講演情報

[O-6-01]人工膝関節全置換術における術前疼痛の潜在的因子と術後疼痛の改善度,及び到達度との関連

*松田 友秋1,2、矢野 剛士1、獅子目 亨3、加藤 浩2 (1. 獅子目整形外科病院 リハビリテーション部、2. 山形県立保健医療大学大学院 保健医療学研究科保健医療学専攻 博士後期課程 理学療法学分野、3. 獅子目整形外科病院 整形外科)
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キーワード:

人工膝関節全置換術、疼痛、因子分析

本研究は,所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。TKA術後患者の診療録および評価データを後方視的に使用し,研究情報を公開したうえで,オプトアウトにより研究参加を拒否できる機会を設けた.

【目的】
人工膝関節全置換術(TKA)は,変形性膝関節症に対する有効な治療法の1つである一方,一定割合で術後疼痛が残存することが報告されている.術後疼痛の評価にはKnee injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)のPainスコアが広く用いられ,改善度や到達度に関する基準値も報告されている.KOOS-Painスコアは術前スコアが術後スコアに影響することが報告されているが,同スコアは複数の設問から構成される包括的尺度であるため,術前のどの局面の疼痛が術後疼痛の改善度や到達度に関連するかは明らかにされていない.本研究の目的は,因子分析を用いてTKA術前のKOOS-Painスコアの潜在的因子を明らかにし,術前疼痛の潜在的因子と術後疼痛の改善度,及び到達度との関連性を探索的に検討することである.
【方法】
対象は,内側型変形性膝関節症に対して初回片側TKAを施行した21名(男性4名,女性17名,平均年齢74.5±7.1歳)であった.評価項目は術前,及び術後退院時のKOOS-Painスコアとし,術後スコアを到達度,術前後の変化量を改善度とした.解析は,まず術前KOOS-Painスコアの各設問を変数とした因子分析により潜在的因子を抽出した.因子数は固有値1以上とし,因子回転には直接オブリミン法による斜交回転を用いた.次に,因子負荷量と各被検者の設問得点から算出した因子得点(平均0・標準偏差1の標準化スコア)を用いて,術後の改善度,及び到達度との関連性をPearsonの積率相関係数(r)により検討した.有意水準は5%とした.
【結果】
因子分析の結果,歩行・立位・安静・夜間・屈伸時痛が寄与する第1因子と,疼痛頻度,回旋・階段昇降時痛が寄与する第2因子の2つの因子が抽出された.寄与率は第1因子40.6%,第2因子23.4%,累積寄与率は64.0%であった.術後疼痛との関連では,改善度は第1因子(r = −0.69,p < 0.01),及び第2因子(r = −0.56,p < 0.01)と有意な負の相関を示した.一方,到達度は第2因子とのみ有意な負の相関を示した(r = −0.46,p = 0.02).
【考察】
本研究の結果,術前のKOOS-Painスコアは2つの潜在的因子から構成される可能性が示唆された.第1因子は歩行・立位・安静・夜間・屈伸などの日常生活場面の疼痛から構成されることから「日常的疼痛」と解釈した.第2因子は疼痛頻度,及び回旋・階段昇降時痛で構成されることから「時間・条件依存的疼痛」と解釈した.先行研究では,KOOS-Painの総合スコアが同程度でも,疼痛頻度や回旋・階段昇降時痛は他の項目と異なる分布を示すことが報告されており(Riddle DL, 2023),第2因子が独立した潜在的因子として抽出されたことは妥当な結果と考えられる.また,術後疼痛の到達度は第2因子とのみ関連を示したことから,術前の「時間・条件依存的疼痛」は,TKA術後の最終的な到達度を特徴づける重要な側面である可能性が示唆された.
【まとめ】
術前のKOOS-Painスコアは,「日常的疼痛」と「時間・条件依存的疼痛」の2因子から構成される可能性が示された.また,改善度は両因子と関連した一方,到達度は「時間・条件依存的疼痛」とのみ関連を示した.以上の結果から,術前疼痛を多角的に捉えることは,TKA術後疼痛の変化を改善度と到達度の両側面から理解する上で有用である可能性が示唆された.

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