講演情報

[P15-04]退院直後の転倒に伴う転倒関連自己効力感の低下により調理動作の再獲得に難渋した一事例

*宇賀 涼哉1、實光 遼1、井尻 朋人2、鈴木 俊明3 (1. 介護老人保健施設 ヴァンベール、2. 喜馬病院 リハビリテーションセンター、3. 関西医療大学)
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キーワード:

転倒恐怖感、FES-I、COPM

【はじめに・目的】
転倒後に転倒恐怖感を生じた高齢者では活動制限を認めやすく、生活行為の再獲得には身体・心理双方への介入が必要である(MacKayら,2021)。転倒は自己効力感を低下させ、生活行為を制限する。今回、身体機能低下に加え、退院直後の転倒に伴う心理的要因から調理動作の再獲得に難渋した症例を経験した。 本症例に対し、FES-Iで転倒恐怖感を評価し、生活行為加算を用いて身体・心理双方に介入し、調理動作の再獲得に至ったため報告する。

【症例紹介、評価結果と問題点】
症例は、左大腿骨転子部骨折を受傷し、観血的整復固定術後の70歳代女性である。受傷から約3ヶ月後に自宅退院し、通所リハを開始した。退院前に調理再開を希望していたが、退院当日に自宅内で転倒し、「転ぶのが怖い」と訴えた。 調理動作には台所内での方向転換や物品操作が必要だが、転倒への恐怖からそれらの動作に消極的であった。方向転換・立位保持では、左股関節・体幹は屈曲位を呈していた。方向転換後は左股関節・体幹屈曲が増強し、前方への転倒傾向があり安全性・安定性の低下を認めた。立位保持も30秒程度で困難となり、調理の実践には至らなかった。Manual Muscle Testing(MMT)は左股関節伸展2、体幹伸展2で、耐久性低下の要因と考えた。転倒による活動制限を確認するためShort FES-Iを実施し、25点と高い転倒恐怖感を認めた。また、調理の重要性と遂行状況確認にCOPMを用い、重要度9点、遂行度・満足度1点であった。以上より、調理動作の再獲得には立位保持の耐久性低下に加え、転倒体験による自己効力感低下への介入が必要と考えた。

【介入内容と結果】
立位保持や方向転換における実用性低下の要因と考えた股関節・体幹伸展筋力低下に対し、股関節・体幹伸展筋力強化練習、立位保持・方向転換練習を実施した。心理的障壁に対し、生活行為向上マネジメント(MTDLP)を基盤に、調理台前での物品移動など、環境調整と段階的課題設定を行い、「転倒せず遂行できた」という成功体験を積ませた。約3ヶ月後、左股関節伸展MMT3、体幹伸展MMT3、立位保持約5分、Short FES-I16点、COPM遂行度7点、満足度8点となり、休憩を挟み合計約2時間の調理が可能となった。

【考察】
股関節・体幹伸展筋力の向上により立位保持時間の延長や方向転換後の転倒傾向が軽減し、転倒恐怖感が軽減したと考える。さらに、MTDLPを基盤とした環境調整と段階的課題設定により成功体験が蓄積され、自己効力感の向上と調理動作の再獲得につながったと考えられる。

【倫理的配慮、説明と同意】
本発表は、発表者が所属する施設の研究倫理委員会の承認を得て実施した。 また、ヘルシンキ宣言に則り、被験者には事前に書面及び口頭にて研究目的や方法について説明し、自由意志のもと、書面で同意を得た。

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