講演情報
[P1-07]スポーツ観戦を通じた社会参加支援における心理的・社会的障壁の検討 ―疑似車いす観戦と実際の観戦支援―
*山口 慎一1、野口 雅弘2、越野 慶隆3 (1. こしの内科クリニック デイケア、2. 北陸大学 医療保険学部 理学療法学科、3. みずほ病院 内科)
キーワード:
社会参加支援、心理的障壁、スポーツ観戦
【はじめに】
地域理学療法学において,社会参加支援は重要な役割を担っている.一方で,移動能力に制限を有する者にとってスポーツ観戦などの余暇活動への参加機会は十分とはいえず,参加を阻害する要因について検討する必要がある.本研究の目的は,普段車いすを使用していない骨折者による車いすでのスポーツ観戦,および車いす利用者に対する実際のスポーツ観戦支援を通して,スポーツ観戦を用いた社会参加支援の実現可能性と,参加を阻害する心理的・社会的要因を明らかにすることである.
【方法】
本検討では,2つの実践を行った.1つ目は,研究責任者が腓骨骨折術後に車いす利用者としてサッカー観戦を行う「疑似車いす観戦」である.介助者は介護経験のない友人とした.観戦前後に,車いす利用者および介助者に対して,不安,期待,負担感,満足度などをNumerical Rating Scale(NRS:0~10)で評価した. 2つ目は,実際の車いす利用者に対して,理学療法士がボランティアとしてサッカー観戦を支援する「観戦支援ボランティア」である.実施前後に,対象者の満足度や再参加意欲などをNRS(0~10)で評価し,社会参加支援における課題を整理した.
【結果】
疑似車いす観戦では,車いす利用者は観戦後に高い満足度と再参加意欲を示した.一方で,介助を依頼することへの申し訳なさ,人混みでの不安,介助者が不在となった場合の不安など,心理的負担が認められた.介助者は実施前に高い負担感を予測していたが,実施後の心理的負担は低下した(NRS 8から2). 観戦支援ボランティアでは,車いす利用者から高い満足感が得られた.一方で,支援者への配慮から,再度の利用を遠慮する発言がみられた.また,送迎手段や支援体制の確保が,継続的な実施における課題として挙げられた.
【考察】
本検討から,スポーツ観戦は車いす利用者にとって高い満足感を得られる社会参加手段となり得ることが示唆された.一方で,参加を阻害する要因は身体機能の問題だけではなく,対象者側の遠慮や依頼しづらさといった心理的障壁,支援者側の負担認識や安全面への不安などの社会的要因も関与する可能性が示された.特に疑似車いす観戦では,介助者が事前に予測した負担感と実際の体験後の負担感との間に乖離が認められた.このことから,支援者側の認識や経験の有無が,社会参加機会の創出に影響する可能性が考えられる.社会参加支援を推進するためには,身体機能評価に加えて,対象者の心理的負担や支援者側の不安,送迎や見守り体制などの社会的要因を把握することが重要である.今後は,対象者のニーズに対応可能な地域資源を把握し,継続的に活用できる支援体制の構築について検討する必要がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
両実践の対象者に対して,本検討の趣旨を口頭および書面で説明し,書面にて同意を得た.また,発表に際しては個人が特定されないよう配慮した.
地域理学療法学において,社会参加支援は重要な役割を担っている.一方で,移動能力に制限を有する者にとってスポーツ観戦などの余暇活動への参加機会は十分とはいえず,参加を阻害する要因について検討する必要がある.本研究の目的は,普段車いすを使用していない骨折者による車いすでのスポーツ観戦,および車いす利用者に対する実際のスポーツ観戦支援を通して,スポーツ観戦を用いた社会参加支援の実現可能性と,参加を阻害する心理的・社会的要因を明らかにすることである.
【方法】
本検討では,2つの実践を行った.1つ目は,研究責任者が腓骨骨折術後に車いす利用者としてサッカー観戦を行う「疑似車いす観戦」である.介助者は介護経験のない友人とした.観戦前後に,車いす利用者および介助者に対して,不安,期待,負担感,満足度などをNumerical Rating Scale(NRS:0~10)で評価した. 2つ目は,実際の車いす利用者に対して,理学療法士がボランティアとしてサッカー観戦を支援する「観戦支援ボランティア」である.実施前後に,対象者の満足度や再参加意欲などをNRS(0~10)で評価し,社会参加支援における課題を整理した.
【結果】
疑似車いす観戦では,車いす利用者は観戦後に高い満足度と再参加意欲を示した.一方で,介助を依頼することへの申し訳なさ,人混みでの不安,介助者が不在となった場合の不安など,心理的負担が認められた.介助者は実施前に高い負担感を予測していたが,実施後の心理的負担は低下した(NRS 8から2). 観戦支援ボランティアでは,車いす利用者から高い満足感が得られた.一方で,支援者への配慮から,再度の利用を遠慮する発言がみられた.また,送迎手段や支援体制の確保が,継続的な実施における課題として挙げられた.
【考察】
本検討から,スポーツ観戦は車いす利用者にとって高い満足感を得られる社会参加手段となり得ることが示唆された.一方で,参加を阻害する要因は身体機能の問題だけではなく,対象者側の遠慮や依頼しづらさといった心理的障壁,支援者側の負担認識や安全面への不安などの社会的要因も関与する可能性が示された.特に疑似車いす観戦では,介助者が事前に予測した負担感と実際の体験後の負担感との間に乖離が認められた.このことから,支援者側の認識や経験の有無が,社会参加機会の創出に影響する可能性が考えられる.社会参加支援を推進するためには,身体機能評価に加えて,対象者の心理的負担や支援者側の不安,送迎や見守り体制などの社会的要因を把握することが重要である.今後は,対象者のニーズに対応可能な地域資源を把握し,継続的に活用できる支援体制の構築について検討する必要がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
両実践の対象者に対して,本検討の趣旨を口頭および書面で説明し,書面にて同意を得た.また,発表に際しては個人が特定されないよう配慮した.
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