講演情報

[P-17-04]高度外反膝に対する人工膝関節全置換術後に歩行時膝関節不安定性が残存した一症例

*熊野 夢稀1、田中 創1,2、梶原 康宏1,2、友岡 佑太1、川端 悠士3、末長 菜央3、木村 光浩4 (1. 福岡整形外科病院リハビリテーション科、2. 福岡整形外科病院臨床研究センター、3. 周東総合病院リハビリテーションセンター、4. 周東総合病院)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

⼈⼯膝関節全置換術、外反膝、膝関節不安定性

対象には症例報告の趣旨と内容について⼗分な説明を⾏い,同意,承諾を得た.

【目的】
高度外反膝に対する人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)は,内反膝に対するTKAと比較して術後に膝関節不安定性が生じやすく,術後合併症や患者満足度の低下につながることが報告されている.この膝関節不安定性には,軟部組織バランスのみならず,体幹・股関節・足部を含めた運動連鎖や動的アライメントの関与が示唆されている.しかし,外反膝に対するTKA術後の膝関節不安定性に対して,動的アライメントの観点から評価・介入を行った報告は少ない.今回,高度外反膝に対するTKA術後において,術前から認めていた歩行時膝関節不安定性が術後も残存した症例に対し,動的アライメントに着目した評価および介入を実施し,良好な経過を得たため報告する.
【症例紹介】
対象は60歳代女性で,診断名は右変形性膝関節症である.既往に右人工股関節全置換術(S-ROM)と右大腿骨外顆不顕性骨折を有していた.術前大腿脛骨角(femoro tibial angle:FTA)は129°と高度外反膝を呈していた.歩行時膝関節内外反角度は画像解析ソフトImage Jにて測定した.術前評価では,立脚期における外反角度最大値は29.5°,内外反変化量は18.5°であった.X日にTKAが施行され,術後FTAは160°,背臥位での外反ストレステストは右10°,左5°であった.術後初期評価時(X+3~6日)の関節可動域(ROM)は膝関節屈曲90°,股関節伸展-5°,外転10°であった.筋力(MMT)は大殿筋2,中殿筋3,ハムストリングス3であった.また,歩行時立脚期に膝関節不安定性の主訴があった.さらに座位側方リーチは,右21.3cm,左24.5cmであり,立ち直りが出現し水平保持可能であった.足部はFootPostureIndex-6(FPI-6)11点で過回内を認めていた.術後は見守りで杖歩行可能となったX+23日に膝関節内外反角度を算出し,外反角度最大値は14.9°,内外反変化量9.1°であった.
【経過】
本症例では,術前より認めていた歩行時膝関節不安定性の訴えが術後も残存したことから,術後初期評価の結果に基づき,股関節可動域制限,殿筋群およびハムストリングスの筋力低下,足部過回内が影響している可能性を考えた.それらに対し,膝関節および股関節の可動域改善,殿筋群・ハムストリングスの筋力強化に加え,側方リーチやスクワットなどの動的課題,さらに内側ヒールウェッジを併用した歩行・荷重練習を実施した.その結果,最終評価時(X+42~49日)のROMは膝関節屈曲105°,股関節伸展0°,外転15°となり,MMTは大殿筋4,中殿筋4,ハムストリングス4へ改善した.また歩行時膝関節内外反角度は,外反角度最大値8.4°,内外反変化量11.3°へと改善を認めた.さらに側方リーチは右34.4cm,左42.0cmへ改善し,体幹・骨盤の協調性向上とともに歩行時の膝関節不安定性の主訴は消失した.なお足部に関しては変形が強く,FPI-6の変化は認めなかった.
【考察】
本症例では,術後FTAは改善を認めたものの外反アライメントが残存しており,静的アライメントのみでは歩行時膝関節不安定性を説明できない要因の関与が考えられた.これに対し,膝関節のみならず股関節機能や足部への介入を実施した結果,歩行時の膝関節内外反角度の改善とともに不安定感の消失を認めたことから,動的アライメントに基づく介入の重要性が示唆された.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン