セッション詳細

[SY10]シンポジウム10_精神療法における症例検討の重要性を再考する

2026年6月18日(木) 14:15 〜 16:15
F会場(パシフィコ横浜ノース 3F G303)
司会:北西 憲二(北西クリニック/森田療法研究所)、新村 秀人(大正大学臨床心理学部)
メインコーディネーター:新村 秀人(大正大学臨床心理学部)
サブコーディネーター:北西 憲二(北西クリニック/森田療法研究所)
今日の「エビデンス」全盛の時代において、ランダム化比較試験(RCT)やメタ解析は、多くの症例数を扱った量的研究として、エビデンスレベルが高いものとして重視されている。一方、症例数の少ない研究や質的研究、特に症例検討は、エビデンスレベルが低いとされ、軽視されがちではないか。
しかし、どのような研究も、その出発点は、臨床的な一症例における、臨床疑問と経験的知見・新しい治療的な工夫であったはずである。また、さまざまな精神科の治療法や精神療法も、はじめは、一例の試行的な介入から始まっているだろう。精神科における治療、特に精神療法については、そのアート(ワザ)を学ぶ上で、症例検討や症例のスーパービジョンが欠かせない。また、症例検討では、量的研究で捨象されてしまう、質的なデータを扱うため、見立て・診断・治療プロセス・治療効果について、詳細に検討できるのである。
 本シンポジウムでは、精神療法における症例検討の重要性について、今改めて考えてみたい。
 田所は、哲学を専門とする立場で、精神医学的現象の複雑性という観点から症例検討の重要性について再考する。すなわち、精神療法の対象となる精神医学的現象は、単純な文脈依存性に基づく複雑さではなく、高度な文脈依存性に基づく複雑さを有しているため、通常の科学的な一般化が通用しない恐れがある。そのため、精神療法の効果を詳細に検討するためには、個別性を基礎とした症例検討が不可欠であると主張する。
 それぞれの精神療法には、それが形作られていく過程で、その精神療法のプロトタイプとなるような症例があるだろう。新村は、森田療法の根岸症例などを例示して、古典的な症例報告の中に、精神療法の成立における工夫の跡を読み解き、それを現在の臨床にどのように生かしてくことができるのかを考える。
 精神療法は個別性の高い営みである。しかしその営みに深く沈潜することによって、他の症例にも活かせる普遍的な知見を得ることができるのではないだろうか。ユング派分析家である林は、「垂直方向・水平方向」「小さな物語・大きな物語」という対比を用いながら、症例検討の意義について考察する。
 若き頃に精神分析家を志しており、シナプス可塑性の研究で2000年にノーベル医学生理学賞を受賞したエリック・カンデル博士は、精神分析における症例報告の重要性を力説している。精神分析家である加藤は、症例報告からはじまる精神療法のエビデンス構築に向けての試案を示す。

[SY10-1]「目的の王国」としての症例検討

田所 重紀 (札幌医科大学精神医学講座)

[SY10-2]森田正馬の症例報告に学ぶ

新村 秀人 (大正大学臨床心理学部)

[SY10-3]精神療法における症例検討の意義 ―ユング派の立場から―

林 公輔1,2 (1.慶應義塾大学環境情報学部, 2.信濃追分クリニック)

[SY10-4]歳月を要する精神分析体験・症例スーパービジョンから始まる精神分析家への道:精神分析のエビデンス構築

加藤 隆弘 (北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室)

[SY10-S1]指定発言

北西 憲二 (北西クリニック/森田療法研究所)