セッション詳細

[SY20]シンポジウム20_社会に発信する精神科診断はいかにあるべきか

2026年6月18日(木) 8:30 〜 10:30
J会場(パシフィコ横浜ノース 3F G318+G319)
司会:松永 寿人(兵庫医科大学医学部精神科神経科講座)、井原 裕(獨協医科大学埼玉医療センター)
メインコーディネーター:松永 寿人(兵庫医科大学医学部精神科神経科講座)
社会に発信される精神科診断のありように関しては、例えば1990年代以降には、過労やストレスによるうつ病が社会問題化し、自殺との関連がさかんに報道されるようになった、また2000年ごろからは、発達障害が注目されるようになり、「就労環境や学校での生きづらさ」、「グレーゾーン」などがメデイアに取り上げられ、その社会的認知度が急激に高まった。さらにCOVID-19感染症流行下では、「コロナうつ」などと、メンタルへの多角的影響が繰り返し警告された。また最近では、SNS上に精神疾患やメンタルヘルスに関する情報が溢れ拡散するようになり、一見、精神医学と社会との距離が近くなり、精神疾患の社会的受容が進んでいるかのように見える。しかし例えば、うつ病や発達障害など社会に発信されている情報は、その診断をはじめ、どの程度科学的根拠に基づいた正確性や信頼性が担保されており、国民の理解やメンタルヘルスの増進につながる適切な内容となっているのか。
当然ながら、精神科診断を社会に発信する際には、専門性と倫理性を両立させた慎重な姿勢が求められる。特に精神疾患の診断名や症状の説明が、時に誤解や偏見を生む可能性があるため、発信者はその影響力を十分自覚すべきである。例えば、診断は単なるラベルではなく、そこにある個別性や多様性を伝えることが重要である。また発信内容は科学的根拠に基づくべきであり、個人的見解とは明確に区別しなければならない。そしてセンセーショナルな表現や過度な一般化は避け、一般市民に誤解を生じず理解しやすい情報提供に十分配慮し、プライバシーや個人の尊厳を守ることが不可欠であろう。
さらに、精神疾患は社会的要因とも密接に関係しているため、診断を通じて社会的課題を照らしうるという視点も重要である。労働環境、教育、家庭など背景要因に配慮した発信は、個々の問題を社会全体の課題として捉える契機となる。また精神科医や心理師などの専門職がSNSやメディアで発信する際には、医療倫理リテラシーを尊重し、憶測的なコメントは避けるべきである。すなわち、このような社会に向けた精神科診断の発信は、偏見を減らし、理解と支援を広げる力となるよう、発信者はその責任を自覚し、情報の受け手が正確に学び、前向きに捉えられるような方向性に努めることが肝要である。今後、精神医学的発信が、社会に対していかに貢献的で有益なものとなりえるのか、例えば、適切な啓発によって早期発見、早期治療につながり、国民全体のメンタルヘルスや生産性を支える機能をもちうるのか、現在あるいは今後の社会において益々重要となろう。
本シンポジウムでは、現在社会に対し発信者の立場で活躍されている先生方に講演をいただき、最近SNSなどを通じて身近になりつつある精神医学と社会との関係性の適正化を模索し、また診断を発信することの注意や責任の在り方を具体化して、そのあるべき姿を議論し、コンセンサス確立を目指す端緒の場としたい。

[SY20-1]精神科医のSNS利用における倫理的諸問題:今、我々が精神科医たちに何を伝えるべきか

松崎 朝樹 (筑波大学医学医療系精神医学)

[SY20-2]アディクションの場合~依存と依存症を区別する

松本 俊彦 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部)

[SY20-3]「なんでも『発達障害』問題」について考える

本田 秀夫 (信州大学医学部子どものこころの発達医学教室)

[SY20-4]産業領域に発信される適応障害という診断

宮岡 等1,2 (1.北里大学, 2.医薬品医療機器総合機構)

[SY20-S1]指定発言

井原 裕 (獨協医科大学埼玉医療センター)