講演情報

[O-2-04]回復期リハビリテーション病棟における初発脳卒中患者の歩行自立後の転倒要因について検討

*田川 恒平1、木須 達哉1、中山 研一1、萩野 裕樹1、松本 千賀子1、秦 千尋1、小川 健治1 (1. 長崎リハビリテーション病院 臨床部)
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キーワード:

回復期リハビリテーション病棟、初発脳卒中、転倒

本研究は長崎リハビリテーション病院研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号R7-06)。研究情報は自施設ホームページに公開し、オプトアウトによる拒否の機会を保障した。本研究はヘルシンキ宣言および人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に従い実施した。

【目的】
回復期リハビリテーション病棟では、多職種による集中的な介入を通じて機能回復と自立支援を行っている。しかし、入棟中の脳卒中患者のうち21.3%が転倒を経験すると報告されている。転倒リスクを高める要因として、運動麻痺や筋力、立位バランス、歩行能力といった身体機能だけでなく、認知機能や高次脳機能が報告されている。当院ではそれらの評価に加え、実際の病棟生活の動作の安全性をチェックリストを使用して多職種で多面的に評価し、歩行自立の可否を検討している。しかしながら、自立と判断されたのちに転倒が一定数生じている。本研究は、歩行自立後に転倒した脳卒中患者の転倒要因を検討し、予測精度を高め、歩行自立後の転倒減少に繋げることを目的とする。
【方法】
対象は、2022年4月から2024年3月までに当院へ入院した初発脳卒中患者472名のうち、歩行自立に至らなかった者(247名)、データ欠損者(30名)を除外した195名とした。主要アウトカムは歩行自立後の転倒の有無とした。調査項目は、基本情報(入院日、発症日、性別、年齢、疾患名、麻痺側、歩行自立日、転倒日)。歩行自立時の状況(歩行補助具や装具の有無、中枢神経作用薬の有無)。心身機能・活動評価項目(入院時、歩行自立時のFIM、Brs、BBS、TUG、注意障害・遂行機能障害・半側空間無視・失行・失認・失語の有、疑い、無)。歩行自立後の転倒の有無から転倒群と非転倒群に分け、2群間で調査項目の比較を行った。名義変数にはフィッシャーの正確確率検定を、量的変数には Kolmogorov–Smirnov 検定で正規性を確認した上で Mann–Whitney のU検定を用いた。統計解析はEZR version 1.68を用い、有意水準はP<0.05とした。
【結果】
歩行自立後に転倒した者は18名(9.2%)であった。群間比較の結果(転倒群vs非転倒群)、歩行自立までの期間(38日 vs 21日、P=0.043)、BBS(48点 vs 52点、P=0.007)、TUG(12秒 vs 10秒、P=0.047)において有意差を認めた。一方、基本情報や、自立時の歩行状況や入院時の心身機能やADL、自立時の高次脳機能障害の有無、中枢神経作用薬の使用、については有意差を認めなかった。
【考察】
歩行自立後の転倒経験者は9.2%であり、当院の歩行自立評価は一定の成果があると考える。今回、転倒群はTUGやBBSが非転倒群より低いという結果であった。しかし、TUGは12秒、BBSは48点と、いずれも一般的な転倒リスクのカットオフ値は上回っており、身体機能評価だけでは歩行自立を判定することが難しいことを示唆しているものと考える。加えて、入院時の心身機能やADLには差は認めなかったものの、転倒群は歩行自立までに長い期間を要するという結果であった、入院時からの身体機能の改善が非転倒群より時間を要するとともに、わずかな機能低下が生じているという可能性が示唆された。一方で、高次脳機能障害については有意差を認めず、本研究ではその影響を明確にすることはできなかった。これは、高次脳機能障害の有無、疑いだけの評価であり、重症度の評価までしていない点が影響した可能性がある。今後は対象者数を増やし、高次脳機能障害の評価バッテリーを用いて、多変量解析を用いて検討することで、歩行自立後の転倒要因を明らかにし、予測精度を高め、転倒減少に繋げていきたい。

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