講演情報
[O-8-05]回復期リハビリテーション病棟に入棟した大腿骨近位部骨折術後患者の歩行形態に関わる因子の検討
*西山 裕太1、野口 雄平1、長谷川 隆史1 (1. 医療法人和仁会 和仁会病院リハビリテーション科)
キーワード:
大腿骨近位部骨折、歩行形態、回復期リハビリテーション
本研究は所属施設の倫理委員会にて承認を受け,実施した(承認番号20230801)。
【はじめに】大腿骨近位部骨折(以下,近位部骨折)は移動能力に影響しやすく,ADL制限やQOLの低下を来たすことがある。近位部骨折患者の歩行予後予測では,「歩行自立度」をアウトカムとしたものが多いが,退院先の検討,歩行補助具の選定を行う上で歩行形態まで予測し,早期に把握しておく重要性は高い。そこで本研究は,近位部骨折術後患者を対象に,入棟時評価を基に退院時の歩行形態に影響する因子を特定することを目的とした。【対象】対象は2021年4月から2026年3月の間に,急性期病院で手術を施行し,当院回復期リハビリテーション病棟へ転院した近位部骨折患者とした。そのうち,術前歩行困難であった者,60歳未満の者,死亡退院した者,入院中に他部位の骨折を呈した者,データ欠損等を除き,解析対象は114名とした。【方法】評価項目は入院時における年齢,性別,BMI,骨折型,急性期病院の入院日数,握力,改訂長谷川式簡易知能評価(以下,HDS-R),立ち上がり動作の可否,急性期病院における歩行補助具を使用した歩行練習の有無(以下,早期歩行),歩行形態とした。近位部骨折は高齢者に多い骨折であり,認知機能に左右されず幅広い層に適用可能な予後予測が望ましく,上記の評価項目を選定した。立ち上がり動作は支持物の有無は問わず,介助を要するか否かを評価した。歩行形態は屋内の移動における歩行形態について,独歩,杖歩行,歩行器に分類し,術前と退院時で比較した。歩行形態が術前と比して退院時に低下した者,術前の歩行形態を退院時に維持出来ていた者の2群に分け,χ2検定もしくはMann-Whitney U検定を用いて比較した。さらに,単変量解析で有意差を認めた項目を独立変数,歩行形態の変化を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。解析ソフトはEZR Ver.1.70を使用し,有意水準は5%とした。【結果】2群の内訳について,維持群は53名(47.7%),低下群は58名(52.3%)であった。単変量解析の結果,年齢,握力,HDS-R,立ち上がり動作,早期歩行において有意差が認められた。ロジスティック回帰分析では,年齢(OR : 1.08,95%CI : 1.01-1.15),立ち上がり動作(OR : 15.70,95%CI : 2.57-96.1)が歩行形態に関連する因子として抽出された。また,多重共線性について,VIF(Variance Inflation Factor)が5以上となる変数は認められなかった。【考察】多変量解析の結果,近位部骨折術後患者の歩行形態には年齢,立ち上がり能力が関与していた。加齢に伴う生体機能の衰えは歩行動作に影響しやすいことが報告されており,高齢患者では術前の歩行能力の再獲得が難しいと考えられた。また,立ち上がり動作は身体重心の前上方への移動が必要な動作で下肢筋力が大きく影響する。先行研究では,近位部骨折術後早期における立ち上がり動作能力は歩行予後に影響すること,歩行自立度には下肢筋力の影響が大きいことが報告されている。本研究において,立ち上がり動作が困難であった者の90%以上は歩行形態の低下が生じていた。以上より,術後立ち上がり困難な者では,下肢筋力が大きく低下している可能性がある。このため,術前の歩行形態を再獲得出来ない可能性が高く,早期に自宅環境の評価,歩行補助具の選定を行い,ADL拡大を図っていくことが必要だと考えられた。
【はじめに】大腿骨近位部骨折(以下,近位部骨折)は移動能力に影響しやすく,ADL制限やQOLの低下を来たすことがある。近位部骨折患者の歩行予後予測では,「歩行自立度」をアウトカムとしたものが多いが,退院先の検討,歩行補助具の選定を行う上で歩行形態まで予測し,早期に把握しておく重要性は高い。そこで本研究は,近位部骨折術後患者を対象に,入棟時評価を基に退院時の歩行形態に影響する因子を特定することを目的とした。【対象】対象は2021年4月から2026年3月の間に,急性期病院で手術を施行し,当院回復期リハビリテーション病棟へ転院した近位部骨折患者とした。そのうち,術前歩行困難であった者,60歳未満の者,死亡退院した者,入院中に他部位の骨折を呈した者,データ欠損等を除き,解析対象は114名とした。【方法】評価項目は入院時における年齢,性別,BMI,骨折型,急性期病院の入院日数,握力,改訂長谷川式簡易知能評価(以下,HDS-R),立ち上がり動作の可否,急性期病院における歩行補助具を使用した歩行練習の有無(以下,早期歩行),歩行形態とした。近位部骨折は高齢者に多い骨折であり,認知機能に左右されず幅広い層に適用可能な予後予測が望ましく,上記の評価項目を選定した。立ち上がり動作は支持物の有無は問わず,介助を要するか否かを評価した。歩行形態は屋内の移動における歩行形態について,独歩,杖歩行,歩行器に分類し,術前と退院時で比較した。歩行形態が術前と比して退院時に低下した者,術前の歩行形態を退院時に維持出来ていた者の2群に分け,χ2検定もしくはMann-Whitney U検定を用いて比較した。さらに,単変量解析で有意差を認めた項目を独立変数,歩行形態の変化を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。解析ソフトはEZR Ver.1.70を使用し,有意水準は5%とした。【結果】2群の内訳について,維持群は53名(47.7%),低下群は58名(52.3%)であった。単変量解析の結果,年齢,握力,HDS-R,立ち上がり動作,早期歩行において有意差が認められた。ロジスティック回帰分析では,年齢(OR : 1.08,95%CI : 1.01-1.15),立ち上がり動作(OR : 15.70,95%CI : 2.57-96.1)が歩行形態に関連する因子として抽出された。また,多重共線性について,VIF(Variance Inflation Factor)が5以上となる変数は認められなかった。【考察】多変量解析の結果,近位部骨折術後患者の歩行形態には年齢,立ち上がり能力が関与していた。加齢に伴う生体機能の衰えは歩行動作に影響しやすいことが報告されており,高齢患者では術前の歩行能力の再獲得が難しいと考えられた。また,立ち上がり動作は身体重心の前上方への移動が必要な動作で下肢筋力が大きく影響する。先行研究では,近位部骨折術後早期における立ち上がり動作能力は歩行予後に影響すること,歩行自立度には下肢筋力の影響が大きいことが報告されている。本研究において,立ち上がり動作が困難であった者の90%以上は歩行形態の低下が生じていた。以上より,術後立ち上がり困難な者では,下肢筋力が大きく低下している可能性がある。このため,術前の歩行形態を再獲得出来ない可能性が高く,早期に自宅環境の評価,歩行補助具の選定を行い,ADL拡大を図っていくことが必要だと考えられた。
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン
