講演情報

[P11-08]認知特性に応じた代償戦略の設計により電動車いすでの買い物自立を達成した慢性期脳卒中者の一例

*鷲田 一真1、飯山 大介1、遠藤 稜1、御代川 英己1 (1. 船橋市立リハビリテーション病院)
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キーワード:

慢性期脳卒中、代償戦略、社会参加

【はじめに、目的】
慢性期脳卒中患者に対して社会参加促進および生活の質の改善が推奨されている。脳卒中後の認知障害は活動・参加のアウトカムに負の影響を及ぼし、ADL・IADLを含む機能的アウトカムと有意に関連し、慢性期に至っても社会参加の達成を妨げやすい。今回、左被殻出血発症後8年を経た症例において買い物自立に至った訪問リハビリテーションの経過を報告する。
【症例紹介、評価結果と問題点】
50歳代男性、左被殻出血発症後8年。右片麻痺を呈するが電動車いす使用歴5年以上で、家族の声掛けがあれば公共交通機関での外出が可能であった。家族の体調不良を機に外出機会の消失が懸念され、本人からも自立の希望が聞かれた。活動範囲の制限はQOL低下と関連するため、買い物自立を目指した。屋外では障害物回避が間に合わず衝突リスクがあり、店内ではレジ前での手順遂行破綻が繰り返されていた。高次脳機能評価では、FAB 18/18点であった一方、TMT-A 132秒と処理速度の著明な低下を認め、TMT-B 168秒(B−A=36秒)から課題切替コストは相対的に軽度と考えられた。評価結果と動的環境下での遂行困難を照合し、処理速度の低下を主たる問題として介入を立案した。
【介入内容と結果】
週1回・全10回(約3ヵ月)の介入を実施した。①写真事前予習:自宅で移動ルートの写真を用い、If-thenプラン(実行意図)により状況手がかりと行動の結びつきを言語化・反復した。中期には写真なしで注意点を言語化でき判断コストが減少した。②課題の段階的分離:移動ルートの見守り自立後に店内練習を開始し、同時に処理すべき要素を制限して過負荷を回避した。③直列処理への変換:店内動作を「一動作完結後に次へ移行する」直列処理に再構造化し二重課題干渉を軽減した。介入終了時には介助なしで購買行動を完遂し、自立を達成した。
【考察】
8年間自立に至らなかった背景には、家族同席による代償環境が継続し自立機会が設定されにくかったことが一因と考えられる。今回は、家族の体調不良という動機づけや環境要因が複合的に寄与したと推察される。買い物自立により活動範囲が自宅内に限定されるリスクが軽減され、地域社会との接点維持に寄与した可能性がある。介入にあたっては、処理速度の制約が遂行困難の背景因子の一つと考え、代償戦略設計の根拠とした。If-thenプランは処理速度の制約が顕在化する場面を減らす働きをしたと考えられる。慢性期においても「機能回復」から「認知特性に合わせた代償戦略の設計」への方針転換が、社会参加実現の鍵となり得る一例となった。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は所属施設の研究倫理審査委員会の承認(承認番号:船K2026-11)を得て実施した。対象者には研究の目的、方法、個人情報の保護、同意撤回の自由を書面と口頭にて説明し、書面による同意を得た。

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