講演情報

[O-15-02]術後遷延性疼痛リスクを有する人工膝関節全置換術後患者の一症例
―荷重対称性と身体知覚に着目した介入―

*金川 真菜1,2、友岡 佑太1,2、大段 喬1,2、梶原 康宏1,3、田中 創1,3、井浦 国生4 (1. 福岡整形外科病院 リハビリテーション科、2. 福岡整形外科病院 スポーツ医学センター、3. 福岡整形外科病院 臨床研究センター、4. 福岡整形外科病院 整形外科)
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キーワード:

人工膝関節全置換術(TKA)、身体知覚異常、荷重対称性

本症例の報告にあたり,対象者へ十分な説明を行い,同意を得た.また,本研究は当院の倫理委員会の承認を得た上で実施した.

【目的】
 人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)後には,約20%に術後遷延性疼痛を生じるとされている.その関連因子として罹患期間,BMI,身体知覚異常などが報告されている.また,TKA後の荷重非対称性は,術後疼痛や身体機能低下と関連することが示されている.一方,術後遷延性疼痛リスクを有する症例に対し,術後早期から荷重対称性および身体知覚に着目した介入効果は十分に明らかでない.今回,術後遷延性疼痛リスクを有する症例に対して,荷重対称性および身体知覚に着目した介入を実施したため,その臨床経過を報告する.
【症例紹介】
 症例は70歳代の女性で,右変形性膝関節症に対しTKAを施行した.約20年の罹患歴およびBMI26.4を有し,Kellgren–Lawrence分類はⅣ,Femoro-Tibial Angle(FTA)は198°であり,左膝にも高度内反変形を伴う変形性膝関節症を認めた.術前は独歩で屋内外歩行可能であった.術前評価では,動作時疼痛強度(Visual Analogue Scale: VAS)は25 mm,膝関節可動域(Range of Motion: ROM)は右屈曲75°/伸展-20°,左屈曲100°/伸展-10°,10m歩行速度は11.1秒,身体知覚異常(The Fremantle Knee Awareness Questionnaire: FreKAQ)は21点,能力障害(Oxford Knee Score: OKS)は29点であった.Needは「階段を正面から降りたい」「自転車に乗りたい」であった.
【経過】
 術後4日目に棘果長は右79cm,左78cmと,1.0 cmの左右差を認めた.また,術側への荷重低下による荷重非対称性および立脚期の不安定性を呈していた.介入初期より左に足底挿板を用い,荷重の対称化を図った.その結果,術後3週時には,VASは2 mm,ROMは屈曲100°/伸展-10°まで改善し,患者が自覚していた脚長差の違和感も軽減した.一方,FreKAQは19点と高値を示し,身体知覚異常の残存を認めた.そのため,術後3週以降は,感覚識別トレーニングに加え,鏡や動画を用いた視覚フィードバック,術側荷重を促通する歩行の部分練習,術側下肢の運動感覚を想起させる運動イメージトレーニングを実施した.その結果,退院時(術後5週)には,VASは11 mm,ROMは屈曲105°/伸展-5°,10m歩行速度は9.9秒,FreKAQは18点となった.退院後は近医にて週1回のリハビリテーションを継続し,術後3か月時では,VASは2 mm,ROMは屈曲110°/伸展-10°,10m歩行速度は8.6秒,FreKAQ は16点,OKSは38点と改善を認め,Needであった正面からの降段動作および自転車動作が可能となった.
【考察】
 本症例は,長期罹患歴,高BMI,FreKAQ高値を認めており,術後遷延性疼痛リスクを有していたと考えられる.しかし,3か月時に術後遷延性疼痛を認めず,身体機能およびADLは改善を示した.術後早期より足底挿板を用いて荷重の対称化を図ったことが,立脚期の安定性向上および歩行能力改善に寄与したと考えられた.また,身体知覚への介入併用により,活動拡大や疼痛軽減を促進した可能性がある.一方,FreKAQは術後3か月時においても16点と高値であり,身体機能の改善と比較して身体知覚異常の改善は限定的であった.このことから,疼痛や身体機能の改善と身体知覚の回復は必ずしも一致しない可能性が示された.また,長期罹患に伴う身体知覚の再構築にはより長期的な介入を要する可能性が考えられる.

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