講演情報
[O-11-04]慢性足関節不安定症者の側方ジャンプ着地動作における神経筋制御戦略:筋シナジー解析による検討
*石川 心優1、柏田 そら1、河内山 紗己1,2、有田 吏久仁1,3、内海 悠人1,4、鈴木 雄太1 (1. 九州栄養福祉大学リハビリテーション学部、2. 宗像水光会総合病院リハビリテーション科、3. 小波瀬病院診療技術部リハビリテーション科、4. 甘木中央病院リハビリテーション科)
キーワード:
慢性足関節不安定症、ジャンプ着地、筋シナジー解析
対象者には本研究の目的および方法について説明し、書面による同意を得た。本研究は九州栄養福祉大学・東筑紫短期大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2526)。
【目的】慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability:CAI)では、足関節の構造的不安定性や固有受容感覚の低下などを背景として、着地動作における長腓骨筋の筋活動タイミングの遅延や前脛骨筋の異常な筋活動などの代償的な運動制御が生じる(Labanca et al., 2021)。しかし、これまでの研究は個々の筋活動の分析に留まり、下肢筋群の協調的な相互関係については不明な点が多い。そこで本研究では、複数筋の協調的な活動を捉える筋シナジーの観点から、CAI者と非CAI者の側方ジャンプ着地における神経筋制御を、シナジー数(複雑性)とシナジー構造(筋の貢献度および時間活性化パターン)の側面から検討することを目的とした。
【方法】対象はInternational Ankle Consortiumの基準を満たしたCAI群17名(男性10名、女性7名)と、足関節捻挫の既往がない非CAI群17名(男性10名、女性7名)とした。 CAI群の選択基準は、足関節捻挫の既往があり、最初の足関節捻挫から1年が経過している者、過去6カ月以内に2回のGiving Wayの既往または足関節捻挫の再発があった者、Cumberland Ankle Instability Toolが25点以下の者とした(Kunugi et al., 2016)。課題動作は、側方ジャンプ着地(距離:身長の33%、高さ:15cm)とし、両脚で踏み切り、片脚で着地させ、手を腰に当てた着地姿勢を10秒間保持させ、5回の成功試技を採用した。課題動作中の下肢10筋の筋活動を表面筋電計(Delsys社)にて計測した。また、着地時の床反力をAccuGait(AMTI社)にて計測し、表面筋電計と時間的に同期した。筋シナジーの解析区間は、準備期(着地前200ms〜着地)、衝撃吸収期(着地〜最大垂直床反力)、安定化期(最大垂直床反力〜姿勢安定化時点)の3区間とした。それぞれの区間で非負値行列因子分解による筋シナジー解析を実施した。最適な筋シナジー数は全体のVAF(Variance Accounted For)が90%以上かつ各筋の個別VAFが75%以上の基準を満たす最小の数とした。CAI群と非CAI群で筋シナジー数、筋の貢献度および時間活性化パターンを比較した。有意水準は5%とした。
【結果】筋シナジー数は両群間で有意差はなかった。筋の貢献度は、準備期のシナジー1において、CAI群で大殿筋の貢献度が有意に高かった(p<0.01)。時間活性化パターンは、安定化期の13.2%~21.4%の区間において、前脛骨筋を中心としたシナジー3の活性化がCAI群で有意に低く、活動のピークタイミングが遅延した(p<0.01)。その他のシナジーの筋の貢献度および時間活性化パターンに有意差はなかった。
【考察】CAI者と非CAI者で筋シナジー数に差はみられず、Kimら(2023)の報告と同様に神経筋制御の複雑性に対するCAIの影響は限定的であることが示唆された。一方、CAI群では着地前の準備期で大殿筋の活動が増大しており、これは足関節の不安定性に対する代償として股関節を中心とした近位関節の予測的制御を反映している可能性がある。また、着地後の安定化期では先行研究と同様に前脛骨筋の活動遅延がみられ、これは着地後の姿勢安定化に対してフィードバック制御への依存が高まることを示唆している可能性がある(Yen et al., 2016)。
【まとめ】着地動作に対するCAIの影響は、筋シナジーの「数」ではなく「構造」に顕在化することが示された。
【目的】慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability:CAI)では、足関節の構造的不安定性や固有受容感覚の低下などを背景として、着地動作における長腓骨筋の筋活動タイミングの遅延や前脛骨筋の異常な筋活動などの代償的な運動制御が生じる(Labanca et al., 2021)。しかし、これまでの研究は個々の筋活動の分析に留まり、下肢筋群の協調的な相互関係については不明な点が多い。そこで本研究では、複数筋の協調的な活動を捉える筋シナジーの観点から、CAI者と非CAI者の側方ジャンプ着地における神経筋制御を、シナジー数(複雑性)とシナジー構造(筋の貢献度および時間活性化パターン)の側面から検討することを目的とした。
【方法】対象はInternational Ankle Consortiumの基準を満たしたCAI群17名(男性10名、女性7名)と、足関節捻挫の既往がない非CAI群17名(男性10名、女性7名)とした。 CAI群の選択基準は、足関節捻挫の既往があり、最初の足関節捻挫から1年が経過している者、過去6カ月以内に2回のGiving Wayの既往または足関節捻挫の再発があった者、Cumberland Ankle Instability Toolが25点以下の者とした(Kunugi et al., 2016)。課題動作は、側方ジャンプ着地(距離:身長の33%、高さ:15cm)とし、両脚で踏み切り、片脚で着地させ、手を腰に当てた着地姿勢を10秒間保持させ、5回の成功試技を採用した。課題動作中の下肢10筋の筋活動を表面筋電計(Delsys社)にて計測した。また、着地時の床反力をAccuGait(AMTI社)にて計測し、表面筋電計と時間的に同期した。筋シナジーの解析区間は、準備期(着地前200ms〜着地)、衝撃吸収期(着地〜最大垂直床反力)、安定化期(最大垂直床反力〜姿勢安定化時点)の3区間とした。それぞれの区間で非負値行列因子分解による筋シナジー解析を実施した。最適な筋シナジー数は全体のVAF(Variance Accounted For)が90%以上かつ各筋の個別VAFが75%以上の基準を満たす最小の数とした。CAI群と非CAI群で筋シナジー数、筋の貢献度および時間活性化パターンを比較した。有意水準は5%とした。
【結果】筋シナジー数は両群間で有意差はなかった。筋の貢献度は、準備期のシナジー1において、CAI群で大殿筋の貢献度が有意に高かった(p<0.01)。時間活性化パターンは、安定化期の13.2%~21.4%の区間において、前脛骨筋を中心としたシナジー3の活性化がCAI群で有意に低く、活動のピークタイミングが遅延した(p<0.01)。その他のシナジーの筋の貢献度および時間活性化パターンに有意差はなかった。
【考察】CAI者と非CAI者で筋シナジー数に差はみられず、Kimら(2023)の報告と同様に神経筋制御の複雑性に対するCAIの影響は限定的であることが示唆された。一方、CAI群では着地前の準備期で大殿筋の活動が増大しており、これは足関節の不安定性に対する代償として股関節を中心とした近位関節の予測的制御を反映している可能性がある。また、着地後の安定化期では先行研究と同様に前脛骨筋の活動遅延がみられ、これは着地後の姿勢安定化に対してフィードバック制御への依存が高まることを示唆している可能性がある(Yen et al., 2016)。
【まとめ】着地動作に対するCAIの影響は、筋シナジーの「数」ではなく「構造」に顕在化することが示された。
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