講演情報

[P-1-04]予測的姿勢制御に着目した介入により,歩行能力の改善と散歩の再開に至ったパーキンソン病患者の一例

*萩原 駿一1、山川 紘子1、大瀬 拓海1、山口 滉大1、山田 麻和1、本多 歩美1 (1. 社会医療法人春回会 長崎北病院 総合リハビリテーション部)
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キーワード:

パーキンソン病、Mini-BESTest、Life Space Assessment

本研究は倫理的配慮を行い,対象者に目的・内容・負担・自由意思による参加・同意撤回の権利を口頭および書面にて説明し、同意を得た.なお,個人情報が特定されないように匿名化し,データは研究担当者が厳重に保管する.

【はじめに】在宅パーキンソン病(PD)患者の活動量低下には,姿勢保持障害等の運動症状に加え,疲労感や転倒恐怖感の関与が指摘されている.今回,ふらつき感や疲労感により日課の散歩が困難となったPD患者に対し,予測的姿勢制御(APAs)に着目した介入を行った結果,歩行能力の改善と活動範囲の拡大が得られたため報告する.【症例紹介】70代男性.PD(HY stage3).症状を自覚した4か月後にPDと診断され,リハビリテーション(リハ)開始.レボドパ300㎎/日で日内変動なし.ADL自立だが外出は通院のみ(T字杖使用).妻の勧めでリハを開始し,「ふらふらしないで歩きたい」との主訴はあるが,当初は体調不良による休みも散見された.【初期評価】MDS-UPDRSpart3:43/132点(筋固縮平均:2.0 /4.0点),Mini-BESTest:19/28点(APAs平均:1.0/2.0点,動的歩行:1.0/2.0点),10m快適歩行:16.46s(30歩),TUG:R15.9/L17.0s,6分間歩行距離:225m(T字杖).歩幅減少と円滑さの低下が顕著であった.PDQ39:70/156点,PFS-16:3.9/5.0点,GDS:14/15点と疲労感,うつ症状が強く,LSA:24/120点で活動範囲は敷地内レベルに留まっていた.【統合と解釈】筋固縮や動作緩慢に加え,APAs低下によるバランス障害が歩行時の不安感やふらつき感を招き,非運動症状(うつ・疲労感)と相互に影響して活動制限につながっていると推察した.【介入経過】週に2回,各1時間のリハを4か月実施した.前半2ヶ月は動作の振幅拡大を目的に臥位・座位での粗大運動を主体とした.2か月後,歩行速度と歩幅は拡大傾向だったが動的歩行のバランス能力は依然として低下していた.そこで後半2ヶ月は,視覚的フィードバック下での身体感覚の再獲得を図るとともに,APAs強化に向けた立位バランスやステップ練習を強化し,日常生活を想定した動的歩行練習へ展開した.また,全過程でポジティブフィードバックを徹底し,心理面へ配慮した.【最終評価】MDS-UPDRS part3:23/132点(筋固縮平均:1.4/4.0点),Mini-BESTest:21/28点(APAs平均:1.3/2.0点,動的歩行平均1.6/2.0点),10m快適歩行:9.44s(18歩),TUG:R7.7/L7.2s,6分間歩行:388m(独歩)と,運動症状および歩行では臨床的意味のある差を超えた大幅な改善を認めた.PDQ39:13/156点,PFS-16:2.1/5.0点,GDS:9/15点と非運動症状も軽減した.心理面の改善に伴い発話量が増加し,自宅近隣の散歩を再開するなどLSA:56/120点に改善し,「きつくなくなった」と内省が得られた.【考察】本症例において活動範囲が拡大した要因として,症例の著明な易疲労感と消極的な心理状態に配慮し,低負荷な粗大運動から段階的に運動強度を調整したことが挙げられる.初期に身体的・心理的負担の少ない運動から開始し,ポジティブフィードバックを徹底したことで,身体感覚の再獲得とともに自己効力感が向上した.このプロセスにより,後半のAPAs強化に向けた高負荷な立位・歩行練習への円滑な移行ができ,結果として歩行効率の向上による疲労感の軽減と,日課の散歩再開という実生活での活動量拡大に結びついたと考えられる.

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