講演情報
[O10-01]不安を抱えたパーキンソン病患者の生活・行動範囲拡大プロセスの探求
―TEMを用いた質的事例研究―
*森田 隆剛1,2、池田 耕二2 (1. 城山病院 リハビリテーション科、2. 奈良学園大学大学院 リハビリテーション学研究科)
キーワード:
パーキンソン病、生活・行動範囲拡大、複線径路等至性モデリング
【はじめに、目的】
我々は2025年の本学会において、パーキンソン病(PD)集団体操教室に参加した1事例を対象に、ロールモデルとなる同病者との出会いや理学療法士(PT)の肯定的支援を通して、趣味活動の再開と生活・行動範囲拡大に至った可能性を報告した。しかし、生活・行動範囲拡大に至る過程には、多様な心理的・社会的要因が関与している可能性がある。そこで本研究では、生活・行動範囲拡大に至った別のPD患者1事例を対象に、複線径路等至性モデリング(TEM)を用いて、そのプロセスを探求した。
【方法】
対象は、生活空間評価(LSA)が48点から86点へ改善した75歳女性、H-Y分類2のPD患者1名とした。生活・行動範囲拡大プロセスについて半構造化面接を3回実施し、TEM分析を行った。TEMは、等至点(EFP)に至る多様なプロセスを時系列に沿って可視化する質的研究法である。本研究では、生活・行動範囲の拡大をEFPとし、必須通過点(OPP)、分岐点(BFP)、社会的助勢(SG)、社会的方向づけ(SD)を同定した。
【結果】
対象者は不安症状により通院していたが、急性腰痛症を契機に生活・行動範囲が狭小化し、歩き方の違和感を自覚した後にPDと診断された(OPP)。医師の勧めで体操教室に参加し(OPP)、体の動かしやすさは実感したが、生活・行動範囲の拡大には至らず、外出不安も残存していた(SD)。一方、体操教室参加者との交流(SG)やPTからの運動説明(SG)を受け、2回目の体操教室参加(BFP)を契機に、意識的に外出しようという思いが形成された(SG)。同病者の外出状況を知ったこと(SG)や、病気に理解のある友人との外出経験(SG)を通して安心感を得た。周囲から気を遣われる経験により不安も生じた(SD)が、同病者と病気のつらさを共有する中で関係性が深まり(SG)、外出への自信が形成された(SG)。最終的に、不安は残存しつつも友人と日帰りバスツアーに参加した(EFP)。
【考察】
本事例では、体操教室で動きやすさを実感しても、生活・行動範囲の拡大には直結しなかった。一方、同病者の外出状況を知ること、病気に理解のある友人との外出経験、同病者との交流を通した病気のつらさの共有が、安心感や外出への自信形成につながっていた。不安が残存していても、同病者や理解ある他者との交流などの心理社会的支援により生活・行動範囲の拡大に至る可能性が示唆された。
【結論】
本事例からは、体操教室を契機とした同病者や理解ある友人との交流が、外出への自信形成と生活・行動範囲拡大に寄与していた可能性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り説明を行い、同意を得た。また、当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2024-001)。
我々は2025年の本学会において、パーキンソン病(PD)集団体操教室に参加した1事例を対象に、ロールモデルとなる同病者との出会いや理学療法士(PT)の肯定的支援を通して、趣味活動の再開と生活・行動範囲拡大に至った可能性を報告した。しかし、生活・行動範囲拡大に至る過程には、多様な心理的・社会的要因が関与している可能性がある。そこで本研究では、生活・行動範囲拡大に至った別のPD患者1事例を対象に、複線径路等至性モデリング(TEM)を用いて、そのプロセスを探求した。
【方法】
対象は、生活空間評価(LSA)が48点から86点へ改善した75歳女性、H-Y分類2のPD患者1名とした。生活・行動範囲拡大プロセスについて半構造化面接を3回実施し、TEM分析を行った。TEMは、等至点(EFP)に至る多様なプロセスを時系列に沿って可視化する質的研究法である。本研究では、生活・行動範囲の拡大をEFPとし、必須通過点(OPP)、分岐点(BFP)、社会的助勢(SG)、社会的方向づけ(SD)を同定した。
【結果】
対象者は不安症状により通院していたが、急性腰痛症を契機に生活・行動範囲が狭小化し、歩き方の違和感を自覚した後にPDと診断された(OPP)。医師の勧めで体操教室に参加し(OPP)、体の動かしやすさは実感したが、生活・行動範囲の拡大には至らず、外出不安も残存していた(SD)。一方、体操教室参加者との交流(SG)やPTからの運動説明(SG)を受け、2回目の体操教室参加(BFP)を契機に、意識的に外出しようという思いが形成された(SG)。同病者の外出状況を知ったこと(SG)や、病気に理解のある友人との外出経験(SG)を通して安心感を得た。周囲から気を遣われる経験により不安も生じた(SD)が、同病者と病気のつらさを共有する中で関係性が深まり(SG)、外出への自信が形成された(SG)。最終的に、不安は残存しつつも友人と日帰りバスツアーに参加した(EFP)。
【考察】
本事例では、体操教室で動きやすさを実感しても、生活・行動範囲の拡大には直結しなかった。一方、同病者の外出状況を知ること、病気に理解のある友人との外出経験、同病者との交流を通した病気のつらさの共有が、安心感や外出への自信形成につながっていた。不安が残存していても、同病者や理解ある他者との交流などの心理社会的支援により生活・行動範囲の拡大に至る可能性が示唆された。
【結論】
本事例からは、体操教室を契機とした同病者や理解ある友人との交流が、外出への自信形成と生活・行動範囲拡大に寄与していた可能性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り説明を行い、同意を得た。また、当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2024-001)。
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