講演情報
[O-1-01]脊椎圧迫骨折患者における疼痛と動作能力の回復構造
―主成分分析を用いた探索的検討―
*矢野 剛士1、松田 友秋1、獅子目 亨1 (1. 獅子目整形外科病院)
キーワード:
脊椎圧迫骨折、疼痛、回復構造
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院倫理委員会の承認を得て実施した.過去の診療情報を用いた後ろ向き研究のため,院内掲示によるオプトアウトを実施し,対象者の拒否機会を保障した.データの収集・分析にあたり情報の匿名化を徹底し,厳重に管理を行った.
【目的】
脊椎圧迫骨折患者おいては,疼痛が軽減しているにもかかわらず動作の自立が遅延する,あるいは動作は自立しているが疼痛が遷延するなど,疼痛と動作能力の回復の経過が一致しない場面を経験することが少なくない.疼痛の軽減と動作の自立は回復過程における重要な指標となるが,我々が渉猟した限りでは,疼痛と動作能力の回復に関する時間的構造を統合的に検討した報告は見当たらない.本研究の目的は,疼痛安定および基本動作の自立に至る日数を指標として,回復過程の構造を探索的に明らかにすることである.
【方法】
対象は脊椎圧迫骨折患者15名(全例女性,年齢85.7±8.0歳)であった.評価項目は,疼痛安定日(安静時,咳嗽時,座位保持,寝返り,起き上がり,立ち上がり,立位保持,歩行器歩行)および各基本動作の自立日(座位保持,寝返り,起き上がり,立ち上がり,立位保持,歩行器歩行)の計14項目とした.疼痛安定日はNumerical Rating Scale(NRS)が3以下となった日と定義した.統計解析は,各変数を標準化した上で主成分分析を実施した.主成分は固有値1以上の基準およびスクリープロットを参考に抽出し,主成分負荷量の絶対値0.4以上を基準として各主成分の特徴を整理した.
【結果】
主成分分析の結果,2つの主成分が抽出された.第1主成分の寄与率は74.6%,第2主成分は15.7%で,累積寄与率は90.3%であった.第1主成分では,全変数の主成分負荷量は0.69〜0.96であり,すべて0.68以上を示した.特に寝返り,起き上がり,立ち上がり,立位保持,歩行器歩行の疼痛安定日の主成分負荷量は0.94〜0.96と0.9以上の高値であった.第2主成分では,立ち上がり,立位保持,歩行器歩行の自立日の主成分負荷量が正の方向に0.4以上(0.54〜0.69)を示した一方で,座位保持,安静時,咳嗽時の疼痛安定日の主成分負荷量は負の方向(−0.51〜−0.38)を示し,対照的であった.
【考察】
第1主成分では,すべての指標が高い負荷量を示したことから,「全般的な回復進行度」を反映する成分と解釈した.第2主成分では,抗重力・移動動作(立ち上がり,立位保持,歩行器歩行)の自立日と,低負荷条件(安静時,咳嗽時,座位保持)における疼痛安定日が対照的な関係を示し,「疼痛と動作能力の回復特性の違い」を反映する成分と解釈した.これは,疼痛と動作能力の改善は必ずしも一致しないとする先行研究(Kataoka et al. 2017)の知見と整合しており,両者の回復が単一の指標では説明できない可能性を支持するものと考えられる.このことは,脊椎圧迫骨折患者の回復過程において,疼痛と動作能力の回復パターンに複数の様式が存在する可能性を示唆し,サブグループ化や個体差を考慮した評価および介入の必要性を示唆するものと考えられる.しかし,本研究は少数例による探索的検討であり,一般化には慎重な解釈を要する.今後はより大規模な検討を行い,本構造の再現性や臨床的妥当性を検証する必要があると考える.
【結論】
脊椎圧迫骨折患者の回復過程は,「全般的な回復進行度」と,「疼痛と動作能力の回復特性の違い」という2つの側面から整理できる可能性が示唆された.本研究の結果は,疼痛と動作能力を多面的に評価する必要性を示唆するものであると考える.
【目的】
脊椎圧迫骨折患者おいては,疼痛が軽減しているにもかかわらず動作の自立が遅延する,あるいは動作は自立しているが疼痛が遷延するなど,疼痛と動作能力の回復の経過が一致しない場面を経験することが少なくない.疼痛の軽減と動作の自立は回復過程における重要な指標となるが,我々が渉猟した限りでは,疼痛と動作能力の回復に関する時間的構造を統合的に検討した報告は見当たらない.本研究の目的は,疼痛安定および基本動作の自立に至る日数を指標として,回復過程の構造を探索的に明らかにすることである.
【方法】
対象は脊椎圧迫骨折患者15名(全例女性,年齢85.7±8.0歳)であった.評価項目は,疼痛安定日(安静時,咳嗽時,座位保持,寝返り,起き上がり,立ち上がり,立位保持,歩行器歩行)および各基本動作の自立日(座位保持,寝返り,起き上がり,立ち上がり,立位保持,歩行器歩行)の計14項目とした.疼痛安定日はNumerical Rating Scale(NRS)が3以下となった日と定義した.統計解析は,各変数を標準化した上で主成分分析を実施した.主成分は固有値1以上の基準およびスクリープロットを参考に抽出し,主成分負荷量の絶対値0.4以上を基準として各主成分の特徴を整理した.
【結果】
主成分分析の結果,2つの主成分が抽出された.第1主成分の寄与率は74.6%,第2主成分は15.7%で,累積寄与率は90.3%であった.第1主成分では,全変数の主成分負荷量は0.69〜0.96であり,すべて0.68以上を示した.特に寝返り,起き上がり,立ち上がり,立位保持,歩行器歩行の疼痛安定日の主成分負荷量は0.94〜0.96と0.9以上の高値であった.第2主成分では,立ち上がり,立位保持,歩行器歩行の自立日の主成分負荷量が正の方向に0.4以上(0.54〜0.69)を示した一方で,座位保持,安静時,咳嗽時の疼痛安定日の主成分負荷量は負の方向(−0.51〜−0.38)を示し,対照的であった.
【考察】
第1主成分では,すべての指標が高い負荷量を示したことから,「全般的な回復進行度」を反映する成分と解釈した.第2主成分では,抗重力・移動動作(立ち上がり,立位保持,歩行器歩行)の自立日と,低負荷条件(安静時,咳嗽時,座位保持)における疼痛安定日が対照的な関係を示し,「疼痛と動作能力の回復特性の違い」を反映する成分と解釈した.これは,疼痛と動作能力の改善は必ずしも一致しないとする先行研究(Kataoka et al. 2017)の知見と整合しており,両者の回復が単一の指標では説明できない可能性を支持するものと考えられる.このことは,脊椎圧迫骨折患者の回復過程において,疼痛と動作能力の回復パターンに複数の様式が存在する可能性を示唆し,サブグループ化や個体差を考慮した評価および介入の必要性を示唆するものと考えられる.しかし,本研究は少数例による探索的検討であり,一般化には慎重な解釈を要する.今後はより大規模な検討を行い,本構造の再現性や臨床的妥当性を検証する必要があると考える.
【結論】
脊椎圧迫骨折患者の回復過程は,「全般的な回復進行度」と,「疼痛と動作能力の回復特性の違い」という2つの側面から整理できる可能性が示唆された.本研究の結果は,疼痛と動作能力を多面的に評価する必要性を示唆するものであると考える.
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