講演情報
[O14-01]多重共線性を考慮した転倒リスク評価の検討―尤度比に基づく事後確率による層別化―
*原 茂之1,2、櫻井 逸章3、工藤 慎太郎2 (1. 近畿大学奈良病院リハビリテーション部、2. 森ノ宮医療大学インクルーシブ医科学研究所、3. 笑楽風(個人事業主))
キーワード:
高齢者、転倒予防、歩行解析
【はじめに、目的】
高齢者における転倒は重要な健康問題であり、地域在住高齢者の年間転倒率は約30%と報告されている。転倒は外傷のみならず、活動制限を介した身体機能低下や要介護化につながるため、転倒リスクの早期同定が重要である。しかし、転倒は多因子現象であり、単一指標による予測には限界がある。近年、尤度比を用いた事後確率(post-test probability: PoTP)により複数指標を統合する方法が注目されているが、各評価項目の独立性については十分に検討されておらず、同様の情報を重複して評価することによる過剰なリスク評価が生じている可能性については明らかとなっていない。。そこで本研究では、各評価項目間の独立性を検討し、複数指標を統合した転倒リスク評価の妥当性を検証することを目的とした。
【方法】
本研究は後ろ向き観察研究とした。対象は65歳以上で自立歩行可能な地域在住高齢者172名とし、歩行に影響を及ぼす疾患や強い可動域制限、歩行時痛を有する者は除外した。過去1年間の転倒歴を調査し、非転倒群131名、転倒群41名に分類した。評価項目は転倒恐怖、杖使用の有無、歩行速度、Timed Up and Go test(TUG)、5回椅子立ち上がりテスト(SS-5)とした。統計解析としてPearsonの相関係数を算出し、分散拡大係数(VIF)を用いて多重共線性を評価した。有意水準は5%未満とした。さらに、各指標の尤度比を用いて事後確率を算出し、複数指標統合による転倒確率の変化を検討した。
【結果】
基本特性では年齢のみ群間差を認めた。相関分析の結果、TUGと歩行速度の間に強い負の相関(r = −0.7)、TUGとSS-5の間に中等度の正の相関(r = 0.6)を認めた。一方、VIFはいずれも5未満であり統計学的な多重共線性の問題は認めなかった。しかし、TUGと歩行速度は移動能力を反映する類似指標と考えられたため、歩行速度を除外しTUGを代表指標として採用した。残存項目を用いて事後確率を算出した結果、事前確率30%に対して転倒確率は最大82.5%、最小13.5%まで変動した。
【考察】
本研究では、統計学的には多重共線性の問題は認められなかったものの、臨床的に類似した機能を反映する指標が存在することが示された。複数指標を単純に組み合わせるのではなく、独立性および臨床的意味を考慮して整理することが重要であると考えられる。
【結論】
複数指標を統合することで、一般的な転倒確率30%を大きく上回る高リスク群および下回る低リスク群の層別化が可能となった。事後確率を用いた評価は、単一指標では得られない転倒リスク評価として有用である可能性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する施設の研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。また、対象者には研究内容について説明を行い、同意を得た上で実施した。研究実施にあたってはヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行い、個人情報は匿名化した上で解析を行った。
高齢者における転倒は重要な健康問題であり、地域在住高齢者の年間転倒率は約30%と報告されている。転倒は外傷のみならず、活動制限を介した身体機能低下や要介護化につながるため、転倒リスクの早期同定が重要である。しかし、転倒は多因子現象であり、単一指標による予測には限界がある。近年、尤度比を用いた事後確率(post-test probability: PoTP)により複数指標を統合する方法が注目されているが、各評価項目の独立性については十分に検討されておらず、同様の情報を重複して評価することによる過剰なリスク評価が生じている可能性については明らかとなっていない。。そこで本研究では、各評価項目間の独立性を検討し、複数指標を統合した転倒リスク評価の妥当性を検証することを目的とした。
【方法】
本研究は後ろ向き観察研究とした。対象は65歳以上で自立歩行可能な地域在住高齢者172名とし、歩行に影響を及ぼす疾患や強い可動域制限、歩行時痛を有する者は除外した。過去1年間の転倒歴を調査し、非転倒群131名、転倒群41名に分類した。評価項目は転倒恐怖、杖使用の有無、歩行速度、Timed Up and Go test(TUG)、5回椅子立ち上がりテスト(SS-5)とした。統計解析としてPearsonの相関係数を算出し、分散拡大係数(VIF)を用いて多重共線性を評価した。有意水準は5%未満とした。さらに、各指標の尤度比を用いて事後確率を算出し、複数指標統合による転倒確率の変化を検討した。
【結果】
基本特性では年齢のみ群間差を認めた。相関分析の結果、TUGと歩行速度の間に強い負の相関(r = −0.7)、TUGとSS-5の間に中等度の正の相関(r = 0.6)を認めた。一方、VIFはいずれも5未満であり統計学的な多重共線性の問題は認めなかった。しかし、TUGと歩行速度は移動能力を反映する類似指標と考えられたため、歩行速度を除外しTUGを代表指標として採用した。残存項目を用いて事後確率を算出した結果、事前確率30%に対して転倒確率は最大82.5%、最小13.5%まで変動した。
【考察】
本研究では、統計学的には多重共線性の問題は認められなかったものの、臨床的に類似した機能を反映する指標が存在することが示された。複数指標を単純に組み合わせるのではなく、独立性および臨床的意味を考慮して整理することが重要であると考えられる。
【結論】
複数指標を統合することで、一般的な転倒確率30%を大きく上回る高リスク群および下回る低リスク群の層別化が可能となった。事後確率を用いた評価は、単一指標では得られない転倒リスク評価として有用である可能性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する施設の研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。また、対象者には研究内容について説明を行い、同意を得た上で実施した。研究実施にあたってはヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行い、個人情報は匿名化した上で解析を行った。
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