講演情報
[O1-05]視覚的位置マーキングを用いた福祉用具操作支援
―重症頭部外傷の在宅復帰症例報告―
*大和久 崇充1、早坂 恵1、石塚 諒一1、安中 恵1、八巻 智洋2、小林 繁樹2 (1. 自動車事故対策機構千葉療護センター リハビリテーション科、2. 自動車事故対策機構千葉療護センター 脳神経外科)
キーワード:
重症頭部外傷、在宅復帰、mistake-proofing
【はじめに】
重症頭部外傷患者の在宅復帰において、家族介護者が福祉用具を安全に操作できることは必須条件である。重度障害者ではリフトや段差解消機など複数の福祉用具を使用するが、機器間の位置合わせを再現性をもって行うことは容易でなく、介護者が高齢の場合この課題は一層顕著となる。Grout(2006)はmistake-proofingを「物理的デザイン変更によるエラー防止」と定義し床面マーキングを示したが、複数福祉用具間の位置調整への応用は十分検討されていない。本報告の目的は、据置式リフト・車椅子・段差解消機の機器間位置合わせにテープによる視覚的マーキングを導入した経過と、高齢介護者による操作の再現性確保を試みた結果を報告することである。
【症例紹介と問題点】
40代男性。10代に交通事故により重症頭部外傷を受傷。3年間の入院後20年以上の在宅療養を経て当院に3年間入院した。四肢麻痺、体幹機能全廃で座位保持不可、重度の胸腰椎側弯を呈し、意思疎通は限定的でありFIM18点。尖足および足部骨折の既往を有する。主介護者は70代の両親。再骨折リスクから立位移乗、座位保持困難から座位移乗をいずれも不適当と判断し、臥位移乗(据置式リフト)を選択した。本症例では、リフトと車椅子間の移乗に加え、屋外移動時の昇降機と車椅子間でも位置合わせが必要であり、複数の福祉用具を連続使用する場面でエラー防止と安全性向上のために高齢介護者の認知的負担軽減が課題となった。
【介入と結果】
床面に赤色テープで4箇所(ベッド位置、リフト停止位置、車椅子停止位置、段差解消機内の車椅子位置およびティルト角度目印)を視覚的にマーキングした。介護者指導は計8回(書面での説明2回、体験指導4回、試験外泊初日のPT・OT同行訪問1回、外泊後追加指導1回)を実施。さらに手順書と操作動画を作成し介護者へ提供した。退院1ヶ月前に2泊の試験外泊を実施し、両親のみでベッドからリフトを介した車椅子への移乗、および車椅子から段差解消機を用いた屋外移動を行い、有害事象を認めなかった。退院後リフトは別機種に変更となったが、4年以上の在宅生活で重大事故の報告はない。
【考察】
本症例はmistake-proofing概念を在宅介護環境における複数福祉用具間の位置調整に応用した実践例である。低コスト・簡便な床面マーキングが高齢介護者の認知負荷を軽減し、操作の再現性確保に寄与した。リフトの機種変更後も継続使用可能であったことは、本手法が特定機種に依存しない汎用的支援となりうることを示唆する。理学療法士の役割として、機器選定の臨床推論、介護者特性に応じた指導法の調整、同行訪問による直接的環境調整が重要であった。
【倫理的配慮、説明と同意】
患者本人および家族に本報告の目的・内容・匿名化処理・写真の使用を書面および口頭で説明し同意を得た。当院倫理委員会の規定により、症例報告については倫理審査の対象外である。
重症頭部外傷患者の在宅復帰において、家族介護者が福祉用具を安全に操作できることは必須条件である。重度障害者ではリフトや段差解消機など複数の福祉用具を使用するが、機器間の位置合わせを再現性をもって行うことは容易でなく、介護者が高齢の場合この課題は一層顕著となる。Grout(2006)はmistake-proofingを「物理的デザイン変更によるエラー防止」と定義し床面マーキングを示したが、複数福祉用具間の位置調整への応用は十分検討されていない。本報告の目的は、据置式リフト・車椅子・段差解消機の機器間位置合わせにテープによる視覚的マーキングを導入した経過と、高齢介護者による操作の再現性確保を試みた結果を報告することである。
【症例紹介と問題点】
40代男性。10代に交通事故により重症頭部外傷を受傷。3年間の入院後20年以上の在宅療養を経て当院に3年間入院した。四肢麻痺、体幹機能全廃で座位保持不可、重度の胸腰椎側弯を呈し、意思疎通は限定的でありFIM18点。尖足および足部骨折の既往を有する。主介護者は70代の両親。再骨折リスクから立位移乗、座位保持困難から座位移乗をいずれも不適当と判断し、臥位移乗(据置式リフト)を選択した。本症例では、リフトと車椅子間の移乗に加え、屋外移動時の昇降機と車椅子間でも位置合わせが必要であり、複数の福祉用具を連続使用する場面でエラー防止と安全性向上のために高齢介護者の認知的負担軽減が課題となった。
【介入と結果】
床面に赤色テープで4箇所(ベッド位置、リフト停止位置、車椅子停止位置、段差解消機内の車椅子位置およびティルト角度目印)を視覚的にマーキングした。介護者指導は計8回(書面での説明2回、体験指導4回、試験外泊初日のPT・OT同行訪問1回、外泊後追加指導1回)を実施。さらに手順書と操作動画を作成し介護者へ提供した。退院1ヶ月前に2泊の試験外泊を実施し、両親のみでベッドからリフトを介した車椅子への移乗、および車椅子から段差解消機を用いた屋外移動を行い、有害事象を認めなかった。退院後リフトは別機種に変更となったが、4年以上の在宅生活で重大事故の報告はない。
【考察】
本症例はmistake-proofing概念を在宅介護環境における複数福祉用具間の位置調整に応用した実践例である。低コスト・簡便な床面マーキングが高齢介護者の認知負荷を軽減し、操作の再現性確保に寄与した。リフトの機種変更後も継続使用可能であったことは、本手法が特定機種に依存しない汎用的支援となりうることを示唆する。理学療法士の役割として、機器選定の臨床推論、介護者特性に応じた指導法の調整、同行訪問による直接的環境調整が重要であった。
【倫理的配慮、説明と同意】
患者本人および家族に本報告の目的・内容・匿名化処理・写真の使用を書面および口頭で説明し同意を得た。当院倫理委員会の規定により、症例報告については倫理審査の対象外である。
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