講演情報
[O-17-03]広範囲腱板断裂術後早期における定量指標と観察指標を統合した負荷管理と患者立脚型評価を実施した一症例
*鈴木 陸斗1、赤崎 義彦1、下世 大治1、富岡 一俊1、加治 智和1、竹中 俊宏1 (1. 垂水市立医療センター垂水中央病院)
キーワード:
肩関節、腱板断裂、Shoulder36
ヘルシンキ宣言に則り,患者には書面を用いて説明し,同意を得た。
【緒言】
腱板修復術後の再断裂率は,広範囲断裂では高く,修復腱の治癒不全や機能回復不良のリスクが高い。そのため,修復部への過負荷を回避しつつ機能低下を防ぐ負荷管理が重要である。棘上筋,棘下筋では,術後時期に応じた安全域の筋活動量となる運動が定量化されている(Thigpen, et al, 2016)。一方,肩甲下筋では安全な負荷量を示す定量的な負荷指標が確立されていない。そのため,広範囲断裂症例では,定量的指標が存在する筋と存在しない筋が混在し,特に術後早期において負荷設定が治療者の経験や感覚に依存しやすいという課題がある。そこで,広範囲断裂術後症例に対し,術後早期に定量指標と観察指標を統合した負荷管理を実践し,その有用性を患者立脚型評価に基づき検討した事例を報告する。
【症例紹介】
60代後半男性。作業中に倒れてきた木材を支えようとして受傷。左肩挙上時の疼痛と違和感の訴えが強く,受傷3か月後に左棘上筋,棘下筋,肩甲下筋の広範囲断裂に対し鏡視下腱板修復術を施行。職業は大工で,違和感のない挙上動作の獲得を希望していた。
【方法】自動運動期開始の術後6週以降は,棘上筋,棘下筋に対し15%MVC以下の低負荷運動(振り子運動,側臥位肩屈曲)などを選択し,8週~12週では,16~29%MVC運動(座位挙上,座位外転)へ段階的に移行した(Thigpen, et al, 2016)。一方,肩甲下筋には,Belly press testを用い,①代償動作の出現,②上腕骨頭前方偏位,③疼痛を運動中止基準とした。これは機能不全時に出現する代表的所見であり,前方安定性の破綻を反映する指標として用いた。介入は術後2週から術後3か月まで実施した。評価は,術後早期であり最大努力を要する筋力評価が困難な時期であり,患者立脚型評価であるShoulder36を用いた。
【経過】
術後3か月で,Belly press testは陽性から陰性へ改善した。Shoulder36では,筋力,健康感,ADL能力,スポーツ活動の項目は変化しなかったが,疼痛,ROM項目はそれぞれ0.1点の改善を認めた。また,挙上時の主観的な違和感は改善した。
【考察】
広範囲腱板断裂術後症例に対し,術後早期から棘上筋,棘下筋には術後時期に応じた安全域の筋活動量となる運動を選択し,肩甲下筋には観察指標を運動中止基準とした負荷管理を実践した。また,術後早期であり,患者立脚型評価を用いて効果判定を行った。その結果,術後3か月において筋力,健康感,ADL能力,スポーツ活動は維持され,疼痛,ROM項目は改善が認められた。筋力回復は,術後6か月以降に顕在化すると報告されており(Seok, et al, 2026),評価時点では回復途上であったことが考えられる。一方で,低負荷運動は筋内圧上昇を抑制し,血流阻害を生じにくいとされており(Takarada, et al, 2000),過負荷回避を通して機能維持に寄与した可能性がある。また,術後早期にShoulder36を用いることで,負荷管理の妥当性の判断に活用が可能であった。以上より,本介入と評価は治療者の感覚依存を軽減し,術後早期から段階的な負荷設定の一助になる可能性が考えられた。
【緒言】
腱板修復術後の再断裂率は,広範囲断裂では高く,修復腱の治癒不全や機能回復不良のリスクが高い。そのため,修復部への過負荷を回避しつつ機能低下を防ぐ負荷管理が重要である。棘上筋,棘下筋では,術後時期に応じた安全域の筋活動量となる運動が定量化されている(Thigpen, et al, 2016)。一方,肩甲下筋では安全な負荷量を示す定量的な負荷指標が確立されていない。そのため,広範囲断裂症例では,定量的指標が存在する筋と存在しない筋が混在し,特に術後早期において負荷設定が治療者の経験や感覚に依存しやすいという課題がある。そこで,広範囲断裂術後症例に対し,術後早期に定量指標と観察指標を統合した負荷管理を実践し,その有用性を患者立脚型評価に基づき検討した事例を報告する。
【症例紹介】
60代後半男性。作業中に倒れてきた木材を支えようとして受傷。左肩挙上時の疼痛と違和感の訴えが強く,受傷3か月後に左棘上筋,棘下筋,肩甲下筋の広範囲断裂に対し鏡視下腱板修復術を施行。職業は大工で,違和感のない挙上動作の獲得を希望していた。
【方法】自動運動期開始の術後6週以降は,棘上筋,棘下筋に対し15%MVC以下の低負荷運動(振り子運動,側臥位肩屈曲)などを選択し,8週~12週では,16~29%MVC運動(座位挙上,座位外転)へ段階的に移行した(Thigpen, et al, 2016)。一方,肩甲下筋には,Belly press testを用い,①代償動作の出現,②上腕骨頭前方偏位,③疼痛を運動中止基準とした。これは機能不全時に出現する代表的所見であり,前方安定性の破綻を反映する指標として用いた。介入は術後2週から術後3か月まで実施した。評価は,術後早期であり最大努力を要する筋力評価が困難な時期であり,患者立脚型評価であるShoulder36を用いた。
【経過】
術後3か月で,Belly press testは陽性から陰性へ改善した。Shoulder36では,筋力,健康感,ADL能力,スポーツ活動の項目は変化しなかったが,疼痛,ROM項目はそれぞれ0.1点の改善を認めた。また,挙上時の主観的な違和感は改善した。
【考察】
広範囲腱板断裂術後症例に対し,術後早期から棘上筋,棘下筋には術後時期に応じた安全域の筋活動量となる運動を選択し,肩甲下筋には観察指標を運動中止基準とした負荷管理を実践した。また,術後早期であり,患者立脚型評価を用いて効果判定を行った。その結果,術後3か月において筋力,健康感,ADL能力,スポーツ活動は維持され,疼痛,ROM項目は改善が認められた。筋力回復は,術後6か月以降に顕在化すると報告されており(Seok, et al, 2026),評価時点では回復途上であったことが考えられる。一方で,低負荷運動は筋内圧上昇を抑制し,血流阻害を生じにくいとされており(Takarada, et al, 2000),過負荷回避を通して機能維持に寄与した可能性がある。また,術後早期にShoulder36を用いることで,負荷管理の妥当性の判断に活用が可能であった。以上より,本介入と評価は治療者の感覚依存を軽減し,術後早期から段階的な負荷設定の一助になる可能性が考えられた。
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