講演情報

[P-12-02]体幹機能改善を認めるも実用的歩行獲得に至らなかった脳卒中患者の一例

*橋口 聖剛1、本島 佳純1、緒方 悠実子1、坂田 修治1 (1. 大牟田天領病院リハビリテーション科)
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キーワード:

脳卒中、歩行能力、体幹機能

ヘルシンキ宣言および人を対象とする医学的研究に関する倫理指針に従い実施した。

【目的】
脳卒中後の歩行障害は日常生活活動や生活の質に大きく影響する。歩行障害に対しては、歩行補助具や機器を使用した歩行練習を行うことが推奨されており、脳卒中患者の歩行再獲得は重要な課題である。今回、麻痺側上下肢機能および体幹機能が改善したにもかかわらず、歩行再獲得に至らなかった症例を経験したため、その要因について検討した。

【症例紹介】
症例は左被殻出血と診断された60代男性である。病前の日常生活は全て自立していた。第0病日に意識障害で救急搬送され、血圧コントロールを主とした保存療法が行われた。第9病日にリハビリテーション目的で当院回復期病棟へ入院した。入院時Stroke Impairment Assessment Set(以下、SIAS)運動項目は上肢0-0、下肢0-0-0であり、重度運動麻痺を呈していた。感覚は主観的な低下を認めた。体幹機能はTrunk Control Test(以下、TCT)12点、Trunk Impairment Scale(以下、TIS)7点であった。

【経過】
第10病日から長下肢装具(以下、KAFO)装着下での歩行練習を開始したが、介助下歩行に対する恐怖心が強く、第16病日までは起立・立位訓練を中心に介入した。第17病日からKAFO装着下での平行棒内歩行練習を開始し、第23病日から後方介助での2動作歩行練習を開始した。第55病日から下肢の連合反応が出現し始め、第72病日に足継手を背屈遊動へ変更した。第92病日にカットダウンし、短下肢装具(以下、AFO)とサイドケインでの歩行練習を開始した。この頃より近位監視レベルでの歩行が可能となった。第104病日から四点杖を使用し、右股関節の外旋位をツイスターで矯正した。最終評価(第178病日)では、SIAS運動項目が上肢2-1、下肢3-2-0で上下肢ともに近位部が改善した。体幹機能はTCTが72点、TISが13点でどちらも改善した。AFOと四点杖を使用し起立・立位保持、歩行は可能であったが、歩行速度が0.10m/s、TUGが84秒08であり実用歩行獲得には至らなかった。第186病日に施設転院となった。

【考察】
本症例は、麻痺側運動機能および基本動作能力の改善を認めたが、実用的歩行獲得には至らなかった。実用的歩行には0.4~0.8m/s以上の歩行速度が必要とされるが、本症例では0.1m/sに留まった。要因として、SIASが共同運動レベルに留まり分離運動が不十分であったことに加え、予測的姿勢制御能力の障害が残存していたことが考えられた。TCTは改善した一方で、TISは13点に留まった。粗大な体幹機能は改善したものの、歩行に必要な体幹の選択的運動や協調性の獲得が不十分であった可能性が示唆された。歩行再獲得には、基本動作能力のみならず、動的な体幹制御や予測的姿勢制御に対する介入も重要であったと考える。

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