講演情報

[O-2-03]脳卒中後片麻痺患者における歩行速度および運動麻痺に基づくサブグループ分類と歩行時の運動学的特徴

*戸髙 良祐1、渡邉 唯我1、梶山 哲1、阿南 雅也2 (1. 社会福祉法人 農協共済 別府リハビリテーションセンター、2. 大分大学 福祉健康科学部 理学療法コース)
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キーワード:

協調性、歩行、脳卒中

本研究は,当院の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号: 113).また,ヘルシンキ宣言を遵守したうえで事前に対象者へ十分な説明を行い,同意を得て実施した.

【はじめに】脳卒中後片麻痺患者の歩行速度は,運動麻痺の重症度と関連する.一方で,同等の歩行速度であっても,運動麻痺の重症度に応じて体幹および下肢の運動パターンは異なる可能性がある.したがって,歩行速度と運動麻痺の重症度を統合的に捉え,運動学的特徴を明らかにすることは,歩行再建に重要である.本研究では,歩行速度と運動麻痺の重症度に基づくサブグループ間で,体幹と下肢の運動学的指標の差異を検討した.
【方法】対象は脳卒中後片麻痺患者30人とした.臨床評価は快適歩行速度,Fugl-Meyer Assessmentの下肢運動項目(FMA-LE),Trunk Impairment Scaleを取得した.快適歩行時の運動学的データは,骨盤,麻痺側の大腿,下腿,踵骨部に慣性センサを貼付して収集した.計測時は,常用している歩行補助具を使用した.体幹の運動学的指標として,骨盤の加速度信号の鉛直成分から,ストライド間およびステップ間の自己相関係数を算出した(SRvt,SSvt).また,麻痺側下肢の協調性を定量化するため,各セグメントの矢状面上の角速度信号からVector Coding Techniqueを用いてCoupling Angleとその変動性を算出した.さらに,In Phase,Anti Phase,Proximal Phase,Distal Phaseに分類し,立脚相と遊脚相の前半・後半ごとに出現率を算出した.統計学的解析は,歩行速度とFMA-LEの関連性を確認するため,スピアマンの順位相関係数を算出した.歩行速度とFMA-LEに基づくサブグループを特定するため,階層的クラスター分析を行った.各クラスター間の変数の比較にはKruskal-Wallis検定を用い,多重比較はSteel-Dwass検定を行った(有意水準: 0.05).
【結果】歩行速度(m/s)とFMA-LE(点)は有意に相関した(rs = .56, p < .01).クラスタリングの結果,クラスター1(歩行速度: 0.48 (0.41-0.65),FMA-LE: 22 (20-24)),クラスター2(歩行速度: 0.93 (0.86-1.10),FMA-LE: 27.5 (26.5-28)),クラスター3(歩行速度: 0.62 (0.57-0.84),FMA-LE: 16 (16-17))に分類された.FMA-LEはクラスター2>1>3の順で有意に高く(p < .01),歩行速度はクラスター2がクラスター1より有意に高かった(p < .01).クラスター2は,他クラスターと比較してSRvtとSSvtが有意に高く(p < .01),変動性において骨盤-大腿間(立脚相後半),大腿-下腿間(立脚相前半・後半,遊脚相前半・後半),下腿-足部間(遊脚相前半・後半)が有意に低かった(p < .01).また,クラスター2は,骨盤-大腿間In Phase割合(立脚相後半)がクラスター1より有意に低く(p < .01),大腿-下腿間Distal Phase割合(遊脚相後半)がクラスター3より有意に高かった(p < .01).クラスター3は,下腿-足部間In Phase割合(立脚相後半)がクラスター1より有意に高かった(p < .01).
【考察】本研究では,歩行速度と運動麻痺の重症度に基づくクラスタリングにより,運動学的特徴が異なるサブグループが抽出された.歩行速度とFMA-LEが高い群はSRvtとSSvtが高く,変動性が低いことから,安定した歩行戦略を有することが示された.一方で,運動麻痺が重度でも歩行速度が同程度の群が存在し,その群では立脚相後半の下腿-足部間In Phase割合が増加していた.これは下肢装具による足関節の制御を反映している可能性がある.以上より,歩行能力は運動麻痺の重症度のみならず,協調性や変動性が複合的に影響する可能性が示された.

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