セッション詳細

[SY2]シンポジウム2_ハラスメントによる労働災害と精神障害

2026年6月18日(木) 8:30 〜 10:30
C会場(パシフィコ横浜ノース 1F G6)
司会:山本 賢司(東海大学医学部総合診療学系精神科学)、深澤 健二(株式会社アドバンテッジリスクマネジメント)
メインコーディネーター:山本 賢司(東海大学医学部総合診療学系精神科学)
サブコーディネーター:吉川 徹((独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター)
【日本医師会認定産業医制度産業医学研修会対象セッション】
近年、職場におけるハラスメントが労働者の精神的健康に及ぼす影響が社会的関心を集めている。パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなどの多様な形態は、被害者の尊厳を損ない、うつ病や不安障害、PTSDなどの精神障害を引き起こす要因となる。これらは個人の問題にとどまらず、組織全体の生産性や職場風土に深刻な影響を及ぼし、労働災害としての法的・社会的対応が求められている。
 厚生労働省は令和5年9月に「精神障害の労災認定基準」を改正し、心理的負荷評価表に「顧客や取引先からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)」や「パワーハラスメントの6類型」を明示した。これにより、ハラスメントによる心理的負荷の強度がより客観的に評価され、業務起因性の判断基準が明確化された。さらに、特別な出来事がなくとも、業務上の継続的ストレスが強ければ精神障害の労災認定が可能となるなど、実態に即した運用が進められている。
 実際の労災事例を見ると、ハラスメント関連の精神障害は増加傾向にあり、令和4年度の厚労省統計では、精神障害の労災補償請求件数のうち、約3割が職場のいじめや嫌がらせ、パワハラなどの人間関係トラブルに関連していたと報告されている。被害者の多くは長時間労働などの他の負荷も併存しており、単一要因ではなく、多因性であることや慢性ストレス状態が関与しているなど複合的な心理的負担として理解する必要がある。
 裁判事例では、上司による暴言・過剰な叱責、無視や職務剥奪などの行為が「業務に起因する強い心理的負荷」として認められ、労災認定や損害賠償が認められたケースが複数みられる。特に「恒常的・組織的なパワハラ」や「相談後の報復的な人事異動」などは、企業の安全配慮義務違反として厳しく問われており、組織対応の不備が法的責任を拡大させる傾向にある。
 産業医は、ハラスメントの事実認定には関与しないが、被害者の健康状態・就業可否・再発防止策に関する医学的助言を担う。また、相談対応や再発防止策の設計において、法務・人事部門との協働が求められる。
 本シンポジウムでは、ハラスメントの現状と制度、ハラスメントによる精神障害の実情、産業医としてどこまで関わるべきかなどの対応実務、法的判断の傾向などを多角的に検討する。個人のメンタルヘルス支援と組織的予防策の両立を目指し、今後の労働現場における「安全で尊厳を守る職場づくり」に向けた展望を議論したい。

[SY2-1]ハラスメントに関する現状と制度

木内 敬太 ((独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター)

[SY2-2]セクシュアルハラスメントによる精神障害の実際-労災認定された精神障害事案解析を基に-

高橋 有記 (東海大学医学部総合診療学系精神科学)

[SY2-3]職場でのハラスメント対応

大林 知華子1,2 (1.ちかメンタルクリニック, 2.Actwith株式会社)

[SY2-4]ハラスメント対応のポイント―法的視点から

小島 健一 (鳥飼総合法律事務所)

[SY2-S1]指定発言

吉川 徹 ((独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター)