講演情報

[P-11-01]複合病態を呈した脳卒中再発症例に対する段階的な装具療法の経験

*中川 涼1、田鍋 拓也2、長野 弘枝1、安田 遼1 (1. 公益財団法人 健和会 大手町病院 リハビリテーション部、2. 公益財団法人 健和会 大手町リハビリテーション病院 リハビリテーション部)
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キーワード:

複合病態、課題難易度、装具療法

【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき,本報告の趣旨と内容を口頭・書面にて説明し同意を得た.

【目的】
運動療法を実施する際,個々の能力に応じた治療環境の設定は重要であり,その一つの手段として装具の活用が挙げられる.今回,既往に右陳旧性脳出血を有し,新たに左小脳出血発症にて立位バランス・歩行能力低下をきたした症例に対して,課題難易度に着目し,長下肢装具(KAFO)をはじめとする段階的な装具療法の実施により,良好な転帰を得たため報告する.
【症例紹介】
60歳代女性.左小脳出血の診断で他院入院.18病日に当院回復期病棟へ転入.頭部CTで小脳虫部から左小脳半球外側部にかけて血腫を認めた.既往に右陳旧性脳出血(被殻)あり.病前ADLは, 短下肢装具(AFO)着用し,屋内伝い歩き自立.主訴は「左足で踏ん張れない」.初期評価(18病日) では,Brunnstrom Recovery Stage(Lt):Ⅲ/Ⅲ/Ⅲ,GMT(Rt/Lt):5/2,表在・深部感覚:重度鈍麻,Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA):12.5点,Berg Balance Scale(BBS):21点,静止立位荷重量:右45kg/左12kg 最大荷重量:右48kg/左20kg,Functional Ambulation Categories(FAC):1点,全般性注意障害,左半側空間無視あり.
【経過】
AFO着用下での立位姿勢は,左膝過伸展,左骨盤帯後方回旋を認め右荷重偏位.左下肢へ荷重を誘導およびアライメント修正を行うと左膝関節に動揺を認め,恐怖心の惹起と伸展パターンの増強から荷重位保持は困難であった.また,重度感覚障害や注意障害から,左下肢の各部位の識別や荷重感のフィードバックは困難であった.左膝関節への弾性包帯着用を試みるも,支持性向上に繋がらず,効果的な立位・歩行練習の実施に至らなかった.そこで,KAFOを用いたところ恐怖心が軽減し,筋緊張亢進が抑制され,十分な左下肢荷重が可能となった.また,「左足で支えている感じがする」,「腰が引けるから前にやらないと」などの内省も得られ,23病日よりKAFOを用いた立位・歩行練習を集中的に実施.60病日に左骨盤帯後方回旋の軽減,左膝関節の動揺軽減を認め,膝軟性装具とAFOの併用へ移行.膝軟性装具の使用頻度を漸減し,74病日にAFOのみの訓練へ移行した.最終評価(88病日)では,SARA:6点,BBS:43点, 静止立位荷重量:右32kg/左28kg 最大荷重量:右50kg/左40kg,FAC:4.膝関節動揺は消失し,AFOとロフストランド杖および伝い歩きにて屋内歩行自立となった.
【考察】
本症例は,画像所見や主訴に加えて左膝関節の動揺を認めていたことから,既往の左片麻痺後遺症に左下肢失調が重複した可能性があり,筋出力制御が更に困難となり,支持性低下をきたしたと考える.才藤らは,運動学習におけるパフォーマンスの変化において,①量(頻度)②難易度③フィードバックが重要と述べており,特に難易度を強調している.KAFOによる膝関節の物理的固定は,左下肢の筋出力制御の難易度を適切に調整し,十分な荷重と感覚フィードバックの獲得に寄与したと考えられる.このような治療環境下で,段階的に装具調整を行いながら,反復的な課題指向型練習を実施できたことが,立位バランス・歩行能力向上に結びついたと推察される.脳卒中の再発により,臨床上,神経症候が重複し,介入に難渋する症例は少なくない.このような場合においても,課題難易度に着目した段階的な装具療法は,適切な運動学習を促進する有効な手段と考える.

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