講演情報

[O-17-01]超音波画像診断装置による上腕骨頭すべり運動の定量的評価における信頼性の検討

*辛嶋 良介1、尾崎 悠人1、岸本 進太郎1,2、井原 拓哉3、吉野 温翔1、坂山 七海1、川嶌 眞人4 (1. かわしまクリニック リハビリテーション科、2. 大分大学大学院 福祉健康科学研究科 健康医科学コース、3. 東京科学大学 運動器機能形態学講座、4. 川嶌整形外科病院 整形外科)
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キーワード:

超音波画像診断装置、上腕骨頭すべり運動、計測信頼性

本研究はヘルシンキ宣言による倫理的配慮に基づいた研究であり,当院倫理審査による承認を得て(承認番号: 20260402-01),全ての対象者には十分な説明と同意を得た後に実施した.

【目的】
拘縮肩は疼痛とROM制限が主症状であり,International society of arthroscopy, knee surgery and orthopedic sports medicineによるROM制限の定義は屈曲100°,外旋15°,内旋第5腰椎未満とされている.しかし,ROMには,肩甲骨運動による代償は加味されず,またROM測定時の運動時痛は適切な関節機能評価を阻害する.そこで我々は,関節包内運動に着目した.関節包内運動は関節面でのすべり運動であり,疼痛を惹起せずに関節機能を評価できる可能性がある.しかし,そのすべり運動を定量的に評価した報告は少なく,計測信頼性の検討は十分ではない.本研究では超音波画像診断装置(エコー)を用いて,健常肩におけるすべり運動の程度を計測し,検者内,及び検者間信頼性を検討した.
【対象と方法】
対象の包含基準は肩関節に外傷の既往と何らかの症状を有さない健常成人男性8名(16肩),平均年齢25.9 ± 4.9歳,平均BMI21.8 ± 2.0 kg/m2であった.計測は異なる2名の検者(検者1: 臨床経験22年,検者2: 臨床経験5年)が各2回実施した.両検者は事前に画像描出,及び上腕骨頭すべり運動の誘導手技について練習を行い,手順を統一した.すべり運動の計測にはエコー(SONIMAGE MX1)の4–14 Hzのリニアプローブを用いた.背臥位で肩関節外転30°で脱力させ,回旋位をエコーでの短軸走査で結節間溝が直上になるよう調整した.その後,小結節と烏口突起をランドマークとして描出し,画像上での両骨間の深度差を計測した(安静時).次にハンドヘルドダイナモメーター(μ TAS F-1)を上腕骨近位に設置して,後方へ60 Nの圧負荷を加え,同様に計測した(60 N時).取得した値について,60 N時より安静時を減じた値をすべり運動距離とし,正値は上腕骨頭の後方移動と定義した.統計解析には,R4.5.3を用いた.検者ごとの安静時と60 N時の差を対応のあるt 検定とCohen’s(r)による効果量を算出した.すべり運動距離の信頼性は級内相関係数(ICC)を用いて,検者内,及び検者間信頼性を検討し,測定標準誤差(SEM)を算出した.いずれも有意水準は5%とした.
【結果】
すべり運動距離は,検者1で5.3 ± 2.5 mm,検者2で5.3 ± 2.6 mmであり,いずれも60 N時で有意に距離が増大した(p < 0.01,r > 0.91).すべり運動距離の検者内信頼性(ICC1,2)は,検者1で0.84,検者2で0.85,SEMはいずれも1.0 mmであった.一方,検者間信頼性(ICC2,1)は0.49,SEMは1.6 mmであった.
【考察】
徒手による圧負荷での上腕骨頭のすべり運動の程度は肩関節角度と負荷する圧の程度により異なるが,健常肩では1.9–11.3 mm生じることが報告されている.本研究においても60 Nの圧負荷により後方すべり運動が生じ,先行研究の範囲内の値を示した.すべり運動計測は,検者内信頼性が高値でSEMが低値であることから良好な信頼性を有することが示された.一方,検者間信頼性は不十分であった.この原因として,変化量が小さいため対象者の脱力状態や圧負荷方向のわずかな違いなどの影響を受けやすいことが考えられた.したがって,本手法は同一検者による経時的評価には有用である可能性が示唆された.
【まとめ】
エコーを用いた上腕骨頭すべり運動距離の計測は,検者内信頼性は良好であったが検者間信頼性は不十分であった.

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