講演情報
[O-1-04]脊髄損傷後神経障害性疼痛に対する周波数変調TENSの効果
―疼痛の質的変化に着目した1症例―
*川瀬 智恵1、新保 千尋1、松元 良宏2 (1. 恒心会おぐら病院リハビリテーション部、2. 鹿児島大学病院リハビリテーション科)
キーワード:
神経障害性疼痛、周波数変調TENS、アロディニア
本報告は,対象者に書面による同意を得た上で,当院の倫理審査委員会で承認を得た(2025-B18).
【目的】
脊髄損傷後疼痛は神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛を含み,有訴率が高くQuality of Life(QOL)を低下させる要因である.特に神経障害性疼痛は難治性であり,薬物療法のみでは十分な鎮痛が得られない場合も多く,非薬物療法の併用が重要とされる.経皮的電気神経刺激療法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)は補助的治療として用いられるが,一定刺激では神経適応により効果が減弱する可能性がある.周波数変調TENSは刺激周波数を変化させることで慣れを軽減し鎮痛効果の持続が期待されるが,脊髄損傷後疼痛への報告は少ない.本症例に対し周波数変調TENSを実施し,神経障害性疼痛の強度および質的変化への影響を検討した.
【対象】
症例は30歳代男性.バイク事故によりL5破裂骨折,L5/S1脱臼骨折,両側寛骨臼骨折を受傷し,脊椎後方固定術および骨接合術を施行後,受傷34日で回復期病棟へ入棟した.入院時,American Spinal Injury Association(ASIA,右/左)は運動14/24,触覚7/10,痛覚7/10であった.右下肢の関節可動域(Range of Motion:ROM)は股関節屈曲75°,伸展−10°,Straight Leg Raise(SLR)30°,膝関節伸展−15°,足関節背屈−10°であり,運動・感覚障害および可動域制限を認めた.右足底に灼熱感とジンジンする自発痛(Numerical Rating Scale:NRS 6)を認め,衣類などの軽微な触刺激で疼痛が誘発されるアロディニアを呈し,運動療法の阻害因子となっていた.painDETECT 31点,Neuropathic Pain Symptom Inventory(NPSI)42点,Short-Form McGill Pain Questionnaire-2(SF-MPQ-2)74点,Pain Catastrophizing Scale(PCS)30点であった.
【方法】
術後33〜42日の両下肢免荷期間に,下肢ROM訓練および筋力訓練と併用し周波数変調TENSを10日間実施した.低周波治療器を用い右足底に対し,周波数1〜120Hz,パルス幅100μsのスイープモードで30分,1日1回実施した.刺激強度は運動閾値下で疼痛を惹起しない最大強度とした.評価は介入前後でNRS,NPSI,SF-MPQ-2,PCSを用いた.
【結果】
NRSは6から4へ低下し,SF-MPQ-2は74から31点,NPSIは42から21点,PCSは30から20点へ改善した.NPSI下位項目では自発痛,発作痛,誘発痛はいずれも低下したが,「絞り上げられるような痛み」は増加した.
【考察】
周波数変調TENSはAβ線維を介した抑制性介在ニューロンの賦活および下行性疼痛抑制系の活性化により,中枢性感作の軽減に寄与すると考えられている.本症例でもアロディニアや灼熱感といった表在性疼痛の軽減に関与した可能性がある.一方,「絞り上げられるような痛み」の増加は,骨折治癒過程に伴う炎症や組織修復により侵害受容入力が増加したことに加え,関節可動域制限や筋力低下に伴う侵害受容性疼痛の関与が示唆される.また,表在性疼痛の軽減により相対的に深部痛が表面化した可能性も考えられる.深部痛は残存したが,表在性疼痛の軽減により運動療法が可能となり,活動量増加を介して退院時には日常生活を阻害しないレベルまで軽減した.以上より,周波数変調TENSは脊髄損傷後疼痛に対し,疼痛の質的改善を通じて理学療法介入を促進する有用な補助療法となる可能性が示唆された.
【目的】
脊髄損傷後疼痛は神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛を含み,有訴率が高くQuality of Life(QOL)を低下させる要因である.特に神経障害性疼痛は難治性であり,薬物療法のみでは十分な鎮痛が得られない場合も多く,非薬物療法の併用が重要とされる.経皮的電気神経刺激療法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)は補助的治療として用いられるが,一定刺激では神経適応により効果が減弱する可能性がある.周波数変調TENSは刺激周波数を変化させることで慣れを軽減し鎮痛効果の持続が期待されるが,脊髄損傷後疼痛への報告は少ない.本症例に対し周波数変調TENSを実施し,神経障害性疼痛の強度および質的変化への影響を検討した.
【対象】
症例は30歳代男性.バイク事故によりL5破裂骨折,L5/S1脱臼骨折,両側寛骨臼骨折を受傷し,脊椎後方固定術および骨接合術を施行後,受傷34日で回復期病棟へ入棟した.入院時,American Spinal Injury Association(ASIA,右/左)は運動14/24,触覚7/10,痛覚7/10であった.右下肢の関節可動域(Range of Motion:ROM)は股関節屈曲75°,伸展−10°,Straight Leg Raise(SLR)30°,膝関節伸展−15°,足関節背屈−10°であり,運動・感覚障害および可動域制限を認めた.右足底に灼熱感とジンジンする自発痛(Numerical Rating Scale:NRS 6)を認め,衣類などの軽微な触刺激で疼痛が誘発されるアロディニアを呈し,運動療法の阻害因子となっていた.painDETECT 31点,Neuropathic Pain Symptom Inventory(NPSI)42点,Short-Form McGill Pain Questionnaire-2(SF-MPQ-2)74点,Pain Catastrophizing Scale(PCS)30点であった.
【方法】
術後33〜42日の両下肢免荷期間に,下肢ROM訓練および筋力訓練と併用し周波数変調TENSを10日間実施した.低周波治療器を用い右足底に対し,周波数1〜120Hz,パルス幅100μsのスイープモードで30分,1日1回実施した.刺激強度は運動閾値下で疼痛を惹起しない最大強度とした.評価は介入前後でNRS,NPSI,SF-MPQ-2,PCSを用いた.
【結果】
NRSは6から4へ低下し,SF-MPQ-2は74から31点,NPSIは42から21点,PCSは30から20点へ改善した.NPSI下位項目では自発痛,発作痛,誘発痛はいずれも低下したが,「絞り上げられるような痛み」は増加した.
【考察】
周波数変調TENSはAβ線維を介した抑制性介在ニューロンの賦活および下行性疼痛抑制系の活性化により,中枢性感作の軽減に寄与すると考えられている.本症例でもアロディニアや灼熱感といった表在性疼痛の軽減に関与した可能性がある.一方,「絞り上げられるような痛み」の増加は,骨折治癒過程に伴う炎症や組織修復により侵害受容入力が増加したことに加え,関節可動域制限や筋力低下に伴う侵害受容性疼痛の関与が示唆される.また,表在性疼痛の軽減により相対的に深部痛が表面化した可能性も考えられる.深部痛は残存したが,表在性疼痛の軽減により運動療法が可能となり,活動量増加を介して退院時には日常生活を阻害しないレベルまで軽減した.以上より,周波数変調TENSは脊髄損傷後疼痛に対し,疼痛の質的改善を通じて理学療法介入を促進する有用な補助療法となる可能性が示唆された.
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