講演情報

[O-16-03]脳幹出血により重度の運動失調を呈した症例~残存機能を活用したアプローチ~

*上水 將司1、岡 高史1 (1. 福岡青洲会病院リハビリテーション部)
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キーワード:

脳幹出血、運動失調、歩行

【倫理的配慮】 本報告はヘルシンキ宣言に基づき、症例の同意と当院倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:2026ー05番)

【目的】脳幹は錐体外路系投射線維の下位中枢として機能する多くの神経核を擁し、大脳皮質と脊髄を結ぶ投射線維の線維束が集中する部位でもある。そのため、臨床症状が多岐に渡り、病態把握が難しい。効果的なリハビリテーション(リハビリ)の実施には、臨床症状に加え、障害部位の機能局在と神経システムを理解する必要があるが、それら双方を解釈した報告は少ない。今回、広範囲の脳幹出血により、重度の運動失調を呈した症例を担当した。臨床症状に脳画像の解釈を加えて病態を整理し、残存機能を有効活用することで効率的なリハビリ介入につながり、歩行能力が改善し自宅退院に至ったため報告する。【症例紹介】70歳代男性。診断名は脳幹部出血。画像所見は左中脳~延髄にかけて最大2cmの血種。入院前ADLは全自立。第37病日に当院回復期病棟へ転棟。本人の希望は「手足がうまく動くようになって、家に帰りたい」であった。【経過】回復期転棟時の初期評価は下肢Brs(右)Ⅴ、下肢感覚障害(右)は表在感覚中等度鈍麻、深部感覚重度鈍麻、SARAは24点で右側有意に両側に失調症状あり、基本動作は座位保持は見守り、立位保持と移乗動作は軽介助。歩行はwide base、酩酊様で中等度介助、歩容は右下肢のコントロールが不十分で踵打歩行となり、接地位置も拙劣であった。また、後方から体幹把持し、速度を上げた歩行を誘導した際には、右下肢のコントロールは改善が見られた。BBSは6点、FIMは43点であった。第39病日より長下肢装具(KAFO)ロックでの歩行練習を開始。第41日病日より膝立ち練習を追加。第59病日より平地や段差ステップ練習、クォータースクワットを開始し、KAFOロックオフへ移行。第74病日に短下肢装具へ変更し、歩行器歩行と体幹ベルト装着した状態での独歩を開始。第104病日に装具なし歩行に移行。第111病日より自宅環境に合わせた移動や床上動作などを実施した。最終評価はBrs著変なし、感覚障害は表在・深部感覚軽度鈍麻、SARAは14点、基本動作は自立、歩行は軽度踵打歩行が残存したが伝い歩き自立、BBSは31点、FIMは105点に向上し、第140病日自宅退院となった。【考察】本症例の問題点は運動失調とバランス能力低下と考えた。運動失調は左橋核と横橋繊維の損傷により両側に大脳小脳神経回路による小脳性運動失調、内側毛帯の損傷による右側有意の感覚性運動失調と考えた。速度を上げての歩行で下肢のコントロールが改善したため、脊髄小脳系は残存していると考えた。そのため歩行練習は、鏡による視覚フィードバックを活用できる環境を設定、右下肢のコントロールする関節数を制限する目的でKAFOを選択し、介助下でのリズミカルな歩行練習を反復することが有効と考えた。残存機能を有効活用しながら、右下肢のコントロール改善に合わせてKAFOの制限を減らし、課題難易度を調整したことが独歩獲得の一助になったと考える。バランス能力低下には、前庭小脳系を活用する目的で患者自身がバランスを学習できるように独歩の練習を最小介助で実施した。バランス不良時の対応の経験が外側・内側前庭脊髄路を活動させ安定性が拡大したと考える。今回、脳幹病変の多様な臨床症状と画像所見を照合し、損傷機能と残存機能を把握し解釈することで、効率的なアプローチの選択ができたのではないかと考える。

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