講演情報
[O-11-03]前十字靱帯再建術における移植腱の違いによる術後筋力・主観的機能の比較
*山口 諒1、田渕 俊紀1、井手 智輝1、西古 亨太2 (1. 医療法人尽心会 百武整形外科・スポーツクリニック リハビリテーション部、2. 医療法人尽心会 百武整形外科・スポーツクリニック 整形外科)
キーワード:
前十字靱帯再建術、大腿四頭筋腱、術後筋力
ヘルシンキ宣言に準拠し,対象者に対して本研究の趣旨および方法,結果の取り扱いについて十分な説明を行い,同意を得た上で実施した.
【目的】
近年は強度の高さから,大腿四頭筋腱(QT)を移植腱とする前十字靱帯(ACL)再建術への注目が高まっている.当院でも2023年3月からQT腱を用いたACL再建術を導入しているが,術後筋力に対する報告は限られている.本研究では,当院におけるハムストリング腱(HT)とQTの移植腱の違いが,術後筋力および主観的機能に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
2020年8月から2025年6月に当院で初回ACL再建術を施行した患者のうち,再損傷例,復帰意思がない症例,40歳以上の症例を除外したHT群20例(男性:13名,女性:7名,平均17.9±5.7歳)と,QT群41例(男性:20名,女性:21名,平均19.5±5.9歳)を対象とした.術後4,8ヶ月時点の膝伸展筋力健患比(Quad LSI)・屈曲筋力健患比(Ham LSI)、およびKOOSを2群間で比較検討した.筋力は,Cybex Normを用い,等速性膝関節筋力(60°/秒)を3回測定し,最大値を算出した.統計解析は,正規分布に従う変数には対応のないt検定,正規分布に従わない変数にはMann-Whitney U検定を用いた.性別および競技レベルはカイ二乗検定を用いた.有意水準は5%未満とした.
【結果】
背景因子(年齢,性別,競技レベル)に有意差は認めなかった.Quad LSI は,術後4ヶ月(HT群82.1±20.2,QT群53.7±12.9,p<0.001)と術後8ヶ月(HT群93.3±11.6,QT群68.5±16.7,p<0.001)において, HT群がQT群と比較して有意に高値を示した.Ham LSI の術後4,8ヶ月に有意差は認めなかった.KOOSは,術後8ヶ月のADL(HT群99.4±1.5,QT群97.7±4.4,p=0.03)、Sports/Rec(HT群93.3±8.4,QT群86.5±12.1,p=0.03)の項目でHT群が有意に高く,その他の項目に関して有意差は認めなかった.
【考察】
本研究では,HT群はQT群と比較し,短・中期的筋力成績においてQuad LSIが良好であり,先行研究と同様の結果であった.KOOSの一部項目においてもHT群が良好であり,膝伸展筋力の回復と主観的機能の関連が示唆された.QTの膝伸展筋力回復が遅延する一方,当院パスの基準(術後4ヶ月でLSI60%以上,8ヶ月でLSI90%以上)を達成した症例が5例存在した.若年男性かつ高競技レベル症例に多い傾向を認め,膝伸展筋力回復には個体特性や競技特性が影響する可能性がある.QTは他の移植腱と比較して破断強度が高く,HTの動的内側安定化機能が温存される利点がある.早期の膝伸展筋力回復が重要と考えられ,今後は良好例の要因分析を進める必要がある.
【本研究の限界】
サンプルサイズが小さく,両術式の典型的な傾向を表しているとは言い難い.また,長期成績が不明であり,復帰率,復帰時期,再断裂など手術成績に関わるアウトカムを追跡できていない点が挙げられる.
【まとめ】
短・中期的な膝伸展筋力および主観的機能は,HT群がQT群より良好であった.今後は長期成績および良好例の要因分析を通じて,患者特性に応じたリハビリテーション戦略の確立が必要である.
【目的】
近年は強度の高さから,大腿四頭筋腱(QT)を移植腱とする前十字靱帯(ACL)再建術への注目が高まっている.当院でも2023年3月からQT腱を用いたACL再建術を導入しているが,術後筋力に対する報告は限られている.本研究では,当院におけるハムストリング腱(HT)とQTの移植腱の違いが,術後筋力および主観的機能に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
2020年8月から2025年6月に当院で初回ACL再建術を施行した患者のうち,再損傷例,復帰意思がない症例,40歳以上の症例を除外したHT群20例(男性:13名,女性:7名,平均17.9±5.7歳)と,QT群41例(男性:20名,女性:21名,平均19.5±5.9歳)を対象とした.術後4,8ヶ月時点の膝伸展筋力健患比(Quad LSI)・屈曲筋力健患比(Ham LSI)、およびKOOSを2群間で比較検討した.筋力は,Cybex Normを用い,等速性膝関節筋力(60°/秒)を3回測定し,最大値を算出した.統計解析は,正規分布に従う変数には対応のないt検定,正規分布に従わない変数にはMann-Whitney U検定を用いた.性別および競技レベルはカイ二乗検定を用いた.有意水準は5%未満とした.
【結果】
背景因子(年齢,性別,競技レベル)に有意差は認めなかった.Quad LSI は,術後4ヶ月(HT群82.1±20.2,QT群53.7±12.9,p<0.001)と術後8ヶ月(HT群93.3±11.6,QT群68.5±16.7,p<0.001)において, HT群がQT群と比較して有意に高値を示した.Ham LSI の術後4,8ヶ月に有意差は認めなかった.KOOSは,術後8ヶ月のADL(HT群99.4±1.5,QT群97.7±4.4,p=0.03)、Sports/Rec(HT群93.3±8.4,QT群86.5±12.1,p=0.03)の項目でHT群が有意に高く,その他の項目に関して有意差は認めなかった.
【考察】
本研究では,HT群はQT群と比較し,短・中期的筋力成績においてQuad LSIが良好であり,先行研究と同様の結果であった.KOOSの一部項目においてもHT群が良好であり,膝伸展筋力の回復と主観的機能の関連が示唆された.QTの膝伸展筋力回復が遅延する一方,当院パスの基準(術後4ヶ月でLSI60%以上,8ヶ月でLSI90%以上)を達成した症例が5例存在した.若年男性かつ高競技レベル症例に多い傾向を認め,膝伸展筋力回復には個体特性や競技特性が影響する可能性がある.QTは他の移植腱と比較して破断強度が高く,HTの動的内側安定化機能が温存される利点がある.早期の膝伸展筋力回復が重要と考えられ,今後は良好例の要因分析を進める必要がある.
【本研究の限界】
サンプルサイズが小さく,両術式の典型的な傾向を表しているとは言い難い.また,長期成績が不明であり,復帰率,復帰時期,再断裂など手術成績に関わるアウトカムを追跡できていない点が挙げられる.
【まとめ】
短・中期的な膝伸展筋力および主観的機能は,HT群がQT群より良好であった.今後は長期成績および良好例の要因分析を通じて,患者特性に応じたリハビリテーション戦略の確立が必要である.
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