講演情報

[O-2-02]回復期脳卒中患者における麻痺側下肢細胞外水分比と日常生活活動との関連

*木須 達哉1、松下 武矢1、嶋田 賢1、佐藤 伸哉1 (1. 一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 臨床部)
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キーワード:

脳卒中、細胞外水分比、Functional Independence Measure effectiveness

本研究は長崎リハビリテーション病院研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号R7-2)。研究情報は自施設ホームページに公開し、オプトアウトによる拒否の機会を保障した。本研究はヘルシンキ宣言および人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に従い実施した。

【目的】脳卒中後の日常生活活動(ADL)改善には多様な因子が関与し、客観的な予後評価指標の確立が求められている。近年、生体電気インピーダンス分析による細胞外水分比(extracellular water to total body water ratio:ECW/TBW)は浮腫や栄養・炎症状態を反映する指標として注目されている。全身ECW/TBWとADL改善との関連は報告されているが、部位別、特に麻痺側下肢に着目した検討は限られている。脳卒中後は麻痺側に筋萎縮や体液分布異常が生じやすく、局所的変化がADL改善に影響する可能性がある。本研究の目的は、回復期リハビリテーション病棟に入院した初発脳卒中患者を対象に、入院時の麻痺側下肢ECW/TBWと運動Functional Independence Measure effectiveness(FIMe)との関連を明らかにすることである。【方法】対象は2020年から2024年に当院へ入院した初発脳卒中患者998名のうち、除外基準に該当した382名を除いた616名とした。主要アウトカムは運動FIMeとした。入院時に麻痺側・非麻痺側下肢、全身のECW/TBWを測定した。統計解析では、運動FIMeを目的変数、各部位のECW/TBWを説明変数とした線形回帰分析を各部位ごとに独立したモデルで実施した。調整変数には年齢、性別、疾患種別、発症から当院入院までの期間、入院時運動FIM、下肢Brunnstrom recovery stage、C-reactive protein、要介護度、GLIM(Global Leadership Initiative on Malnutrition)基準、総摂取エネルギー量、摂取蛋白質量を用いた。各部位間の関連はSpearman順位相関係数で評価した。また、麻痺側と非麻痺側下肢の比較にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。有意水準は5%未満とし、統計ソフトはEZRを用いた。【結果】対象の年齢中央値は73歳、女性41%であった。線形回帰分析の結果、麻痺側下肢ECW/TBWは運動FIMeの独立した負の関連因子であった(偏回帰係数[B]-2.07、95%信頼区間[CI]-3.48~-0.66、p=0.004)。非麻痺側下肢(B-2.69、95%CI-4.16~-1.22、p<0.001)および全身(B-3.53、95%CI-5.33~-1.73、p<0.001)においても同様の関連を認めた。各部位のECW/TBW間には強い正の相関が認められた。麻痺側は非麻痺側と比較して有意に高値を示した(p<0.001)。【考察】本研究の結果、麻痺側下肢ECW/TBWが高値であるほど運動FIMeが低値を示すことが明らかとなった。麻痺側下肢ECW/TBWは全身と強い相関を示したことから、栄養状態や炎症といった全身状態を反映する指標であることが示唆された。一方で、麻痺側ECW/TBWが非麻痺側ECW/TBWに比して高値を示したことは、全身的影響に加え、不活動や運動麻痺に伴う筋萎縮などの局所的変化が関与している可能性を示す。すなわち、麻痺側ECW/TBWは全身状態と局所変化の双方を反映する指標であり、全身指標では捉えきれない機能予後に関する情報を補足する可能性がある。したがって、回復期においては、栄養管理や炎症制御といった全身的介入に加えて、麻痺側下肢の筋量・質の維持・向上に焦点を当てた介入が重要であると考えられる。なお、本研究は観察研究であり因果関係を示すものではない。また、評価は入院時の単回測定であり、経時的変化は検討していない。今後は、縦断的研究や介入研究により、ECW/TBWの改善がADL向上に与える影響を検証する必要がある。

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