講演情報

[O1-03]統合失調症を患っている母親を介護する四肢不全麻痺症例から考える地域理学療法士の役割

*平野 圭紀1、筒井 洋輔1、藤井 亮輔1 (1. えふてぃ訪問看護ステーション リハビリテーション部)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

地域共生社会、自助・互助、包括的アプローチ

【はじめに】
現代社会において老老介護や8050問題などさまざまな社会問題が散見される.理学療法士協会(以下,協会)からも「地域共生社会」の実現に向けた取り組みが紹介されている.協会は,すべての人の健康と幸福を実現するために,「尊厳ある自立」と,その「くらし」を守ることを理念として掲げている.今回,統合失調症を患っている母親を介護している脳脊髄腫瘍による四肢不全麻痺の合併症がある症例を担当した.本症例の介入を通じて,地域理学療法士に求められる役割の側面を経験することが出来た為報告する.
【症例紹介】
性別:女性,年齢:30代,診断:斜頸(術後),麻痺性側弯症,脳脊髄腫瘍(術後),主訴:全身に痛みがある,needs:母の介護を継続したい,生活状況:週2日は自宅マンションで独居,週5日は実家で母の介護をしている.屋内は伝い歩き又は車椅子移動.実家では住環境により車椅子の使用が困難である為,伝い歩きで移動し普通椅子で過ごしている.屋外は電動車椅子を使用し公共交通機関も利用できている.職業は就労支援Bでイラストレーターをしている.自宅マンションの出入りと入浴時はヘルパーを利用,外出や介護は近隣に在住する友人の協力がある.
【介入内容と結果】
課題である疼痛の要因として,①アライメント不良,②気候変動の影響,③実家環境,④母の介護負担,⑤友人との電話による不眠を考えた. ①に対して徒手療法や分離運動の促通,動作練習を実施した.②に対してアプリケーションを使用し気候変動による身体状況の変化を記録し共有した.予測される身体状況に合わせたスケジューリングを共に検討した.③に対して立位での活動量増加に伴い疼痛の増強を認めた為,座位での作業を提案し,除圧指導を実施した.④,⑤に対して精神的負担が主である為,傾聴し表出する機会を設け負担感の軽減を図るとともに生活状況の把握を行った.また,電話の時間や頻度を共に検討した.身体・精神的ケア,外部要因を含む環境調整や生活状況を共有し行動変容を促した結果,疼痛の増強を予防し生活を維持することができている.
【考察】
地域共生社会を実現するためには,公的支援だけでは限界があり自助・互助の底上げが求められる.しかし,現代社会では,「核家族化」が進行しており個人や家庭が孤立しやすい時代となっている.そこで地域理学療法士の役割には,自助面における身体機能の向上や環境調整といった関わりと互助面における別居世帯や社会とのつながりのきっかけとなる必要があると考える.今回は疼痛に対して直接的に身体ケアを行うことに加えて,生活背景を考慮し包括的アプローチを実施したことにより疼痛の増強を予防し母の介護を継続することができた.生活背景を把握することで予後予測の解像度も上がり住み慣れた地域での生活を維持していくことに繋がると考える.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき利用者へ説明し,口頭同意を得た.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン