講演情報
[O-8-02]情報過多社会における理学療法士の学習変容と職能団体の役割-アーカイブ配信導入実績と学習意識調査から-
*長友 春佳1,2、中原 寿志1,3、黒木 裕亮1,3、松澤 雄太1,4 (1. 宮崎県理学療法士会 学術局、2. 潤和会記念病院、3. 宮永病院、4. 都城リハビリテーション学院)
キーワード:
ライフステージ、生涯学習、アンケート調査
本調査は目的やデータ取扱いを事前に画面上で説明し, 個人が特定されないよう匿名性を確保した上で, アンケート回答をもって同意とみなす旨を教示して実施した. 過去の受講データの学術利用に関しては, 宮崎県理学療法士会ウェブサイトにてオプトアウトを実施した. なお, 本研究の実施にあたっては, 同士会の承認を得ている.
【はじめに】SNSや民間オンラインサービスの普及により, 理学療法士の学習環境は劇的に変化した.「いつでも・安価に」学べる選択肢が増加する中, 職能団体である宮崎県理学療法士会(以下, 士会)の研修にも変容が迫られている. 士会では会員の多様なライフスタイルへの対応として2025年度より「アーカイブ配信」を一部導入した. 本報告の目的は, 研修形態の変化が受講動向に与えた影響を可視化し, 会員の学習意識調査を通じて情報過多時代の士会研修のあり方を再考することである. 【方法】[調査1]受講動向の比較: 2024年度(対面・オンライン)と2025年度(対面・オンライン・アーカイブ配信導入)の受講管理データを用い, 受講者数, 属性, 運営コストを比較した. [調査2]学習意識調査:2026年4月8日〜27日に士会会員を対象とした無記名式オンラインアンケートを実施した. 項目は属性, ライフステージ, 学習媒体の利用状況, 研修会選択の重視要素・断念理由, アーカイブ配信の影響, 士会研修に求める価値等, 全24問とした. 【結果】有効回答数は151件(回答率15.9%). 1.受講動向とコスト:延べ受講者数は2024年度589名, 2025年度484名であった. なお, 年度により研修テーマが異なるため単純比較には留意を要す. 運営コストは配信システム経費等により14,400円増加した. 2.ライフステージと学習環境:回答者の66.9%が育児・介護・役職等の負担を抱えていた. 自己研鑽時間は3~5年前と比較し, 半数以上(54.3%)が「減少した」と回答し, 1週間あたりの学習時間は「30分〜1時間未満(32.5%)」が最多であった. 3.学習媒体の選択と学習意識:利用割合は「書籍・論文(59.6%)」,「職場内(43.7%)」,「YouTube等(34.4%)」の順に高く, 士会や民間の研修は低い傾向にあった. 重視要素は「移動の有無(74.8%)」,「受講費の安さ(58.3%)」が上位で, 断念理由は「プライベート(66.9%)や仕事(55.0%)との重複」が主であった. 学習意識の変化として「必要な知識のみピンポイントで学ぶ(68.2%)」,「短時間の動画学習を好む(50.3%)」が半数を超えた. 4.アーカイブ配信の影響:配信導入により学習機会が「増加した」は28.5%, 今後の利用希望は74.8%に上る一方, 導入自体を「知らなかった」との回答も28.5%存在した. 5.士会研修の価値:独自価値として「単位取得(57.6%)」に加え, 「地域のネットワーク構築(45.0%)」,「情報の信頼性(35.8%)」が挙げられた. 対面研修には「実技指導(72.2%)」を求める声が圧倒的であった. 【考察】本結果が示す「会員の多忙化」と「効率重視」という現状をみれば, 従来の研修設計は更なる転換期にある. 受講者減少は周知不足に加え, 変容する会員ニーズとの乖離を示唆している. 今後は実技指導や地域課題共有など地域性に特化した対面研修で学ぶ価値を見出し, 地理的・時間的制約のないアーカイブ配信を補完的に運用する設計が情報過多社会における会員ニーズに即した未来の研修設計になると考える. 【まとめ】「現在」の会員のライフスタイルを見つめ直すことで, アーカイブ配信の周知・運用と対面研修の価値再定義という課題が明確になった. 個々のライフステージに寄り添う受講環境を整備し, 地域に根ざした独自価値を具現化することで, 時代に淘汰されない職能団体の「未来」を構築していく必要がある.
【はじめに】SNSや民間オンラインサービスの普及により, 理学療法士の学習環境は劇的に変化した.「いつでも・安価に」学べる選択肢が増加する中, 職能団体である宮崎県理学療法士会(以下, 士会)の研修にも変容が迫られている. 士会では会員の多様なライフスタイルへの対応として2025年度より「アーカイブ配信」を一部導入した. 本報告の目的は, 研修形態の変化が受講動向に与えた影響を可視化し, 会員の学習意識調査を通じて情報過多時代の士会研修のあり方を再考することである. 【方法】[調査1]受講動向の比較: 2024年度(対面・オンライン)と2025年度(対面・オンライン・アーカイブ配信導入)の受講管理データを用い, 受講者数, 属性, 運営コストを比較した. [調査2]学習意識調査:2026年4月8日〜27日に士会会員を対象とした無記名式オンラインアンケートを実施した. 項目は属性, ライフステージ, 学習媒体の利用状況, 研修会選択の重視要素・断念理由, アーカイブ配信の影響, 士会研修に求める価値等, 全24問とした. 【結果】有効回答数は151件(回答率15.9%). 1.受講動向とコスト:延べ受講者数は2024年度589名, 2025年度484名であった. なお, 年度により研修テーマが異なるため単純比較には留意を要す. 運営コストは配信システム経費等により14,400円増加した. 2.ライフステージと学習環境:回答者の66.9%が育児・介護・役職等の負担を抱えていた. 自己研鑽時間は3~5年前と比較し, 半数以上(54.3%)が「減少した」と回答し, 1週間あたりの学習時間は「30分〜1時間未満(32.5%)」が最多であった. 3.学習媒体の選択と学習意識:利用割合は「書籍・論文(59.6%)」,「職場内(43.7%)」,「YouTube等(34.4%)」の順に高く, 士会や民間の研修は低い傾向にあった. 重視要素は「移動の有無(74.8%)」,「受講費の安さ(58.3%)」が上位で, 断念理由は「プライベート(66.9%)や仕事(55.0%)との重複」が主であった. 学習意識の変化として「必要な知識のみピンポイントで学ぶ(68.2%)」,「短時間の動画学習を好む(50.3%)」が半数を超えた. 4.アーカイブ配信の影響:配信導入により学習機会が「増加した」は28.5%, 今後の利用希望は74.8%に上る一方, 導入自体を「知らなかった」との回答も28.5%存在した. 5.士会研修の価値:独自価値として「単位取得(57.6%)」に加え, 「地域のネットワーク構築(45.0%)」,「情報の信頼性(35.8%)」が挙げられた. 対面研修には「実技指導(72.2%)」を求める声が圧倒的であった. 【考察】本結果が示す「会員の多忙化」と「効率重視」という現状をみれば, 従来の研修設計は更なる転換期にある. 受講者減少は周知不足に加え, 変容する会員ニーズとの乖離を示唆している. 今後は実技指導や地域課題共有など地域性に特化した対面研修で学ぶ価値を見出し, 地理的・時間的制約のないアーカイブ配信を補完的に運用する設計が情報過多社会における会員ニーズに即した未来の研修設計になると考える. 【まとめ】「現在」の会員のライフスタイルを見つめ直すことで, アーカイブ配信の周知・運用と対面研修の価値再定義という課題が明確になった. 個々のライフステージに寄り添う受講環境を整備し, 地域に根ざした独自価値を具現化することで, 時代に淘汰されない職能団体の「未来」を構築していく必要がある.
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン
