講演情報
[O11-02]地域在住高齢者における慢性疼痛と要介護発生の関連を媒介する時空間歩行特性:前向きコホート研究
*松田 総一郎1、土井 剛彦1,2、中窪 翔3、片山 脩1、崎本 史生1、山際 大樹1、野坂 進之介1、阿部 夏音1、島田 裕之1 (1. 国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部、2. 畿央大学 健康イノベーション教育研究センター、3. 国立長寿医療研究センター デジタルヘルス研究チーム)
キーワード:
慢性疼痛、要介護、歩行
【はじめに、目的】地域在住高齢者において、介護予防は公衆衛生上重要な課題である。本研究では、慢性疼痛と歩行機能低下の併存が要介護発生リスクを高めるか、さらに時空間歩行特性が慢性疼痛と要介護発生との関連を媒介するかを検討した。 【方法】65歳以上の地域在住高齢者のうち、ベースラインで要介護認定のない4,431名を2年間追跡した。慢性疼痛は3か月以上持続する腰、膝、その他の部位のいずれかの痛みと定義した。時空間歩行特性として、電子歩行路(walkway MW-1000, アニマ株式会社, 日本)により歩行速度、歩幅、ケイデンス、歩幅の変動性を測定した。各指標を中央値で二分し、歩行速度、歩幅、ケイデンスが中央値よりも低値、歩幅の変動性が中央値よりも高値の場合を歩行機能低下ありとした。2年間の追跡期間のうち、新規要介護認定を受けた時点を要介護発生と定義してアウトカムとし、年齢、性別、BMI、教育年数、服薬、生活習慣、MMSE、併存疾患を調整したCox比例ハザードモデルと媒介分析を実施した。 【結果】対象者の平均年齢は73.9±5.5歳、慢性疼痛ありが1,502名(33.9%)、要介護発生は237名(5.3%)であった。慢性疼痛あり・歩行機能低下あり群は、慢性疼痛なし・歩行機能低下なし群に比べ、いずれの歩行指標でも要介護発生リスクが最も高く、調整後HR[95%CI]は歩行速度3.48[2.21-5.46]、歩行率2.04[1.40-2.97]、歩幅3.24[2.08-5.04]、歩幅変動2.36[1.59-3.48]であった。媒介分析では歩行速度、歩幅、歩幅の変動性に有意な間接効果を認め、媒介割合は16.5%、20.6%、9.7%であり、ケイデンスは有意な媒介を認めなかった。 【考察】慢性疼痛に伴う回避行動や活動量低下は身体機能低下を介して歩行速度低下、歩幅の短縮、歩幅の変動性増大につながり、要介護発生リスクを高める可能性がある。特に歩幅は下肢機能や姿勢制御を反映し、慢性疼痛から要介護に至る早期の機能低下を示す指標となり得る。 【結論】地域在住高齢者では、慢性疼痛と歩行機能低下の併存が要介護発生の高リスクを示した。歩行速度と歩幅は慢性疼痛と要介護発生の関連を部分的に媒介する可能性があり、要介護予防におけるスクリーニングおよび介入標的として重要である。 【倫理的配慮、説明と同意】本研究は筆頭演者が所属する施設の研究倫理審査委員会の承認を得て実施し、対象者には研究目的を説明したうえで書面による同意を得た。
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