講演情報
[O-15-03]筋活動評価に基づく膝伸展制御の再学習を行った人工膝関節全置換術後伸展機構再損傷の一例
*松永 拓貴1,2、谷口 隆憲3、瓜生 陽菜1、梶原 康宏1,4、友岡 佑太1,2、田中 創1,4、徳永 真巳5 (1. 福岡整形外科病院 リハビリテーション科、2. 福岡整形外科病院 スポーツ医学センター、3. 福岡国際医療福祉大学 医療学部 理学療法学部、4. 福岡整形外科病院 臨床研究センター、5. 福岡整形外科病院 整形外科)
キーワード:
人工膝関節全置換術、伸展機構損傷、運動制御
対象者に対し,本研究の目的および内容について十分に説明し,同意を得た.また,本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施した.
【目的】
人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)後の伸展機構損傷は低頻度(0.1~2.5%)であるが,機能予後に影響を及ぼす.修復術後は組織脆弱性により再損傷が懸念されるため,病態に応じた理学療法介入が重要となる.今回,TKA後に伸展機構損傷を呈した症例に対し,筋活動評価に基づく段階的介入を実施し,再々損傷なく歩行能力改善を認めたため報告する.
【症例紹介】
症例は70歳代後半の女性である.左TKA施行後,X-60日に退院した.退院時はT-cane歩行自立(10m歩行速度11.9秒)であったが,立脚期で反張膝を認めた.また,入院中および退院後に複数回の転倒を経験した.これらが関与し,内側傍膝蓋アプローチ縫合部損傷を伴う膝蓋骨脱臼を認め,X-24日に修復術が施行された.初回手術では内側傍膝蓋アプローチ部において内側広筋斜頭および大腿四頭筋腱を含む膝蓋骨内側支持機構の再建・縫合が行われ,膝蓋骨偏位が改善した.しかし,X-12日にSLRが不能となり,同部の連続性の離開が確認されたため,再修復術が施行された.再修復術では,外側支帯解離および内側再縫合が施行され,膝蓋骨偏位は改善した.なお,再損傷では転倒等の明確な受傷契機は認めなかった.
【介入内容と経過】
初回損傷には転倒による縫合部へのストレスが関与した可能性がある.さらに,初回修復後に同部位の再損傷を認めた経過から,反張膝および組織脆弱性により再々損傷リスクが高いと考えた.そのため,修復部への過負荷を避けつつ,歩行時の膝伸展制御再獲得を主目標とした.評価指標には,筋機能(SLR保持時間),筋活動(表面筋電図:EMG),歩行指標として反張膝の有無を用いた.なお,表面筋電図では,大腿四頭筋setting時EMG(筋活動特性・出力評価)および歩行時EMG(持続性・同期性評価)を評価した.術後早期は組織保護を最優先とし,装具装着下で基本動作と大腿四頭筋の等尺性収縮を実施した.初期(X+6日)のsetting時EMGでは内側広筋(VM)6.4μV,外側広筋(VL)12.8μVであり,VM活動はVLの約50%にとどまり,筋活動の偏りを示した.X+14日のSLR保持時間は19.7秒であったが,反張膝が残存し,膝伸展制御の不十分さを認めた.これらを踏まえ,反張膝是正に向けた膝伸展制御の再学習へ移行した.介入では装具管理を継続しつつ,荷重位での遠心性収縮促通,感覚入力による運動学習,膝窩部テーピングを実施した.その結果,X+28日にはSLR保持時間は21.6秒へ向上し,setting時EMGはVM9.7μV,VL11.0μVとなり,内外側の筋活動差は縮小した.歩行時EMGでは,VMが立脚期を通じて10〜15μVで持続的に活動し,歩行周期に同期した筋活動を認めた.また,反張膝は軽減し,膝伸展制御の改善が得られたため,主治医と協議し装具を除去した.その後も介入を継続し,退院時(X+40日)には反張膝を呈さず,T-cane使用下で安定歩行が可能となった(10m歩行速度14.9秒).なお,入院期間中に再々損傷は認めなかった.
【考察】本症例では,反張膝による伸展機構への反復的ストレスが再損傷の一因と考えられた.setting時と歩行時の筋活動評価を統合し,介入内容や装具除去時期の判断に活用したことで,膝伸展制御と歩行安定性向上につながり,再々損傷予防に寄与した可能性が示唆された.
【目的】
人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)後の伸展機構損傷は低頻度(0.1~2.5%)であるが,機能予後に影響を及ぼす.修復術後は組織脆弱性により再損傷が懸念されるため,病態に応じた理学療法介入が重要となる.今回,TKA後に伸展機構損傷を呈した症例に対し,筋活動評価に基づく段階的介入を実施し,再々損傷なく歩行能力改善を認めたため報告する.
【症例紹介】
症例は70歳代後半の女性である.左TKA施行後,X-60日に退院した.退院時はT-cane歩行自立(10m歩行速度11.9秒)であったが,立脚期で反張膝を認めた.また,入院中および退院後に複数回の転倒を経験した.これらが関与し,内側傍膝蓋アプローチ縫合部損傷を伴う膝蓋骨脱臼を認め,X-24日に修復術が施行された.初回手術では内側傍膝蓋アプローチ部において内側広筋斜頭および大腿四頭筋腱を含む膝蓋骨内側支持機構の再建・縫合が行われ,膝蓋骨偏位が改善した.しかし,X-12日にSLRが不能となり,同部の連続性の離開が確認されたため,再修復術が施行された.再修復術では,外側支帯解離および内側再縫合が施行され,膝蓋骨偏位は改善した.なお,再損傷では転倒等の明確な受傷契機は認めなかった.
【介入内容と経過】
初回損傷には転倒による縫合部へのストレスが関与した可能性がある.さらに,初回修復後に同部位の再損傷を認めた経過から,反張膝および組織脆弱性により再々損傷リスクが高いと考えた.そのため,修復部への過負荷を避けつつ,歩行時の膝伸展制御再獲得を主目標とした.評価指標には,筋機能(SLR保持時間),筋活動(表面筋電図:EMG),歩行指標として反張膝の有無を用いた.なお,表面筋電図では,大腿四頭筋setting時EMG(筋活動特性・出力評価)および歩行時EMG(持続性・同期性評価)を評価した.術後早期は組織保護を最優先とし,装具装着下で基本動作と大腿四頭筋の等尺性収縮を実施した.初期(X+6日)のsetting時EMGでは内側広筋(VM)6.4μV,外側広筋(VL)12.8μVであり,VM活動はVLの約50%にとどまり,筋活動の偏りを示した.X+14日のSLR保持時間は19.7秒であったが,反張膝が残存し,膝伸展制御の不十分さを認めた.これらを踏まえ,反張膝是正に向けた膝伸展制御の再学習へ移行した.介入では装具管理を継続しつつ,荷重位での遠心性収縮促通,感覚入力による運動学習,膝窩部テーピングを実施した.その結果,X+28日にはSLR保持時間は21.6秒へ向上し,setting時EMGはVM9.7μV,VL11.0μVとなり,内外側の筋活動差は縮小した.歩行時EMGでは,VMが立脚期を通じて10〜15μVで持続的に活動し,歩行周期に同期した筋活動を認めた.また,反張膝は軽減し,膝伸展制御の改善が得られたため,主治医と協議し装具を除去した.その後も介入を継続し,退院時(X+40日)には反張膝を呈さず,T-cane使用下で安定歩行が可能となった(10m歩行速度14.9秒).なお,入院期間中に再々損傷は認めなかった.
【考察】本症例では,反張膝による伸展機構への反復的ストレスが再損傷の一因と考えられた.setting時と歩行時の筋活動評価を統合し,介入内容や装具除去時期の判断に活用したことで,膝伸展制御と歩行安定性向上につながり,再々損傷予防に寄与した可能性が示唆された.
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