講演情報
[O7-01]脳梗塞後の離職により心理的葛藤を呈した一例に対する多職種連携の留意点
*清水 友章1、石垣 智也2 (1. 介護老人保健施設 サン・くすのき、2. 畿央大学大学院 健康科学研究科)
キーワード:
多職種連携、受容、脳卒中
【はじめに、目的】
脳卒中後遺症者は発症前の自己像と現状との葛藤を生じ、生活再建に難渋することがある。この場合、多職種間で支援方針が定まりにくく、支援方針共有が課題となる。本報告では、離職を契機に心理的葛藤を呈した一例から、多職種連携における支援上の留意点について考察することを目的とした。
【症例紹介、評価結果と問題点】
事例は脳梗塞後左片麻痺を呈した50歳代男性である。約2年前に発症し一度復職したが約1か月後に再発した。X日より訪問リハビリテーションを開始し、外出回避傾向を認めた。X+2か月に産業医面談を経て離職となり、「今後どうなるかわからない」といった将来不安や、就労していた自身と現状との間で葛藤がみられた。一方、入浴・買い物など一部介助が必要だが、調理や友人交流などの生活活動は保たれていた。X+3か月時点のPatient Health Questionnaire-9(PHQ-9:抑うつ症状)は5点(高値ほど不良)、Recovery Assessment Scale(RAS:回復志向)は78点(高値ほど良好)、Self-Stigma Scale Japanese version(SSS-J:セルフスティグマ)は27点(高値ほど不良)であり、心理的葛藤・負担を認めていた。
【介入内容と結果】
X+3か月より、多職種間で支援方針の検討と共有を図るために、リハビリテーション会議(計3回)の開催、ICTツール活用や報告書送付による情報共有を実施した。多職種連携の評価にはAssessment of Interprofessional Team Collaboration Scale-Ⅱ(AITCS-Ⅱ)を用いて評価した。X+3か月〜X+6か月には、当初の活動拡大から、心理的葛藤に配慮した“活動拡大に向けた準備期”とした支援方針へ変更となった。X+9か月のAITCS-Ⅱは、ケアマネジャーは良好な状態を維持し、訪問看護師は改善傾向を示した。事例のPHQ-9は0点に改善、RASは88点へ向上したが、SSS-Jは24点と明らかな変化を認めなかった。また活動拡大には至らなかったが生活活動は維持されており、X+9か月には「受け入れるしかないが、就労時の自分を思い出す」と適応を示唆する発言を認めた。
【考察】
多職種連携により活動拡大を急がない支援方針へ変更できたことが、事例の心理的安定に寄与した一方、離職による役割喪失や発症前の自己像との乖離から、活動拡大には至らなかったと考えられる。葛藤を呈する脳卒中後遺症者への多職種連携では、対象者の心理状態に配慮した支援方針の検討・共有に留意することが重要となり得る。
【倫理的配慮、説明と同意】
本報告にあたり、個人が特定されないよう十分配慮し、個人情報およびプライバシー保護に留意した。本人および関係支援者に対して書面および口頭にて説明し、同意を得た。
脳卒中後遺症者は発症前の自己像と現状との葛藤を生じ、生活再建に難渋することがある。この場合、多職種間で支援方針が定まりにくく、支援方針共有が課題となる。本報告では、離職を契機に心理的葛藤を呈した一例から、多職種連携における支援上の留意点について考察することを目的とした。
【症例紹介、評価結果と問題点】
事例は脳梗塞後左片麻痺を呈した50歳代男性である。約2年前に発症し一度復職したが約1か月後に再発した。X日より訪問リハビリテーションを開始し、外出回避傾向を認めた。X+2か月に産業医面談を経て離職となり、「今後どうなるかわからない」といった将来不安や、就労していた自身と現状との間で葛藤がみられた。一方、入浴・買い物など一部介助が必要だが、調理や友人交流などの生活活動は保たれていた。X+3か月時点のPatient Health Questionnaire-9(PHQ-9:抑うつ症状)は5点(高値ほど不良)、Recovery Assessment Scale(RAS:回復志向)は78点(高値ほど良好)、Self-Stigma Scale Japanese version(SSS-J:セルフスティグマ)は27点(高値ほど不良)であり、心理的葛藤・負担を認めていた。
【介入内容と結果】
X+3か月より、多職種間で支援方針の検討と共有を図るために、リハビリテーション会議(計3回)の開催、ICTツール活用や報告書送付による情報共有を実施した。多職種連携の評価にはAssessment of Interprofessional Team Collaboration Scale-Ⅱ(AITCS-Ⅱ)を用いて評価した。X+3か月〜X+6か月には、当初の活動拡大から、心理的葛藤に配慮した“活動拡大に向けた準備期”とした支援方針へ変更となった。X+9か月のAITCS-Ⅱは、ケアマネジャーは良好な状態を維持し、訪問看護師は改善傾向を示した。事例のPHQ-9は0点に改善、RASは88点へ向上したが、SSS-Jは24点と明らかな変化を認めなかった。また活動拡大には至らなかったが生活活動は維持されており、X+9か月には「受け入れるしかないが、就労時の自分を思い出す」と適応を示唆する発言を認めた。
【考察】
多職種連携により活動拡大を急がない支援方針へ変更できたことが、事例の心理的安定に寄与した一方、離職による役割喪失や発症前の自己像との乖離から、活動拡大には至らなかったと考えられる。葛藤を呈する脳卒中後遺症者への多職種連携では、対象者の心理状態に配慮した支援方針の検討・共有に留意することが重要となり得る。
【倫理的配慮、説明と同意】
本報告にあたり、個人が特定されないよう十分配慮し、個人情報およびプライバシー保護に留意した。本人および関係支援者に対して書面および口頭にて説明し、同意を得た。
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