講演情報

[P-4-02]仙骨骨折後に遷延した殿部痛に対し仙腸関節障害へ着目した臨床推論と治療展開

*屋敷 万紀1、川井 康平1、安藤 将孝1 (1. 大分リハビリテーション病院リハビリテーション部)
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キーワード:

仙骨骨折、仙腸関節障害、疼痛

対象者にはヘルシンキ宣言に基づき,口頭にて本報告の内容や個人情報の保護を十分に説明し,同意を得た.

【目的】
仙骨骨折を受傷後約2か月経過後も左殿部痛が軽減せず,長距離の歩行困難・座位保持困難をきたした症例を担当した.今回,仙腸関節障害に着目し,評価結果からの臨床推論を基に介入を行ったことで,疼痛の軽減に繋がったのでここに報告する.
【症例紹介】
診断名:仙骨骨折 
80代,女性.BMI:19.7kg/m².既往歴:高血圧,左膝関節・右手関節の骨折,軽度認知症. 受傷前:屋内は独歩,屋外は両杖歩行で,ADL・IADLは自立していた.介護保険利用なし.現病歴:屋外で転倒により仙骨骨折を受傷した.受傷から40日後に当院回復期病院にリハビリ目的で転院となった. [初期評価(52日後)]運動FIM:52点,MMSE:21点.左仙腸関節ストレステストはGaenslen’s test・Patrick’s test・thigh thrust test・ Distraction test は陽性,Compression testは陰性.One finger test:左PSIS.PSIS-ILA距離間 (R/L):6cm/5.5cm.右側と比較し左殿部の筋萎縮あり.関節可動域は,左股関節:屈曲:120°,伸展:15°,外旋:40°,内旋:25°,左膝関節:伸展:-20°, 左股関節MMT:屈曲:3,外転:2,伸展:2.疼痛部位は左殿部から大腿後面,疼痛誘発動作は歩行・数分の座位保持.疼痛強度:NRS:8∼9/10で5~10分臥位を取ることで疼痛は軽減した.歩行は左立脚期が短縮し,前腕支持型歩行車で見守りレベルであった.
【経過】
仙骨骨折と診断され1か月間安静臥床期間があり,左殿部の廃用性筋萎縮を呈し,殿筋群の筋萎縮に対するオーバーユースにより歩行時に左殿部痛が生じたと考える.加えて,仙腸関節ストレステストの4/5項目において陽性,One finger testにてPSISを指し,左側の仙腸関節障害が疑われた.仙腸関節の安定性に寄与する大殿筋・梨状筋の筋力低下により筋による仙腸関節の安定化が不十分となった.そして,代償的に靭帯による仙腸関節の安定性を高めるために仙骨のニューテーションを増大させていたことで一部靭帯にストレスがかかり仙腸関節由来の疼痛が生じたと考えた.そこで殿筋群のオーバーユースと仙腸関節障害による左殿部痛を軽減させるために大殿筋・梨状筋の筋力強化を中心に約2カ月間介入した. [最終評価(125日後)]運動FIM:76点,MMSE:27点.仙腸関節ストレステストはGaenslen’s test・Patrick’s testのみ陽性.One finger test:梨状筋周囲.PSIS-ILAの距離間(R/L):6cm/6cm.関節可動域:左股関節:屈曲:120°,伸展:15°,外旋:45°,内旋:10°,左膝関節:伸展:-20°,左股関節MMT:屈曲:4,外転:3,伸展:3.疼痛部位は主に左梨状筋を中心とした左殿部に生じ,時折PSIS周囲の疼痛を認めた.疼痛誘発動作は歩行・60分以上の座位保持,NRS:2~5/10で1分程度の座位休憩で痛みは消失した.歩行は左立脚期短縮は改善し,前腕支持型歩行車で自立レベルとなった.
【考察】
本症例の左殿部痛の原因として廃用性筋萎縮を生じた筋のオーバーユース,仙腸関節障害の2点が挙げられた.約3か月間の左大殿筋・梨状筋の筋力強化により,廃用性筋萎縮が改善された.また,筋力強化により仙腸関節が安定したことで過度なニューテーションが軽減した.ニューテーションの制動に関与する仙結節靭帯の緊張が軽減され,仙腸関節障害により惹起した殿部痛が軽減したと考える.

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