講演情報

[P-3-04]地域在住高齢者における訪問サービスの機能分化に関する検証

*野原 慎二1 (1. ライフサポート熊本訪問看護ステーション)
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キーワード:

訪問リハビリテーション、費用対効果、マルコフモデル

【倫理的な配慮】本研究は厚生労働省及び政府統計の資料を用いた二次解析であり、データの匿名性は担保されている。研究の実施にあたっては、ヘルシンキ宣言および「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守した。

【目的】地域在住高齢者に対する訪問サービスには「訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)」と「リハビリ職による訪問看護(以下、リハ職訪看)」が存在し、限られた医療・介護資源の効率的な使い分けと機能分化が課題である。制度上の特性として、訪問リハは機能改善や通所サービス等への移行を見据えた「目標指向型の期間設定」が強く要請され、リハ職訪看は重度医療依存者や進行性疾患に対する「長期的な維持・病状管理」に強みを持つ。しかし現状では、段階的な介入頻度の見直しが可能である自立支援層に対しても、維持・管理を目的とした定常的な介入が継続されている状況もある。一方で、対象者によっては関係性を完全に断ち切る「早期卒業」は重度化リスクを伴う事もあり、完全な終了ではなく、状態に合わせて頻度を調整するモデルの構築が求められている。本研究の目的は、機能改善後の頻度逓減と長期的モニタリングの費用対効果をマルコフモデルにて検証し、対象者特性に応じた機能分化を検討する事である。
【方法】厚生労働省の介護DBオープンデータやe-Statに基づき、軽度な骨折から重度な神経難病までを網羅した10,000人の仮想コホート患者を作成した。選択バイアス排除の為、年齢、要介護度、疾患特性を共変量とした最近傍法(1:1)の傾向スコアマッチングを実施し5,774人を抽出した。これを基に、分析期間5年、サイクル長1年、状態を要支援1から要介護5までの7区分とする状態推移マルコフモデルを構築した。推移確率は介護DBオープンデータの要介護認定情報を採用した。比較モデルとして「5年間とも週2回介入」とする定常介入モデルと「1年目は週2回、2年目は週1回、3~5年目は月2回介入」とする頻度逓減モデルを設定し、頻度逓減モデルにおいてはマネジメントによる重度化抑制効果を15%と仮定した。介入コストは20分=308単位、1単位=10円、1回40分の介入とした。効果指標には先行研究に基づく効用値(0.85〜0.20)を各要介護度に割り当て、5年間の質調整生存年(以下、QALY)を算出した。さらに、結果の堅牢性を検証する為に、重度化抑制効果を5%及び0%に低下させる一元配置感度分析を実施した。モデル構築及び解析にはPythonを使用した。
【結果】5年間のシミュレーションの結果、定常介入モデルは総平均費用 12,540,128円、獲得QALY 3.0018、頻度逓減モデルは総平均費用 10,419,835円、獲得QALY 3.1037となり、増分費用は -2,120,293円、増分効果は +0.1020の優位(Dominant)な結果を示した。感度分析において、頻度逓減モデルの重度化抑制効果を0%と仮定したワーストケースにおいても -1,651,470円の削減効果が維持された。
【考察】頻度逓減モデルは、社会保障財政において優位な費用対効果を持つ事が実証された。感度分析が示した重度化抑制効果0%でも約165万円の削減という結果は、状態に応じて介入頻度を抑えながらリスク管理を継続するというマネジメント構造に起因する。完全な終了による重度化リスクを予防する為、頻度逓減モデルは社会保障財政における予防的投資としても機能すると考える。
【まとめ】自立支援を目指すべき層には頻度逓減モデルを、長期的な医学管理を要する層には定常介入モデルを割り当てるという、エビデンスに基づいた機能分化の推進が求められる。

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