講演情報
[P-11-03]回復期病院を退院後、不定愁訴を伴う慢性疼痛が残存しながらも家事動作獲得に至った生活期脳卒中者の1症例
*黒木 裕亮1、中原 寿志1、柚木 直也1 (1. 医療法人 魁成会 宮永病院 リハビリテーション室)
キーワード:
生活期脳卒中者、慢性疼痛、家事動作
今回の介入にあたり、症例の個人情報とプライバシーの保護に配慮し、十分な説明を行ったあとに口頭および書面で同意を得た。
【目的】慢性疼痛は抑うつや不安、破局的思考など心理的要因と相互に影響し合いながら、活動制限や生活範囲の狭小化を招く危険性がある。慢性疼痛患者に対する評価は痛みを生物-心理-社会モデルで捉え、介入はfear-avoidanceモデルに伴う不活動を是正するために患者教育や身体活動量のペーシングを行うことが有効であると報告されている。今回、不定愁訴を伴う慢性疼痛を有した生活期脳卒中者を担当し、疼痛および心理面の改善が乏しい中で介入目的を疼痛軽減から家事動作獲得へ移行したことで生活活動度の向上と生活範囲の拡大が得られ、活動量の向上が推察された経過を疼痛・心理面の変化とあわせて検討したため報告する。
【症例紹介】症例は左被殻出血を発症し、右片麻痺を呈した50歳代女性。第183病日に回復期病院を退院。第203病日に1回40分、週2回の訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)を開始。訪問リハ開始時、Brunnstrom Recovery Stage(以下、BRS)は上肢Ⅲ・手指Ⅱ・下肢Ⅳで一本杖とプラスチック型短下肢装具を用いて屋内移動は自立レベル。疼痛は麻痺側腹部・肩関節を中心に、日によって麻痺側肘・手・股関節にも疼痛が出現する不定愁訴を伴う慢性疼痛を認め、Numerical Rating Scale(以下、NRS)は8点。HOPEは「痛みを何とかしてほしい」であり、疼痛軽減への期待が強かった。
【経過】訪問リハ開始時は麻痺側機能向上と疼痛軽減を目的に関節可動域練習や麻痺側上下肢の促通練習を中心に提供したが、麻痺側機能の向上と疼痛の軽減は得られず、経過は難渋した。そこで第281病日より、慢性疼痛の心理面と活動に関する評価を追加。介入目的も本症例の希望のあった掃除・調理・洗濯等の家事動作獲得に変更。疼痛はNRSは8点、Pain Catastrophizing Scale(以下、PCS)は39点、Hospital Anxiety and Depression Scale(以下、HADS)は不安:9点、抑うつ:11点、Central Sensitization Inventory(以下、CSI)は33点で破局的思考と不安・抑うつ傾向を認めた。活動はFrenchay Activities Index (以下、FAI)は1点、Life Space Assessment(以下、LSA)は13点で活動量の低下が推察された。疼痛や活動に対する内省は「痛いからじっとしていたい」と訴えた。その後の介入は家事動作獲得を目標に痛みに関する患者教育やIADL動作練習、環境・物品調整を実施。介入目的変更後、約3カ月経過した第365病日はNRSが7点、PCSが31点、HADSが不安:9点、抑うつ:11点、CSIが39点、FAIが14点、LSAが29点。疼痛や活動に対する内省は「何かをしていると痛みが紛れる」と訴えた。
【考察】本症例は慢性疼痛や心理面の改善は得られなかったが、疼痛や活動に対する内省の変化と家事動作の獲得・生活空間の拡大を認め、活動量が向上したと推察された。先行研究では20週以上の介入により慢性疼痛の改善を認めた報告もあり、本症例も疼痛や心理面の改善にはさらなる介入期間が必要であった可能性が示唆された。また、疼痛や心理面の改善が得られなくても、疼痛や活動に対する内省の変化を得られたことが活動量の改善に寄与した可能性が示唆された。
【まとめ】慢性疼痛のリハビリテーションでは疼痛や心理面の改善が得られなくても疼痛や活動に対する内省の変化を得ることが重要である可能性が示唆された。
【目的】慢性疼痛は抑うつや不安、破局的思考など心理的要因と相互に影響し合いながら、活動制限や生活範囲の狭小化を招く危険性がある。慢性疼痛患者に対する評価は痛みを生物-心理-社会モデルで捉え、介入はfear-avoidanceモデルに伴う不活動を是正するために患者教育や身体活動量のペーシングを行うことが有効であると報告されている。今回、不定愁訴を伴う慢性疼痛を有した生活期脳卒中者を担当し、疼痛および心理面の改善が乏しい中で介入目的を疼痛軽減から家事動作獲得へ移行したことで生活活動度の向上と生活範囲の拡大が得られ、活動量の向上が推察された経過を疼痛・心理面の変化とあわせて検討したため報告する。
【症例紹介】症例は左被殻出血を発症し、右片麻痺を呈した50歳代女性。第183病日に回復期病院を退院。第203病日に1回40分、週2回の訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)を開始。訪問リハ開始時、Brunnstrom Recovery Stage(以下、BRS)は上肢Ⅲ・手指Ⅱ・下肢Ⅳで一本杖とプラスチック型短下肢装具を用いて屋内移動は自立レベル。疼痛は麻痺側腹部・肩関節を中心に、日によって麻痺側肘・手・股関節にも疼痛が出現する不定愁訴を伴う慢性疼痛を認め、Numerical Rating Scale(以下、NRS)は8点。HOPEは「痛みを何とかしてほしい」であり、疼痛軽減への期待が強かった。
【経過】訪問リハ開始時は麻痺側機能向上と疼痛軽減を目的に関節可動域練習や麻痺側上下肢の促通練習を中心に提供したが、麻痺側機能の向上と疼痛の軽減は得られず、経過は難渋した。そこで第281病日より、慢性疼痛の心理面と活動に関する評価を追加。介入目的も本症例の希望のあった掃除・調理・洗濯等の家事動作獲得に変更。疼痛はNRSは8点、Pain Catastrophizing Scale(以下、PCS)は39点、Hospital Anxiety and Depression Scale(以下、HADS)は不安:9点、抑うつ:11点、Central Sensitization Inventory(以下、CSI)は33点で破局的思考と不安・抑うつ傾向を認めた。活動はFrenchay Activities Index (以下、FAI)は1点、Life Space Assessment(以下、LSA)は13点で活動量の低下が推察された。疼痛や活動に対する内省は「痛いからじっとしていたい」と訴えた。その後の介入は家事動作獲得を目標に痛みに関する患者教育やIADL動作練習、環境・物品調整を実施。介入目的変更後、約3カ月経過した第365病日はNRSが7点、PCSが31点、HADSが不安:9点、抑うつ:11点、CSIが39点、FAIが14点、LSAが29点。疼痛や活動に対する内省は「何かをしていると痛みが紛れる」と訴えた。
【考察】本症例は慢性疼痛や心理面の改善は得られなかったが、疼痛や活動に対する内省の変化と家事動作の獲得・生活空間の拡大を認め、活動量が向上したと推察された。先行研究では20週以上の介入により慢性疼痛の改善を認めた報告もあり、本症例も疼痛や心理面の改善にはさらなる介入期間が必要であった可能性が示唆された。また、疼痛や心理面の改善が得られなくても、疼痛や活動に対する内省の変化を得られたことが活動量の改善に寄与した可能性が示唆された。
【まとめ】慢性疼痛のリハビリテーションでは疼痛や心理面の改善が得られなくても疼痛や活動に対する内省の変化を得ることが重要である可能性が示唆された。
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