講演情報

[O5-01]中年期脳卒中事例における障害適応の過程
−活動再開と社会的関係性に着目したSCAT分析による考察−

*池田 勇太1、尾川 達也2、指宿 輝3、石垣 智也4、秋定 優太5、武田 広道6、赤口 諒1 (1. 摂南総合病院リハビリテーション科、2. 西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部、3. 大分大学医学部附属病院リハビリテーション部、4. 畿央大学大学院 健康科学研究科、5. 合同会社Well-being base、6. 北陸大学 医療保健学部理学療法学科)
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キーワード:

障害適応、SCAT分析、価値ある活動

【はじめに】脳卒中後の障害適応において,価値ある活動の再構築に至る過程を質的に検討した報告は少ない。本報告では,中年期脳卒中事例の障害適応に着目し,猫を通じた活動の再開に至った過程について,社会的関係性から考察することを目的とした。【事例紹介】事例はX日に脳出血・もやもや病と診断され,6ヶ月後にサービス付高齢者住宅に退院された50歳代女性で,退院に合わせて訪問リハビリテーション(訪問リハ)を開始した。病前は就業,園芸,猫ボランティア参加など飼い猫中心の生活で,家族・友人関係は良好であった。訪問リハ開始時,6分間歩行試験(6MWT)115m,ADL全修正自立であったが,IADLは屋内家事のみであり,買い物の自立を希望していた。【経過】障害適応について,X+10〜16カ月の期間で回顧的インタビューを実施した(一期間約20分,計5回)。内容は不安の種類,身体をどう感じるか,訪問リハへの期待について半構造的に質問し,録音データから逐語録を作成した。分析にはSteps for Coding and Theorizationを用い,抽出したテーマ・構成概念をもとにストーリーライン・理論記述を作成した。分析より,不安顕在期(X+6カ月),乖離顕在期(X+8-10カ月),現実的適応期(X+12カ月),価値再認識期(X+15カ月)の4つの段階に整理された。不安顕在期は,新生活への適応姿勢や具体的目標を有するも,機能的限界の提示による絶望感や回復機会減少に伴う不安が増大し,家族へ依存的であった。乖離顕在期では,買い物や孫の子守などの試行的活動の中で “努力しているが伴わない”と理想と現実の乖離が明確となり,無力感や焦燥感の情緒的動揺が顕著であった。その中で,“自然のままいくしかない”という言動もあり,適応と葛藤の間で揺らぐ状態にあった。現実的適応期では,将来への曖昧な不安に変化し,情動の安定に伴い“こんなもんか”と現実的認識が形成されつつあり,友人の誘いで猫ボランティアを再開した。価値再認識期では6MWTが220mとなり,将来への曖昧な不安は持続していたが,園芸を再開し,病前飼っていた猫との再会を果たした。また,“元気な時に戻りたい” “猫と過ごしたい”といった過去志向を有しつつ,”前職場・近所の人に会いたい”と新たな生活を再構築する未来志向の言動もみられた。【考察】本事例では,葛藤を経験しながらも試行的活動を継続できたことが,障害適応の促進を通して価値ある活動の再構築に至った可能性がある。背景には,高い回復意欲や周囲との良好な関係性,さらに部分的にでも活動できる身体機能を有していたことが関与したと考える。価値ある活動の再構築には,葛藤を経験しながらも,試行的活動へ取り組める機会や環境の整備が重要と考える。【説明と同意】事例には,個人情報とプライバシーの保護に配慮し,本発表の趣旨と内容に関して詳細な説明を行い,口頭と紙面にて同意を得ている。

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