講演情報

[P-17-03]創部治癒遷延を呈した両下腿切断の症例~歩行・階段昇降獲得に向けて~

*田中 穂乃加1、笠作 康太郎1、岡 高史1 (1. 福岡青洲会病院 リハビリテーション部)
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キーワード:

両側下腿切断、治癒遷延、階段昇降

入院時に直接本人へ発表の趣旨を説明し理解・同意を頂いた。当院倫理委員会にて承認済(青発倫2026-02)。

【目的】
近年の血管障害を原因とした切断者を対象とした調査では、切断時平均年齢54歳の血管性切断者の復職率は30%以下、また糖尿病や末梢動脈疾患といった血管性切断者は外傷性切断者に比べて復職率が低くなると報告されている。本症例は既往に左下腿切断を有し、今回、右下腿切断術後に創部治癒の遅延により断端形成に約10週を要し荷重開始が遅れた。こうした中でも、工夫した運動療法を継続することで歩行や階段昇降が自立となり、入院前と同様の社会生活を獲得し復職することができたため報告する。
【症例紹介】
両下腿切断を呈した50歳代後半の男性。職業は高校教師で担当科目は美術・書道。診断名は右下腿切断術後(X年)。既往歴は左下腿切断術(X-1年)後、糖尿病、腎不全、高血圧症。入院前ADLは片ロフストランド杖で歩行、階段昇降自立。家屋状況は2階建て一軒家で2階に書道部屋を所有。義足作成ならびに自宅退院に向けてのリハビリ目的で38病日に当院回復期病棟に転院した。
【理学療法評価・経過】
初期評価はMMT(R/L)股屈曲4/5、伸展3/4、外転3/4。Demandは「自宅の2階で書道がしたい」であった。術前ADLが自立であったことから、歩行・階段昇降獲得は可能と予測し、目標達成のためにNeedsは「歩行・階段昇降獲得」と設定。プログラムは断端荷重不可のため、筋力増強運動やバランス練習を中心に実施した。しかし55病日に右下腿創縁壊死、左下腿創縁の残糸膿瘍の壊死組織除去術を施行し、5日間は左義足の装着も不可となった。この期間は体幹・股関節周囲筋の筋力増強運動を多種目かつ高頻度で実施した。76病日で右下腿断端での荷重開始となったが、84病日でCOVID-19罹患。隔離期間は限られた環境下で体幹・股関節周囲筋の強化、バードドックなどのバランス練習に取り組んだ。また、自主トレーニングを指導し運動量を確保した。隔離解除後は座位や立位でダイナミックなバランス練習を実施。102病日でソケット完成・平行棒内歩行練習を開始し、ロフストランド杖歩行へと段階的に進め、110病日で階段昇降練習を開始。115病日にロフストランド杖歩行自立、123病日に階段昇降が自立した。最終評価ではMMT股屈曲4+/5、伸展4/5、外転4/5。130病日に自宅退院となり、自宅2階での書道も可能となった。
【考察】
切断術後の義足の製作は一般的に2-4週後とされている。本症例は断端形成に約10週かかり荷重開始までに時間を要した。断端形成が遅れた中で歩行・階段昇降が獲得できた要因として、年齢と術前ADL(歩行自立)、運動療法の3点が考えられる。第一に、筋力、歩行速度や歩幅も加齢によって低下するとされており、両側下腿切断の場合においても年齢という要素は大きく関連していると考える。第二に、症例の病前ADLは左下腿義足装着で仕事を含めて自立した社会生活を送っていた。このため、耐久性や筋力はある程度保たれていたと考えられる。そして第三に、限られた状況下でも工夫した運動療法を積極的に実施したことが挙げられる。これらの三点の要因に加え、アドヒアランスが比較的高い状態であったことが大きい。断端形成がたとえ通常の倍以上の時間を要した場合でも、上記のような条件下の症例であれば病前と変わらない生活レベルの獲得、復職を含めた社会復帰も可能であることが示唆されたと考える。

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