講演情報
[O9-01]ランキング掲示による社会的比較が通所リハ利用者の運動行動に及ぼす影響:個人特性の異なる事例間比較
*平川 雄太1、武田 広道2、石垣 智也3、森 優太4、横山 広樹5、後藤 悠太6、秋定 優太7、甲斐 浩基1 (1. JA愛知厚生連 介護老人保健施設あおみ、2. 北陸大学医療保健学部 理学療法学科、3. 畿央大学大学院 健康科学研究科、4. 名古屋学院大学 リハビリテーション学部、5. 関西医科大学くずは病院 リハビリテーション科、6. 西大和リハビリテーション病院 リハビリテーション部、7. 合同会社 Well-being base)
キーワード:
社会的比較、人格特性、通所リハビリテーション
【はじめに】人は他者と自己を比較する社会的比較志向を有する。通所リハビリテーションの集団環境では,この比較を活用した取組みが利用者の運動行動を促す可能性がある。一方,その反応は社会的比較志向や性格という個人特性により異なると考えられる。本報告では,他者との競争的要素を含む取り組みに対照的な反応を示した2事例を比較し,社会的比較が運動行動に寄与しやすい個人特性を考察する。【事例紹介】事例Aは脳梗塞後の80歳代前半の男性(要介護2)である。歩行は自立しており,毎日3000歩の歩行習慣と日記によるセルフモニタリングが定着していた。Ten Item Personality Inventory(以下,TIPI-J)では,各因子平均的で顕著な性格特性を認めず,社会的接触を測定する親和動機測定尺度の下位尺度である社会的比較は11/25点と,他者と自己を比較する傾向が低い特性を示した。運動に対する動機づけを測定するBehavioral Regulation in Exercise Questionnaire-3(以下,BREQ-3)の自律的動機づけは4.6/5点と高値であり,自己決定性の高い動機づけが示された。事例Bは右被殻視床出血後の70歳代後半の女性(要介護3)である。歩行不能であり,目標は食器の片付けであったが,把持力への自信が乏しく落下を懸念していた。TIPI-Jは勤勉性と神経症傾向が高く,社会的比較は23/25点と比較傾向が強い特性を示した。BREQ-3は自律的動機づけ3.7点であった。【経過】定期評価(握力,30-second Chair Stand Test)のデータを用い,全利用者における上位10名をランキング形式でフロアに掲示した(X日)。掲示は3ヶ月ごとに更新し,療法士による肯定的なフィードバックをX+6ヶ月まで継続した。事例AはX日に「3位ですか,嬉しいですね」と述べたが,新たな運動の追加はなく,X+6ヶ月も歩行習慣と自律的動機づけは維持(4.6点)にとどまった。一方,事例BはX日以降,順位を頻繁に確認し,上位者の練習状況に関心を示した。「手の力なら私にもできるかしら,頑張りたい」と述べ,利用日の余暇時間にハンドグリップの自主練習を開始し,X+2ヶ月には自ら購入し自宅練習も開始した。X+6ヶ月には握力は21kgから25.5kgへ向上し,食器の片付けが可能となった。自律的動機づけも4.8点へ向上した。【考察】競争的要素を含むランキング掲示は,勤勉性と神経症傾向が高く,社会的比較志向が強い者では,順位や他者の行動を手がかりに運動行動を促進する可能性がある。一方,すでに自律的な運動習慣が形成され,社会的比較志向が弱い者では,新たな行動変容にはつながりにくく,既存行動の維持を支持するにとどまった。競争的要素を含む社会的比較を導入する際は,性格や社会的比較志向という個人特性を踏まえた対象選定と関わり方が重要となる。【倫理的配慮,説明と同意】本報告に際し,事例の個人情報の保護とプライバシーに配慮し,十分な説明のもと同意を得た。
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