講演情報

[P-4-01]妊娠期腰痛・骨盤帯痛に対し妊娠周期に応じた段階的理学療法介入が奏功した1症例

*黒木 希望1、矢野 遥香1、松元 春香1、大山 史朗1、山本 晃維1、福嶋 麻里1、福嶋 秀一郎1 (1. 医療法人岡田整形外科 岡田整形外科医院)
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キーワード:

妊娠、骨盤帯痛、骨盤底筋

本研究はヘルシンキ宣言および医学系研究に関する倫理指針に則り実施し、プライバシーの保護に十分留意した。対象者には研究の趣旨について十分に説明を行い、書面による同意を得た。

【目的】妊娠期の腰痛および骨盤帯痛は高頻度に認められ、ADL制限やQOL低下を招きうる。一方で、産前産後の疼痛や身体的不快症状は生理的変化として捉えられ、症状を抱えたまま生活している症例も少なくない。近年では産前産後において、医学的・産科的合併症がない限り定期的な運動の継続が推奨されているが、妊娠期に特化した理学療法の実践報告は十分とはいえない。そこで今回、妊娠周期を考慮した段階的理学療法を実施したことで症状改善につながった一症例を報告する。
【症例紹介】対象は、妊娠33周目を迎えた30代女性。立ち上がり動作時に腰痛および腰が抜けるような不快感を訴え、整形外科を受診。筋-筋膜性腰痛症と診断され、通院する産婦人科医師にも承諾を得たうえで、外来通院での理学療法開始となった。既往は、第1子出産、右乳癌全摘術後。初期評価:レッドフラッグ(胎動異常・破水・子宮過収縮・不正出血)無し、深部静脈血栓・マイナートラブル無し、疼痛(NRS)は立ち上がり動作時4/10。立位姿勢は後方重心となり、胸腰椎フラット・骨盤前傾増大・体幹左側屈・尾骨左偏位。筋緊張は内閉鎖筋、多裂筋、腹斜筋の過緊張。機能的には、胸式・腹式呼吸における胸郭・腹部の可動性低下、自動下肢伸展挙上テストでの骨盤回旋による代償(恥骨結合レベルの圧迫にて改善)などから、骨盤底筋機能低下を認めた。筋力は立ち上がりテストにて40cm高での片脚立ち不可レベル。
【理学療法アプローチ】理学療法は、日本臨床スポーツ医学会が示す「妊婦スポーツの安全管理基準」に準拠し、妊娠周期に応じて介入を実施した。妊娠33〜36週(早産期):立位姿勢の修正、腹圧機能および骨盤底筋機能の再教育、動作指導およびコルセット着用指導。妊娠37週以降(正期産期):ドローインおよびブレーシングによる腹腔内圧調整、骨盤底筋群の弛緩・伸張練習、娩出期を想定した下肢柔軟性改善および呼吸運動へ段階的に移行した。骨盤の不安定性増大を考慮し、コルセットは継続使用とした。外来通院と併行して自主トレーニングも実施。
【経過】週1回、8週間の介入にて、動作時痛NRS1/10へ軽減。立位姿勢アライメントおよび重心偏位が改善し、呼吸運動に伴う胸郭・腹部の可動性拡大が認められた。立ち上がりテストは片脚立ち可能レベルに向上。主観的にも「呼吸が楽になった」「出産への不安が和らいだ」「入眠しやすくなった」との変化が認められた。介入期間中に有害事象は認めなかった。
【考察】初回受診時は妊娠33週であり、後期早産に該当する時期であったため、リスク管理に十分留意して運動療法を実施した。妊娠周期を考慮することで、安全に、かつスムーズな疼痛軽減および機能改善が図られた。また、腹圧機能および骨盤底筋機能の改善によって、身体面のみならず心理面にも好影響を及ぼしたことが伺われる。妊娠周期に考慮した段階的プログラム構築の重要性が示唆された。

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