セッション詳細
[SY16]シンポジウム16_PTSD概念の臨床と脳科学の連携
2026年6月18日(木) 8:30 〜 10:30
I会場(パシフィコ横浜ノース 3F G316+G317)
司会:金 吉晴(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研所)、岡野 憲一郎(本郷の森診療所/京都大学)
メインコーディネーター:金 吉晴(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研所)
サブコーディネーター:岡野 憲一郎(本郷の森診療所/京都大学)
メインコーディネーター:金 吉晴(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研所)
サブコーディネーター:岡野 憲一郎(本郷の森診療所/京都大学)
近年、災害、犯罪被害によるPTSDへの関心が高まっており、厚生労働省によるPTSD研修事業の受講者は延べ2万人を越えたが、ICD-11による複雑性PTSD診断の採用、保険医療におけるトラウマ心理支援加算制度の発足によってその関心は更に高まる一方で、PTSD概念の混乱も生じており、一例として複雑性PTSDの出来事基準は反復的持続的であればよく、生命への脅威を必要としないという誤解が今もなお払拭されていない。PTSDおよび複雑性PTSDは診断基準によって定められた概念であり、診断のためにはそれに従う必要があるが、DSM-5以降のPTSDと解離症概念が近接し、PTSD症状の一部は解離性であると明記され、また解離型の下位分類も設けられた。解離症においても、発症機序としてトラウマ体験が繰り返し言及されている。複雑性PTSDはICD-11における通常のPTSDに3つのDSO症状が加わったものであり、出来事基準において両者の差はないが、持続的反復的な場合が多いという注釈が定義と誤解されやすい。診断概念の変化に伴う混乱は効果的な治療の適応を妨げる恐れもあり、当日は(複雑性)PTSDと解離症の立場からそれぞれの診断概念とその背景を検討する。多くの精神疾患の場合と、こうした診断境界の混乱はPTSDに有力なバイオマーカーがなく、生物学的研究に基づいた治療法が定着していないということも一因である。そこでマウスの恐怖記憶研究に基づいたPTSDの薬物療法としてのNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンの治療開発研究の現状を紹介し、またヒトとマウスに共通にPDE4Bの遺伝子発現がPTSDの侵入症状の重症度を予測するという成果を踏まえ、PTSDの分子機構についての考察を紹介する。これらの研究は基礎研究成果の効果がヒトの臨床において再現されたという点で、精神医学研究それ自体の新しい方法論の領域を示している。またPTSD対して大きな効果量(前後比較で1.5以上)を持つエクスポージャー療法の原理を応用し、睡眠時音刺激によって効果的なトラウマ記憶の組み替えと馴化を行うことでPTSD治療につなげるという世界で先例のない先端研究の進行について紹介する。これらの研究を展望し、改めて臨床におけるPTSDと解離症概念の意義を再考したい。
[SY16-1]PTSDの生物心理学回復モデル
金 吉晴 (国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研所)
[SY16-2]解離の文脈から見たトラウマの脳科学的基盤
岡野 憲一郎 (本郷の森診療所・京都大学)
[SY16-3]臨床と基礎の連携によるPTSDの分子病態解明と新規治療法開発
堀 弘明 (国立精神・神経医療研究センター)
[SY16-4]睡眠中のトラウマ想起音刺激によるPTSDの新規治療法の開発
坂口 昌徳1,2,3 (1.神戸大学, 2.筑波大学, 3.国立精神神経医療研究センター)
