に貢献するようになってきた。メンタルヘルスを支援するアプリとしては、CBT・ACTを元に開発されたアプリAwarefy、書く瞑想をメインとしたアプリmuute、そして現在の気分に合う感情を選択し、その感情について対話するアプリemolなどがリリースされているが、いずれも自身で自分の気持ちを把握し、入力することが求められている。
臨床上、人間は思考の癖を持っており、自分の気持ちを把握することが困難であることはよく知られていることである。我々の研究グループで使用しているme-fullness®アプリでは、スマートフォンに映した顔の「肌色の変化」を、30秒間の動画撮影することにより、自律神経の状態を測定できるようになっている。また「顔の表面状態」を、ポーラ・オルビスグループが蓄積する1,910万件の肌のビッグデータなどを用いて解析し、ストレスや疲労と肌の関係性を学習させて、アプリ使用者の心理状態を推定する。このようにme-fullness®アプリが推定した客観的な心理状態に基づいて、心理状態を改善させるプログラムを提案するアプリはこれまでになく、デジタルおよびモバイル技術によるメンタルヘルス維持を成功させる上で重要であると考える。
目的:このワークショップでは、客観的な心理状態把握を組み込んだme-fullness®アプリを使用した研究例を紹介したあと、会場の参加者にme-fullness®アプリを使用していただき、これからのメンタルヘルス維持をサポートするデジタルおよびモバイル技術の在り方を検討する。
話題提供
1)me-fullness®アプリについて(本川智紀:ポーラ化成工業株式会社 上級主任研究員/東京大学 大学院農学生命科学研究科 特任研究員):me-fullness®アプリは、ポーラ化成工業株式会社が長年蓄積してきた知見やデータを活用して作られた、疲労やストレスによって気持ちの切り替えがうまくできない人をサポートするためのアプリである。まずその時の状況に合わせてモードを選び、心と体の状態を分析する。その後、自身の状態に合った五感体験をする。五感体験では、化粧品の触覚研究を基に構築した振動体験を主とした、心と体を満たすコンテンツを提供する。実際の開発者から、このme-fullness®アプリについて説明する。
2)メンタルヘルス不調者が増加傾向にある地方公務員に対するme-fullness®アプリの実証調査(門廻充侍/秋田大学 新学部設置準備担当):地方公務員において、メンタルヘルス不調による長期病休者や休暇・休職者数は増加傾向にある。このように、手軽に使えるメンタルヘルス維持のためのツールを必要としている地方公務員に対し、me-fullness®アプリが有効ではないかと考え、調査を行った。対象は宮城県の七ヶ浜町職員である。2022年7月8日の安倍晋三元首相銃撃事件や大雨警報の発令された日など、非常にストレスの大きなイベントを含む2022年6月20日から7月27日の期間に行った、me-fullness®アプリ実証調査について解説する。
3)体育大学の女子学生に対するme-fullness®アプリの実証調査(宮本彩/環太平洋大学 体育学部 競技スポーツ科学科)女性アスリート特有の健康問題として代表的なものは「利用可能エネルギー不足による無月経」と「月経随伴症状」である。若い女性アスリートは体調不良時でも、常に高いパフォーマンスの発揮が求められる。ここではそのように、体調不良時でも高いパフォーマンスを期待される体育大学の女子学生に対し、心理的支援としてme-fullness®アプリを用いた支援を行った。月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)と心理状態にme-fullness®アプリがどのような影響を与えたかについて解説する。
意見交換:心理的サポートを提供するデジタルおよびモバイル技術が社会や医療に及ぼす影響は極めて大きいであろうことに異論はないと思われるが、どのようなものがどれくらい有用となるかは未だ見通せない。
しかし最近頻発している気象災害などの後に、被災地におけるメンタルヘルス維持のための専門家が一時的に多く必要となることを考えると、日本における心理的サポートを提供するデジタルおよびモバイル技術はかかせないものになるであろう。またCOVID-19パンデミック以降、テレワーク等働き方の多様化が見られる職場が多くなり、これまでの対面による労働者のメンタルヘルス管理が非対面のものに変化していく見通しである。
そうした中で、信頼でき、さらに日本社会に適合した心理的サポートを提供するデジタルおよびモバイル技術が必要とされていくのは間違いない。メンタルヘルスの変化をより適切に把握し、サポートし、良い心理状態をを維持するために、どのような心理的サポートを提供するデジタルおよびモバイル技術が必要であるかについて、実際にme-fullness®アプリを手に取りながら、会場で意見交換をしたい。

[講演者]心理的サポートを提供するデジタルおよびモバイル技術に関する話題

船越 俊一 (社会医療法人寿栄会ありまこうげんホスピタル)

[講演者]心理的サポートを提供するデジタルおよびモバイル技術に関する話題

門廻 充侍 (秋田大学情報データ科学部)

[講演者]心理的サポートを提供するデジタルおよびモバイル技術に関する話題

宮本 彩 (環太平洋大学体育学部)