講演情報
[O16-03]地理空間情報から紐解く回復期患者の自宅復帰要因—QGISと傾斜量図を活用した周辺環境障壁の可視化ー
*宇部 優輝1 (1. 赤羽リハビリテーション病院)
キーワード:
傾斜、東京都、埼玉県
【はじめに、目的】
当院は東京都北区に位置し、区西北部医療圏や埼玉南部エリアからの入院が多い回復期リハビリテーション病棟である。北区は武蔵野台地と荒川平地が交錯し傾斜の多い地形であり、屋外の傾斜環境は外出や玄関への階段設置等に影響し、自宅退院の障壁になり得る。本研究ではバリアフリー法等の基準である1/12勾配(8.3%)を指標とし、居住地域の傾斜が自宅退院へ及ぼす影響を地理空間データを用いて検証した。
【方法】 対象は2025年4月1日から1年間に対象エリア内から退院した1,063名とした。性別、年齢、疾患(脳血管:脳、運動器:運、廃用症候群:廃)、入院日数、退院先、階段昇降の必要性、入院時FIM(運動、認知)を抽出した。住所地は町名までとし、QGIS 3.34(EPSG 6677)で座標化後、国土地理院の傾斜量図より傾斜度を算出し、8.3%未満を傾斜なし群、8.3%以上を傾斜群とした。退院先と傾斜の有無の関連をX²検定で検討後、退院先を目的変数、傾斜の有無、階段昇降の必要性、性別、年齢、疾患分類、入院日数、入院時運動・認知FIMを説明変数としたロジスティック回帰分析(強制投入法)を施行した。EZR ver 1.70を用い有意水準は5%未満とした。
【結果】 解析対象は1,063名(男性518名、女性545名、年齢75.4±14.3歳、脳:528名、運:334名、廃:201名、入院日数中央値72日)。X²検定では自宅復帰率は傾斜なし群59.6%、傾斜群61.6%であり有意差を認めなかった(p=0.542)。ロジスティック回帰分析でも、屋外傾斜環境は自宅退院との間に有意な関連を示さなかった(オッズ比1.09、95%信頼区間0.85–1.41、p=0.507)。説明変数のうち有意な関連を示したのは入院時運動FIMのみであった(p=0.012)。
【考察】単変量・多変量解析のいずれにおいても、屋外傾斜環境と自宅退院との間に有意な関連は認められなかった。退院先決定には傾斜という地理的要因よりも、運動FIMに代表される身体機能の影響が大きく、地形的要因の効果が相対的に小さかった可能性がある。また、町名単位で算出した傾斜量図は実際の生活経路上の傾斜を反映していないことが影響したとも考えられる。傾斜地であっても福祉用具、送迎サービス等によって障壁が代償されている可能性も否定できない。
【結語】 居住地域の屋外傾斜環境が回復期リハ患者の自宅退院に有意な影響を及ぼすとは言えなかった。退院先の検討には地理的傾斜情報よりも身体機能評価がより重要である可能性が示唆された。傾斜評価の精度向上を含めたさらなる検証が必要である。
【倫理的配慮】 本研究は当院の倫理審査委員会にて承認済みである。対象者情報は匿名化し、当院WEBサイトにてオプトアウトの機会を提供した。
当院は東京都北区に位置し、区西北部医療圏や埼玉南部エリアからの入院が多い回復期リハビリテーション病棟である。北区は武蔵野台地と荒川平地が交錯し傾斜の多い地形であり、屋外の傾斜環境は外出や玄関への階段設置等に影響し、自宅退院の障壁になり得る。本研究ではバリアフリー法等の基準である1/12勾配(8.3%)を指標とし、居住地域の傾斜が自宅退院へ及ぼす影響を地理空間データを用いて検証した。
【方法】 対象は2025年4月1日から1年間に対象エリア内から退院した1,063名とした。性別、年齢、疾患(脳血管:脳、運動器:運、廃用症候群:廃)、入院日数、退院先、階段昇降の必要性、入院時FIM(運動、認知)を抽出した。住所地は町名までとし、QGIS 3.34(EPSG 6677)で座標化後、国土地理院の傾斜量図より傾斜度を算出し、8.3%未満を傾斜なし群、8.3%以上を傾斜群とした。退院先と傾斜の有無の関連をX²検定で検討後、退院先を目的変数、傾斜の有無、階段昇降の必要性、性別、年齢、疾患分類、入院日数、入院時運動・認知FIMを説明変数としたロジスティック回帰分析(強制投入法)を施行した。EZR ver 1.70を用い有意水準は5%未満とした。
【結果】 解析対象は1,063名(男性518名、女性545名、年齢75.4±14.3歳、脳:528名、運:334名、廃:201名、入院日数中央値72日)。X²検定では自宅復帰率は傾斜なし群59.6%、傾斜群61.6%であり有意差を認めなかった(p=0.542)。ロジスティック回帰分析でも、屋外傾斜環境は自宅退院との間に有意な関連を示さなかった(オッズ比1.09、95%信頼区間0.85–1.41、p=0.507)。説明変数のうち有意な関連を示したのは入院時運動FIMのみであった(p=0.012)。
【考察】単変量・多変量解析のいずれにおいても、屋外傾斜環境と自宅退院との間に有意な関連は認められなかった。退院先決定には傾斜という地理的要因よりも、運動FIMに代表される身体機能の影響が大きく、地形的要因の効果が相対的に小さかった可能性がある。また、町名単位で算出した傾斜量図は実際の生活経路上の傾斜を反映していないことが影響したとも考えられる。傾斜地であっても福祉用具、送迎サービス等によって障壁が代償されている可能性も否定できない。
【結語】 居住地域の屋外傾斜環境が回復期リハ患者の自宅退院に有意な影響を及ぼすとは言えなかった。退院先の検討には地理的傾斜情報よりも身体機能評価がより重要である可能性が示唆された。傾斜評価の精度向上を含めたさらなる検証が必要である。
【倫理的配慮】 本研究は当院の倫理審査委員会にて承認済みである。対象者情報は匿名化し、当院WEBサイトにてオプトアウトの機会を提供した。
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