講演情報
[P-17-02]脛骨腓骨遠位開放骨折術後における長母趾屈筋の滑走性改善により歩行能力が改善した一症例
*谷口 雄基1、花田 智1、竹之内 淳1、池田 沙希1、海田 博志1、田中 涼太1 (1. 都城市郡医師会病院)
キーワード:
脛骨腓骨遠位開放骨折、長母趾屈筋、歩行能力
本報告はヘルシンキ宣言に基づき、症例のプライバシー保護と匿名化を徹底した。実施にあたっては、対象者に対して発表の目的、個人情報の保護、公表の拒否権について十分に説明を行い、書面にて同意を得た。
【はじめに】脛骨腓骨遠位開放骨折は軟部組織損傷が著しく、術後の機能予後に難渋することが多い。特に後方組織の損傷や侵襲による長母趾屈筋(以下FHL(Flexor Hallucis Longus))の滑走不全は、足関節背屈制限や蹴り出し期の推進力低下を招く要因となる。本報告では、FHLの機能改善に着目した結果、歩行能力の改善に至った理学療法経過を報告する。
【症例紹介】70代男性。作業中の事故により左脛骨腓骨遠位開放骨折を呈し、デブリードマン、創外固定術を経て骨折観血的手術を施行。
【評価結果と問題点】術後1日目より理学療法開始。術後2週間は免荷・固定、術後3週目より1/3荷重・Range of motion(ROM)開始、術後3週目評価では足関節背屈ROM(膝伸展位)がActive -10°/Passive -5°であった。術後5週目より全荷重開始。NRSは荷重時8(左足関節)、JOAスコアは(足部)30点であった。歩行では(片松葉杖にて)、立脚終期(Terminal Stance(以下TSt))に十分な足関節背屈を認めず、早期踵離地と推進力低下を認めた。FHL伸張テストでは 左側足関節底屈位での母趾背屈は60°に対し、背屈位では10°に制限され(右側:底屈位65°背屈位30°)、内果後方に伸張痛を認めた。また、FHLのMMTは3であり(右側5),母趾屈曲時の抵抗に対して内果後方への疼痛・出力低下を認めた。歩行テストでは(片松葉杖にて)、10m歩行時間:17秒4・27歩、TUG(Timed Up and Go Test(以下TUG))は21秒であった。触診では背屈運動に伴い内果後方の軟部組織が深層へ強く引き込まれる所見であった。 背屈制限および歩行障害の主要因は関節包の拘縮に加え、FHLの滑走不全であると考えた。
【介入内容と結果】FHLの滑走性改善と歩行パターンの再構築に向け介入を進めた。FHL、内果後方におけるFHL腱と隣接する後脛骨筋、長趾屈筋、Kager's fat pad(以下KFP)に対して治療を行った。足関節背屈位を保持した状態での母趾自動底背屈運動による分離運動練習・FHL、隣接する後脛骨筋、長趾屈筋、KFPへの徒手的リリースを行った。歩行ではTStでのForefoot rockerを意識し、母趾によるPush-offを促通。またFHLを中心とした後方組織に対して超音波治療を行った。術後8週、FHL伸張テストの左右差は改善し、足関節背屈ROMはActive0°/Passive5°へ改善した。自覚的指標においても、NRSは3へと軽減し、JOAスコアは60点までそれぞれ改善した。FHLのMMTは4へと改善し、抵抗運動時の疼痛・筋力が改善した。歩行ではTStの背屈角度が増大して早期踵離地が消失し、母趾によるPush-offが可能となった。歩行テストでは10m歩行時間15秒4・25歩、TUGは19秒へ改善。T字杖での歩行が可能となった。脛骨遠位部骨折では、FHLが通過する距骨後方の滑車構造等で腱の滑走障害が生じやすい。距骨の後方を通過するFHLは背屈時の距骨の後方移動を一時的に制動する組織である。FHLの伸長性および滑走性の低下は足関節背屈の原因とされる。本症例ではこの動態が阻害され、足関節背屈の制限因子になっていたと推察する。【結論】脛骨腓骨遠位開放骨折術後において、FHLの滑走性は歩行の質を決定付ける重要因子である。臨床所見から病態を深く考察し、運動療法へ繋げる重要性が示唆された。
【はじめに】脛骨腓骨遠位開放骨折は軟部組織損傷が著しく、術後の機能予後に難渋することが多い。特に後方組織の損傷や侵襲による長母趾屈筋(以下FHL(Flexor Hallucis Longus))の滑走不全は、足関節背屈制限や蹴り出し期の推進力低下を招く要因となる。本報告では、FHLの機能改善に着目した結果、歩行能力の改善に至った理学療法経過を報告する。
【症例紹介】70代男性。作業中の事故により左脛骨腓骨遠位開放骨折を呈し、デブリードマン、創外固定術を経て骨折観血的手術を施行。
【評価結果と問題点】術後1日目より理学療法開始。術後2週間は免荷・固定、術後3週目より1/3荷重・Range of motion(ROM)開始、術後3週目評価では足関節背屈ROM(膝伸展位)がActive -10°/Passive -5°であった。術後5週目より全荷重開始。NRSは荷重時8(左足関節)、JOAスコアは(足部)30点であった。歩行では(片松葉杖にて)、立脚終期(Terminal Stance(以下TSt))に十分な足関節背屈を認めず、早期踵離地と推進力低下を認めた。FHL伸張テストでは 左側足関節底屈位での母趾背屈は60°に対し、背屈位では10°に制限され(右側:底屈位65°背屈位30°)、内果後方に伸張痛を認めた。また、FHLのMMTは3であり(右側5),母趾屈曲時の抵抗に対して内果後方への疼痛・出力低下を認めた。歩行テストでは(片松葉杖にて)、10m歩行時間:17秒4・27歩、TUG(Timed Up and Go Test(以下TUG))は21秒であった。触診では背屈運動に伴い内果後方の軟部組織が深層へ強く引き込まれる所見であった。 背屈制限および歩行障害の主要因は関節包の拘縮に加え、FHLの滑走不全であると考えた。
【介入内容と結果】FHLの滑走性改善と歩行パターンの再構築に向け介入を進めた。FHL、内果後方におけるFHL腱と隣接する後脛骨筋、長趾屈筋、Kager's fat pad(以下KFP)に対して治療を行った。足関節背屈位を保持した状態での母趾自動底背屈運動による分離運動練習・FHL、隣接する後脛骨筋、長趾屈筋、KFPへの徒手的リリースを行った。歩行ではTStでのForefoot rockerを意識し、母趾によるPush-offを促通。またFHLを中心とした後方組織に対して超音波治療を行った。術後8週、FHL伸張テストの左右差は改善し、足関節背屈ROMはActive0°/Passive5°へ改善した。自覚的指標においても、NRSは3へと軽減し、JOAスコアは60点までそれぞれ改善した。FHLのMMTは4へと改善し、抵抗運動時の疼痛・筋力が改善した。歩行ではTStの背屈角度が増大して早期踵離地が消失し、母趾によるPush-offが可能となった。歩行テストでは10m歩行時間15秒4・25歩、TUGは19秒へ改善。T字杖での歩行が可能となった。脛骨遠位部骨折では、FHLが通過する距骨後方の滑車構造等で腱の滑走障害が生じやすい。距骨の後方を通過するFHLは背屈時の距骨の後方移動を一時的に制動する組織である。FHLの伸長性および滑走性の低下は足関節背屈の原因とされる。本症例ではこの動態が阻害され、足関節背屈の制限因子になっていたと推察する。【結論】脛骨腓骨遠位開放骨折術後において、FHLの滑走性は歩行の質を決定付ける重要因子である。臨床所見から病態を深く考察し、運動療法へ繋げる重要性が示唆された。
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