講演情報

[O3-04]終末期在宅療養において理学療法士は何を支えるのか
ー訪問リハビリテーションの役割を再考した一例ー

*名越 絵理1,2、小峰 隆弘1,2 (1. やまと診療所/訪問リハビリ、2. おうちでよかった訪問看護/リハビリ)
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キーワード:

終末期在宅療養、看取り、生活環境

【はじめに】
近年、日本の高齢化による多死社会を背景に、終末期医療におけるリハビリテーションの役割が重要視されている。しかし、終末期在宅療養において身体機能や生活機能の維持が困難となり、支援の重点が看取りを見据えたターミナルケアへ移行する時期には、理学療法士は何を支えるべきか迷いを生じやすい。終末期在宅療養における訪問リハビリテーションの役割を再考する契機となった症例を報告する。
【症例紹介】
99歳女性、主介護者である息子と二人暮らし。「無理せず家で過ごしたい」と希望し、老衰により在宅療養を継続。3年前より訪問リハビリテーションを開始。転倒後より徐々に衰弱が進行し、死亡前4週間頃から食事・飲水量低下が顕著となった。
【評価・課題設定および介入】
日常生活動作は全介助となり、易疲労性や筋出力低下により体位変換時の苦痛を認めた。また、不動に伴う関節拘縮も進行していたため、拘縮予防、ポジショニング、介助指導を中心とした苦痛緩和プログラムを立案した。一方、主介護者である息子の関心は点滴治療や栄養管理などの医学的管理へ集中していた。医療者との会話も身体状態の変化を中心としており、患者の表情の乏しさ、親子の会話の減少、息子自身の生活の崩れなど、家庭内の日常性の低下を認めた。そこで、本人らしい生活や家族としての関わりを支える生活環境への支援が必要と考え、課題を「本人らしい生活と家族関係を支えること」と再設定した。苦痛緩和を継続しながら生活史や価値観を息子と共有し、好きな歌をともに歌唱して感情表出を促した。その後、音楽や会話など本人らしく過ごせる関わりを提案した。
【結果】
医学的管理を中心とした会話は減少し、家庭内では本人を中心とした生活場面が再びみられるようになった。また、介護中心であった関わりに家族としての関わりが生じた。本人は最期まで在宅で穏やかに過ごし逝去した。
【考察】
本症例では、身体機能低下への対応に加え、本人らしい生活と家族関係を支えることを課題として介入した結果、介護中心であった関わりに家族としての関わりが生じ、本人を中心とした生活場面が再びみられるようになった。終末期在宅療養では身体機能の維持・改善を目的とした介入が限られるため、理学療法士は支援の方向性に迷いを生じやすい。しかしQuality of Lifeの維持を目標とするならば、支援対象は身体機能だけでなく、家族関係や生活環境を含む生活全体へと広がる。本症例を通して、訪問リハビリテーションは本人らしい暮らしが継続される生活環境を支える役割を担えることが示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言を遵守し、本発表の趣旨と内容について家族へ説明し同意を得た。

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