講演情報
[O1-01]要介護高齢者のFive Times Sit-to-Stand Test縦断変化と転倒との関連:ジョイントモデルによる試験的研究
*中口 拓真1、桑田 一記1、安丸 直希2、石本 泰星3 (1. 星野クリニック 在宅リハビリテーションセンター、2. 大阪医療福祉専門学校 理学療法士学科、3. 赤ひげクリニック)
キーワード:
訪問リハビリテーション、転倒リスク、要介護高齢者
【目的】高齢者において,転倒は骨折や入院を引き起こす重要な問題である。転倒リスクは身体機能の変化に影響されるが,従来の解析では単時点の評価に依存しており,時間経過に伴う機能変化と転倒リスクの関係を十分に評価できていない。そこで本研究は,訪問リハビリテーション(訪問リハ)利用高齢者におけるFive Times Sit-to-Stand Test(FTSST)の縦断的変化と転倒発生との関連を,ベイズジョイントモデルを用いて検討することを目的とした。 【方法】対象は2021年4月から2026年3月までに訪問リハを導入した要介護高齢者189名とした。FTSSTは開始時および6,12,18,24か月時点で評価した。転倒は初回発生をイベントとし,発生までの期間を記録した。共変量として年齢,開始時Barthel Index(BI),Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いた。解析にはFTSSTの縦断データと転倒発生までの期間を統合したベイズジョイントモデルを構築した。縦断モデルは線形混合効果モデルとし,ランダム切片および傾きを設定した。生存モデルは離散時間ハザードモデルとし,FTSSTのcurrent valueをassociation parameterとして組み込み,MCMC法により推定した。さらに感度分析として,FTSSTの変化傾向(current slope)を加えたモデルも検討した。 【結果】転倒イベントは48件(25.4%)であった。FTSSTは時間経過とともに改善傾向を示した(β=−0.06,95%信用区間 −0.11 to −0.01)。FTSSTのcurrent valueは転倒リスクと正の関連を示し(γ_value=0.96,95%信用区間 0.64 to 1.29),パフォーマンスが低いほど転倒リスクが高かった。年齢,MMSE,BIは明確な関連を示さなかった。感度分析としてcurrent slopeを含むモデルでは,FTSSTの変化は転倒リスクと負の関連を示した(γ_slope=−0.42,95%信用区間 −0.78 to −0.08)。 【考察】FTSSTは時間経過で概ね改善する一方で,その時点の機能状態(current value)に加え,改善・悪化といった変化傾向(current slope)が転倒リスクに関連する可能性が示された。すなわち,FTSST値が既存のカットオフ値を満たしていても,改善過程にある場合と悪化過程にある場合では転倒リスクが異なる可能性がある。これは,カットオフ値による単時点の評価のみでは転倒リスクを十分に捉えられない可能性を示すものであり,縦断的変化を考慮した評価の重要性を示唆する。
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